第9話 初めての依頼
冒険者登録をした次の日の放課後、僕とディオーランは冒険者ギルドを訪れていた。
今日はいよいよ、クエストを受けようと思う。
「こんにちは。ファインさん、ディオーランさん!」
「こんにちは」
「こんにちはぁ~」
受付嬢のアイリーンさんが元気よく挨拶してくれた。
ディオーランは相変わらず現を抜かしている。
「早速、依頼を受けようと思っているのですが……」
「依頼ですね。あちらの掲示板からお選びください」
アイリーンさんの案内のもと、僕たちは掲示板から依頼を選ぶことにした。
横に誰かいたので、振り向いて見た。
「あっ」
「あなたは……ファイン君!? それにディオーラン君も……」
何と、そこにいたのは同じ学園のルナだった。
どうやら、ルナも冒険者登録をしていたらしい。
ルナは右腰にナックルガード付きの剣を携えており、軽い防具と動きやすそうなスカートを着用していた。
「驚いたわ。あなたたちも冒険者登録をしていたのね」
「お前こそ、冒険者登録なんかしていたのか」
「えへへっ、先日デビューしたばかりだけどね」
すると、ルナは冒険者カードを見せてきた。
ルナのランクはEだった。
ということは、ギルドマスターを打ち負かした女の子というのはルナか。
学園入学試験の時もそうだったが、やはりルナは只者ではないらしい。
ルナは突然ある提案を出した。
「よかったら、私と組んでくれないかな? 一緒に依頼をこなしたら、効率も上がると思うの」
「俺たちと一緒に? ファイン、どうする?」
「一人当たりの報酬は減るが、それでも良ければ……」
「本当に!? ありがとう!」
僕とディオーランは、ルナと組んで依頼を受けることにした。
「よろしくお願いします。ルナ様」
「うふふっ、『ルナ』でいいわ。それに、敬語も必要ないわよ」
最初の依頼ということで、僕は無難に『薬草採取』にすることにした。
「これにしよう」
するとディオーランたちが口を挟んできた。
「いや、こっちの『ゴブリン10体討伐』にしようぜ」
「私もそれがいいわ」
「危険ではないか? 僕たちはまだ『駆け出し冒険者』だろう?無難に薬草採取にした方が……」
「お前はその慎重な性格と、規格外な強さが一致してないんだよ。大丈夫だって。お前なら、ゴブリン10匹くらい楽勝だろ?」
「そうよ、ファイン君。ディオーラン君の言う通りだわ。私たちの実力ならゴブリンなんて楽勝でしょ?」
「そうだな。確かに君たちの言うことも正しい」
「だろ? だから、ゴブリン討伐にしようぜ!」
「わかった、いいだろう。ただし、ギルドマスターも昨日言っていたけど、僕たちはあくまで新米冒険者だ。無理は禁物だ」
「わかってるって。早く行こうぜ!」
僕たちは『ゴブリン10体討伐』の依頼を受けることにした。
「これでお願いします」
「『ゴブリン10体討伐』の依頼ですね、わかりました。お気をつけていってらっしゃい!」
僕たちは、ゴブリンを討伐するために王都の外へ赴いた。
ゴブリンは森に棲息しているので、森へと向かった。
ゴブリンは二足歩行のモンスターで、体の作りは人間の子供に近く、力も弱い。
手にはこん棒などの武器を持っている場合も多い。
「おっ! いたぞ、あれだ!」
僕たちはゴブリンを5体見つけ、先制攻撃を仕掛けた。
そして、ゴブリンたちを易々と剣で斬り伏せた。
「さすがにゴブリン程度は楽勝だな。おいファイン、討伐の証の耳は忘れるなよ」
「わかってるって」
しばらく歩くと、また5体のゴブリンを見つけて倒した。
さすがに下級モンスターが相手だったので、楽勝だった。
その後、何体かゴブリンを見つけて倒した。
「やったね、ファイン君。これでゴブリンを20体以上は討伐したわね!」
「ああ、思ったよりも多く討伐できたな。早速ギルドに戻って報告しよう」
僕たちはゴブリン討伐が済んだので、ギルドに帰ろうとしていた。
その帰り道でのことだった。
「ファイン君、大変! 向こうで誰かが襲われているよ!」
「なに? 本当か、それは?」
ルナが指を差す方向を見ると、遠くで荷馬車が何者かに襲われているのが見えた。
よく見ると、護衛の冒険者たちが応戦していたが、敵の数が多くて押され気味だった。
「僕たちも加勢するぞ!」
「おい、待てって!」
荷馬車を襲っていたのは、5人の盗賊だった。
僕は走りながら、火球で3人の盗賊を倒した。
「ギャアアアアア!!」
「な、何だお前ら……グホッ!」
そして、ルナが残った2人に対して肉薄し、剣戟で倒した。
「手加減はしておいたわ」
盗賊を倒した後、商人と冒険者たちが無事か確かめた。
「怪我した人はいませんか?」
「一人います」
僕は怪我をしたという冒険者に【治癒】をかけた。
僕は、ここでも【無詠唱】のことを驚かれた。
「君たちが来るのが早かったお陰で命拾いしたよ。ありがとう」
倒した野盗たちの服には、【蠍】の紋章があった。
「こいつらが何者かわかるか?」
「知っているわ。【スコーピオン】という悪党よ。一説では人数は100人には満たないけど、それなりの規模らしいわ。王都では行方不明者が出ていて、その多くは女性や子供が中心だそうよ。もしかしたら、それらはスコーピオンが何か関係しているのかも」
大変だ……。奴らは今でも女性や子供を誘拐しているかもしれない。
そう思うと居ても立っても居られなかった。
「今からスコーピオンのアジトを探し、誘拐された人々を助けようと思います」
「な、なんだって!? 正気か? ファイン。さっきの用心深さはどうした!?」
「そうよ、無茶だわ!」
「お、おやめなされ! 貴方の手を負える連中ではありませんぞ!!」
「大丈夫です。僕には魔法と剣術があります。二人はギルドに戻って応援要請を頼む」
「いいや、俺も付いていく。さすがにお前一人だけに任せられないからな」
「私も一緒に行くわ。だって私たち“仲間”でしょ?」
「そうか。なら一緒に来てくれ」
僕たちとは【スコーピオン】のアジトに向かうことにした。