プロローグ:○○時代 『救世主は女の子』
小屋まで戻ってこれたのは奇跡と言っていいだろう。今俺は、小屋の中に身を隠している。あれだけ分かれ道が多かったんだ。ここに辿り着くことなんて──。
「あら、こんな所に居たのね。探したわ。」
声が聞こえ、反射的に顔を上げた。女が小屋の入口に立っている。次の瞬間、俺の体は俺の意思に反して、女の方へ進み出した。止まれと念じ続けるが一向に止まる気配はなく、遂に女と至近距離で対峙する。
「ねぇ、あなた、この世界の人間じゃないわね?名前を教えてくれないかしら...?」
切り落とされたはずの左手を俺の肩に置き、聞いてくる。
素直に質問に答えるのはマズい気がして、沈黙を決め込む。女はしばらく待っていたが、俺に答える気がないと分かったのだろう。無言で右手をこちらへ突きつけてくる。男の首を落としたのと同じように。
もうダメだと、深く目をつぶる。
「待ちなさい!」
声。うっすらと目を開けると、女の後ろに女の子が立っていた。
「この森の入口の3人を殺したのはあなたね!悪魔の姿をしているあなたにこれが耐えれるかしら?」
女の子の周りに光球が漂い始める。女は腕を切り落とされた時とは違い、焦ったような表情を浮かべると、俺に向けていた手を女の子の方へと向けた。
「ハァッ!」
女が右腕を振り切る前に、女の子が光球を発射する。都合、六発。
「チッ!」
女は、触れるとマズいと認識したのだろう。上空へと飛んで逃げた。
しかし、光球は意思を持つかのように角度を変え、飛んで逃げる女を追尾する。
「ホーミング!?厄介な...!──きゃぁ!」
女の背中に全弾直撃した。もうもうと煙がたち、女の姿が掻き消える。
「やったか!?」
「いいえ!まだよ!」
俺が、女の子の方を向くと、女の子は次弾を自身の背後に漂わせていた。
「ええ、まだよ。まだ私はぴんぴんしてるもの。」
上空から声がし、そちらを振り向く。煙は既に晴れており、言葉通りの無傷と言ってもいい状態の女が、浮かんでいた。
「でも、その光球、厄介ね。攻撃じゃない、正体看破のためだもの。私が何者かは秘密にしておいて。女には花のように綺麗な秘密が捨てるほどあるんだから。」
ひらひらと右腕を振る女に向け、女の子が次弾を発射する。が、今度は女に届く前に炸裂した。
たちのぼる煙幕の中から女の声がする。
「もっと遊びたかったけど、そろそろ時間だから、お暇させてもらうわね。目的は果たしたし、かわい子ちゃん達にも会えたしね。」
煙幕が消えると、そこにはもう女の姿はなかった。
助かったよ、女の子にそう声をかけようとして振り返る。だが視界がぶれ、膝をついた。
緊張が解けたからだろう。意識が遠のいていく。
女の子が駆け寄ってくるのが微かに見えた。
優しい娘だな。そう思うと、俺は完全に意識を失った。
6話目です。
面白いと思っていただけましたら、ブックマーク等よろしくお願いします。泣いて喜びます。
女の子の見た目は中学生くらいです。次の話から時代背景が分かるようになると思います。
それでは次回も、よろしゅう!!