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History Origin ~なんちゃって歴史物語~  作者: 283
第一章:弥生時代
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第一章:弥生時代 『剣の重圧』

──ここはどこだ?

真っ白のもやがかかった世界に意識だけが浮かんでいる。もちろん、声なんて出せない。どうしたものかと、思案していると──。


「それでね?日本にも昔は女王様がいたんだよ?いいなぁ、私も女王様になってみたいなぁ。」


その声が聞こえた瞬間、周りのもやが一気に晴れていく。

どうやら、過去の情景を見ているらしい。場所は公園。顔の部分が黒く塗りつぶされているあの娘が、俺に向かって話しかけている。


「その女王様は、たくさんの国を従えてて、亡くなったあとは凄く大きなお墓が作られたんだって!」


ああ。そういえば、あの娘は勉強熱心だった。特に歴史が好きで、よく教わってたっけな...。


「へぇー!そのお墓には宝物とか埋まってるのかな?見つけたら、大金持ちに──!」


現金だな、過去の俺!と、ツッコミを入れると同時に女の子も若干呆れた様子を見せる。


「それで?その女王様の名前はなんていうの?」


「ああ、その女王様の名前はね──」


--------------------


薄く目を開ける。見知らぬ天井。今どき天井全部が板張りの家なんか──。

飛び起き、周りの様子を確認する。幸い、監禁などされているわけではないらしい。薄い布がかけられているその上に、若干湿った手巾が乗っていた。

看病してくれていたのだろうか。ならば、今この場にいない女の子に礼を言いに行かなくては。


立ち上がり、伸びをする。特に身体のどこが痛むというわけでは無いので、手巾を手に持ち、部屋の外へと足を踏み出した。


--------------------


まず初めに抱いた感想は、この家でけぇ!!だった。

廊下がとてつもなく長い。まるで無限に続くのではないかと錯覚するほどに。

廊下から中庭を眺めながら、ぶらぶら歩いていると──、


「おい!そこのお前、何者だ!?姉上の部屋に続く廊下で何をしている!」


腰に提げた刀で今にも斬りかからんばかりの形相をした青年に怒鳴りつけられる。


「いや、気がついたらここにいたんだけど──」


「やかましい!面妖な格好をした間者め!俺は騙されないぞ!来い!」


問答無用で服の襟を捕まれ、中庭へと引きずり出される。俺と同じくらいの年齢に見えるが、パワーが桁違いだ。


「いてっ!」


乱暴に中庭の玉砂利の上に転がされる。

膝を強打し、のたうち回る俺の事など興味がないように、青年は空を眺めている。俺の方をちらりとも見ず、青年が言葉を発した。


「なぁ、間者。そのような阿呆の真似はよせ。知ってるんだぞ、お前が狗奴国の手の者だって。」


はぁ?くなこく?どこだよそれ!と思ったが、取り敢えず黙って続きを聞く。


「どこから情報を仕入れたのか知らないが、姉上が床に伏せっている今、暗殺でも企みに来たのだろう!」


あらぬ疑いをかけられてしまっている。そろそろ弁明しておかないと本当に暗殺しに来たことになってしまうのではなかろうか。慌てて口を開く。


「いや、待ってくれ。俺は女の子に連れてこられたんだよ。看病してくれたみたいで。」


手に握りっぱなしの手巾を見せる。すると、青年はじっくりと手巾を見てから一言。


「そんなもの何処でも手に入れられるだろう!」


こいつ...!思わず、額に青筋を浮かべる。聞く耳を持たないやつほど厄介なやつはいない。どうして納得させようかと考え込み、ふと顔を上げる。


中庭で話し込んでいたからだろう。いつの間にか騒ぎを聞きつけたギャラリーたちが、俺たちを取り囲んでいた。人混みの中から、声が飛んでくる。


「手合わせをして、処遇を決めたらいいんじゃねぇの?」


そうだ!そうだ!と追加で野次も飛んでくる。この流れは非常にまずい。現実世界では剣を握ったことはおろか、剣道の竹刀ですら握ったことがない。つまり、俺の剣の実力は、超がつくほどの初心者という事だ。

立ち会いなんて、良くて半殺し、悪いと死ぬだろう。


青年は既にやる気になっており、準備運動など始めている始末。なんとしても止めさせないと...!


「あ、あのさ──」


口を開いた瞬間、人混みの中から鞘付きの剣が飛んできた。ガシャンと音を立てて俺と青年の間に落ちる。


「俺の剣貸してやるから手合わせしてみろよ。」


先程の提案をしてきた声と同じ声が飛んでくる。

余計な事を...!と、人混みに視線を移すが、誰が言ったのか検討もつかない。


「仕方ねぇ。じゃあこうしよう。俺の攻撃に耐えきれたら解放してやるよ。これなら文句はないだろ?」


思わぬ青年からの言葉に一瞬耳を疑ったが、気が変わられても困るので了承の意味を込めて頷いておく。


頷いてしまったので、もう引き返すことは出来ない。渋々、地面に落ちたままの剣を取る。


もちろん剣の握り方なんて知る由もない。何とか、ぎこちない動きで剣を鞘から抜く。


──本物の剣だった。初めて見て、触る、人を殺すことの出来る道具の重圧に押しつぶされそうになる。


相手をこの剣で刺すわけじゃない。攻撃を防げればいいんだ。と、自分を思い込ませて何とか前を見据ると、細かく震える手で切っ先を相手へと向けた。


「ようやくやる気になったか。もし間違っても、恨まないでくれよ?」


ニヤリと笑うと同時に青年がありえない速度で突っ込んできた。これは、殺しに──!

反射的に身体をかがめ、剣の腹で防御する。必死の威力を少しでも殺せなければ──!


しかし、衝撃はいつまで経っても来なかった。薄く目を開けると、青年が数歩先に立っているのがぼんやりと見える。攻撃が来ないと分かり、しっかりと目を開けた。

それを見た青年は身を翻し、人混みをかき分けながら屋敷の中へ戻っていく。


「やめだ、やめだ!官吏、こいつを地下牢に押し込んどいてくれ!」


そんな言葉を残して。


──板張りの室内から、地面にグレードダウンした。

7話目です。

面白いと思っていただけましたら、ブックマーク等よろしくお願いします。泣いて喜びます。


正解は弥生時代でした。邪馬台国の場所は九州か近畿かどちらなんでしょうかね?


それでは次回も、よろしゅう!!

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