第一章:弥生時代 『商いの結果』
今は商業区を見て回っている最中。この時代の物価を知るために重要だからだ。
この村の物の売買は物々交換ではなく中国から輸入している《貨泉》を介しての貨幣経済であり、食品や生活雑貨、農具など様々な物が売られていることが分かった。
つくしやゼンマイなどの山菜類は採取しやすいからか《貨泉》1枚で片手いっぱい。大根などの野菜類は一本《貨泉》3~4枚といった値段。
現実での大根は大体150円くらいなので、《貨泉》一枚が現実で言うところの50円に当たるのだろう。
貝や魚も少しだけ並んでいたが、鮮度の問題や交易の末手に入れたものとあって少し高めになっていた。魚達の大きさによって値段はピンキリだが、おおよそ《貨泉》7枚は下回らない程度だ。
少し驚いたのは、塩が売られていたこと。これも他の地域の人達との交易により入手したものらしいが魚に比べて希少価値が高いのだろう、土器の皿や器と同等の値段であり《貨泉》15枚と食品関係で一番の高値がついていた。
他に服や手ぬぐいなどの布製品や、骨でできたブローチなど作るのに手間がかかるものは少し高めで、《貨泉》20枚前後出せば買えると言った具合。
農業用の鍬、鎌などは一度買ってしまえば暫く持つことや、鉄が使われていることから《貨泉》50枚という高額な値段設定になっていた。
他にも弓・剣などの武器や、骨でできた包丁なども目に入ったがスルーした。花の値段にそこまで影響しないだろうから。
それからしばらく歩き回り、人だかりになっている店を見つけた。何を売っているのだろうか?興味が湧いてきて、人混みの隙間から売られているものを観察する。
──肉だ。
そういえば、この世界に来てから一度も肉を食べていないことに気づく。頭の中が肉でいっぱいになり視線を外せずにいると、隣にいた兵士達の会話が耳に入ってきた。
「やっと売りにきやがったか。嫌に期間を開けやがって。」
「昔はここらでも狩りが出来てたのにな。デカい獲物を狩るの、楽しかったよなぁ...。」
「ほんとだぜ。なんでだか、今は小型の獣ですら見ねぇからな。」
「ああ、今来たばかりなのにもうこんなに人だかりができてるってことは皆も待ってたんだろうしな。」
なるほど、兵士たちの話や屋敷での献立を見るに、この村では肉が貴重なのか。もし朝顔が沢山売れたら、那阿ちゃんに買っていってあげようかな。肉の存在に思考の九割を持っていかれながら、その場を離れた。
村の中央にある広場に設置されている大きな櫓の下に座って、今までに得た情報から幾らで売るのが最適か精査する。
まず、今回のターゲットは女性。次いで子ども。鍬や鎌などのように暫く持つものなら、高い値段でも人々は買うだろう。でも花はすぐ枯れてしまう。しかし、俺にはひとつ考えがあった。
それらを加味して俺が出した結論は──。
「さぁよってらっしゃい、見てらっしゃい!|不思議な色した、この国には無いもの!そんな珍しい花がなんと《貨泉》15枚!」
滅多に来ない肉屋が来たことで、きっと財布の紐は緩んでいるはず...!結果は──、
大成功!
俺の目論見通り女性客や子どもが多かったが、少しばかり男性──お父さんくらいの見た目の人も買いに来てくれた。奥さんか、子どもへのプレゼントだろう。
先ほど見た肉屋と同等か、それ以上かもしれない人だかりを作り、用意していた分は完売。
買えなかった人が次はいつ売りに来るのか聞いてくるほどだった。
朝顔のカラフルな見た目も手伝って、買った人が持って帰る途中に人目に止まったのだろう。なんにせよ良かった。
人だかりがなくなってから、稼いだ分を計算する。
──《貨泉》1410枚。
これが今回稼いだ分。もしかすると飛ぶように売れるかもという予想で、屋敷と村を数回往復してよかった。鉢植えが小さめサイズだったのでこれだけ運んで来れたが、大きいものだったらこうはならなかっただろう。
鉢植えは120個持ってきたはずだが、《貨泉》が足りない。どうやら屋敷を往復している間に鉢植えが幾つか盗まれたようだがまあ良しとする。日本円換算で7万円、これだけ稼げれば仏の心でいれよう。
にやにやしながら稼いだ《貨泉》を袋に入れ、那阿ちゃんの家へと向かった。
16話目です。
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値段設定の部分、見にくくて申し訳ないです...。
それでは次回も、よろしゅう!!




