第100話 炎のヴォルト
【ヒューイ視点】
炎のヴォルトと名乗る男が率いる、帝国軍精鋭部隊がオレたちを待ち伏せしていた。
そしてオレは、敵の大将の【炎のヴォルト】に1対1を挑まれた。
最近はザコばかり相手してて、丁度退屈していたところだった。
何より、こいつは強そうだ。
オレもそろそろ強いヤツと戦ってみたいと思っていたところだった。
そこで、オレは二つ返事でオーケーを出し、炎のヴォルトとのタイマンに挑むことにした。
「改めて自己紹介させてもらおう。俺は【炎のヴォルト】。六大帝将の一人で、炎の地位を皇帝陛下より授かっている」
「オレはヒューイ・サウスリーだぜ」
炎のヴォルトが自己紹介してきたので、オレもいつものように右手の親指を自分に向けて、簡単に自己紹介した。
自己紹介が終わると、炎のヴォルトは背中から大剣を抜いた。
「来い、先手は譲ってやろう」
「よーし、それじゃあ遠慮なく行くぜ!」
オレは斧を構えて、炎のヴォルトに向かって一気にダッシュした。
「おりゃああああッ!!」
そしてオレは、ヴォルトに向かって斧を振り下ろした。
しかし、オレの一撃はヴォルトに容易く受け止められてしまった。
(な、なんだ……!? ビクともしねぇぞ!?)
ヴォルトは余裕の笑みを浮かべていた。
六大帝将の一人だけあって、そう簡単に倒させてはくれないか。
「ほう、なかなかの一撃だな。俺の見込んだ通り、お前は強いヤツのようだな」
ヴォルトはオレの斧を弾き返した。
そして、大剣で斬撃を放ってきた。
オレはかわして、一旦ヴォルトから距離を取ることにした。
「今度はこちらから行くぞ!」
ヴォルトはダッシュでオレに向かってきた。
そして、上からの斬撃を放つ。
オレは斧で受け止めたが、一撃が重く感じた。
さすがは六大帝将なだけはある。
パワーは互角なようだが、こいつは今まで戦ってきたどんなヤツよりも強い男だ。
オレの直感がそう告げてやがる。
しかし、だからこそ、戦いは燃えるってもんだぜ。
「俺の一撃を受け止めるとはな。この攻撃で多くの者は倒れたぞ」
「驚くのはまだ早いぜ!」
オレは斧で反撃すると、ヴォルトは回避して距離を取った。
オレは接近するためダッシュした。
ヴォルトは小声で何かブツブツと言っているようだが、オレは構わず前進した。
しかし、ヴォルトは突然火球を放った。
「なにッ!? ぐおッ!?」
ダッシュで向かっていたオレは、火球をモロに喰らってしまった。
しかし、頑丈なオレは何とか軽傷で済んだ。
まさか、魔法まで使えるとはな。
てっきりオレみたいに、武器でしか戦えない脳筋野郎とばかり思っていたぜ。
とは言え、アイツの魔力はさすがに大したことはないようだ。
「驚いたぜ。まさか、魔法まで使えるとはな」
「これでも相当練習したほうだがな。やはり俺の魔力は低いようだ。しかし、この攻撃を喰らって軽傷で済むとは、貴様は相当タフな男だな」
「それだけがオレの取り柄だからな!」
オレはそう言うと、斧を構え直した。
オレはヴォルトに向かってダッシュした。
そして、ジャンプして両手に持った斧を思いっきり振り下ろした。
「破断岩斧!」
オレは必殺技の【破断岩斧】をヴォルトに向けて放った。
その名の通り、岩をも砕く必殺の一撃だ。
ファイン達と旅をして以来使っていなかったが、これを喰らって立っていたヤツはいない。
オレの自慢の必殺技だ。
ところが、岩をも砕く一撃はヴォルトに容易く受け止められてしまった。
「ほう、今の一撃はなかなか重い一撃だったぞ」
「おいおい、マジかよ!? 岩をも砕く、オレの一撃を正面から受け止められるとは思わなかったぜ!」
そして、オレはまたヴォルトに弾かれ距離をとられる。
「お前が必殺技を披露してくれたのだからな。俺も礼儀として必殺技を披露しなければ申し訳がないというもの」
そう言うと、ヴォルトは大剣を構え直した。
ヴォルトは自らの大剣に炎を纏わせた。
「灼熱爆炎斬!!」
ヴォルトが大剣を振り下ろすと、凄まじい炎がオレめがけて襲ってきた。
「ぐおおおおおッ!?」
オレはかわしきれず、炎をモロに喰らってしまった。
何とか生きてはいるが、今回で一番の大ダメージを受けてしまった。
そして、凄まじい炎によってオレは吹き飛ばされてしまった。
これこそが、【炎のヴォルト】と呼ばれたる所以か。
何とか起き上がるが、大ダメージのあまりに膝をつく。
「ほう、俺の【灼熱爆炎斬】を喰らってまだ生きているとはな。正直驚いたぞ。お前がこれ程までに強力だったとは」
「褒めてもらって光栄だけどよ、あんたの方がオレよりも実力は上のようだぜ。オレもまだまだ未熟ってもんよ」
炎のヴォルトを前に、オレは苦戦を強いられていた。
戦ってみて改めて分かったが、ヴォルトは六大帝将の一人だけあって、相当な実力を持っている。
一方で、オレは自分自身の未熟さを痛感していた。
ファイン達との旅を経て強くなったつもりだったが、まだまだだった。