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呪遣い(カーステイカー)  作者: リンゴの木
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15話 王の炎

15話 王の炎


 ここは、アスラ王国、謁見の間。正面には、極彩色のような煌びやかな装飾がなされた壁面と王国のモチーフである炎を模した模様のステンドグラスの大きな窓がある。その前に、これまた大層立派な装飾がなされた玉座が2つあった。アスラの国王は、この席に座り、他国の使者と会い、また様々な報告を聞くのである。

 時刻は、丁度夕刻。真っ赤な夕日がステンドグラスから差し込み、2つの玉座をまるで燃えているかのように赤く、鋭く照らしていた。そんな玉座の1つに座る人物が1人。現アスラ王国の国王、アスラ・イグニである。齢22歳という若王だが、夕陽を背に玉座に座る姿には、22歳とは思えないほどの貫禄と威圧感がある。


「イグニ陛下。第一討伐隊、隊長のオーグル・アレン殿がお見えになりました。」


「…よし、通せ。」


 イグニ国王がそう指示をすると、玉座の向かいの扉が開き、案内人とそれに引き続きオーグルが入ってきた。案内人とオーグルは、イグニ国王の御前までくると、その場でひざまづいた。


「イグニ陛下、オーグル・アレン殿をお連れしました。」


「うむご苦労。ハイロは下がって良いぞ。」


 ハッと返事をすると、ハイロと言われた案内人は部屋の外へはけていった。


「さて…オーグルよ。此度の討伐、大義であった。"サイクロプス"を倒すだけでなく、道中で出会った"炎の魔人"まで倒してしまうとは。"王国の鬼"に相応しいその豪傑ぶり!私の目に狂いはなかったようだ。」


「有難いお言葉でございます。」


「うむ。オーグル、そなたが持ち帰ってきたサイクロプスと炎の魔人の死体だが、まずは解析にまわした。この魔物たちから新たな情報が得られるかもしれぬからな、少し待ってもらいたい。」


「はっ。」


「当然、これらの魔物の権利は討伐したお前にあるからな、後日お前に何らかの形で還元しよう。金でも構わぬし、新たな装備の素材としても良い。考えておいてくれ。」


「御配慮感謝いたします。」


「当然のことをしたまでよ。それに、お前にはこれとは別に報酬を与えるつもりだ。」


「…ありがとうございます。」


「欲のないお前のことだ。悩むし、ごねられるだろうからな、それはゆっくり後で話すとしてだ。」


「……」


「オーグルよ。お前の報告書にある、コウヤという少年は何者だ?」


「……」


「当然、お前の討伐隊の一員ではあるまい。こんな名前は、報告書の隊員名にはなかったし、お前と2人がかりだったとしても、小隊で倒しきれなかったサイクロプス、まして道中で出会った炎の魔人を討伐するなど並の強さではあるまい。」


「……」


「お前の報告書では、このコウヤという者について、情報が不足している。オーグル、詳しく説明してもらおうか。」


「…報告書の説明不足について謝罪いたします、陛下。このコウヤという少年は、私の判断に困る人物であったため、一度陛下に相談しようと思っていたのです。それゆえ、報告書には詳細を書かなかったのです、お許しください。」


「ふむ…、判断に困るか。良いだろう、話してまよ。」


 その後、オーグルはイグニ国王に、これまでの浩也との旅のこと、浩也がもつ不思議なスキルのこと、全てを話した。オーグルの説明の所々でイグニ国王は、質問をし、オーグルの答えを聞くたびに、イグニ国王の眼は好奇心に満ちたキラキラとしたものに変わっていった。


「…これが、コウヤという少年についての詳細な報告となります。」


 オーグルが報告を終えると、あたりは静まり返った。だが、次の瞬間、


「………はははははははッ!」


 イグニが大声で笑い出した。オーグルは、突然の国王の笑い声にポカンとしていた。


「聞いたか、ジュニーナ!異世界人、サイクロプスをぶん殴る、高濃度の回復薬一気飲みだと!なんて、奴だ!」


 今まで黙って話を聞いていた宰相のジュニーナは、呆れているようだった。


「…笑い事ではありませんよ、陛下。下手したらオーグル殿も死んでいるかもしれないのです。蛮勇と言われても仕方ないほどのことなのですよ。」


「ふふ、凡人ならな。英雄というやつらは、凡人の俺たちが考えもしないような事をできるという確信を持ってやり遂げる。それにその蛮勇がなかったらオーグルやコウヤは死んでいるからな。蛮勇とも言い切れん。」


「まあ、それは否定しませんが…」


 ジュニーナは、今ひとつ納得していないという顔をしていた。


「それにしても面白い男だ、コウヤ。是非、会ってみたい!してオーグル、今コウヤはどうしている?」


「ソシル殿の治療院にて治療中です。」


「ふむ、治療中か。」


「そこまでの負傷でもなかったので、もうコウヤは起きているはずです。こちらに呼んでも問題ないと思います。」


「いや、国を守った英雄が治療中だというのだ、こちらから行かねば失礼だろう?」


 イグニはニヤッと笑う。


「陛下、まさかとは思いますが…」


「安心しろ、ジュニーナ。仕事は全部終わらせてから行く。」


「そういうことではないのですよ…陛下。」


 宰相のジュニーナに諌められながらも、イグニの眼は、怪しく光っていた。


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