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呪遣い(カーステイカー)  作者: リンゴの木
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12話 和気藹々?

12話 和気藹々?


 浩也とオーグルは、黙々と王国への道を歩いていた。前日まではあんなにも会話をしていた二人だが、今日はそれほど会話が弾んでいなかった。それもそのはずである。何故かとてつもなく暑かったからだ。まるでこちらの体力をジリジリと削るかのように気温が上がり、日差しが強くなっていく。


「…なぁ、オーグル。ここの気温と…日差しは…こんなもんなのか?」


「…いや、こんな感じでは…なかったはずだ。もっと…穏やかな…気候だった。」


「なら…おかしいだろ…これ。なにか…原因があるんじゃ…ないのか?魔法とかで…探れないのか?」


「探っては…みたが、よく分からん。ただ…上空に何かが…いることだけは…確かだ。」


 そういって、オーグルは右手を浩也の方に差し出した。その手の平の上には、炎で出来た立体的な方位磁針のようなものがあり、中心の針が真っ直ぐに上を刺していた。


「探知魔法みたいなもんか…?」


「そうだ…上空に何かが…潜んでいるが、まだ様子を見ているのか…何を考えているのか…分からん。」


「なるほどな…だから、用心するしかない…とはいえ、この気温と日差し…ただ立ち止まってるわけには…いかないってことか…」


「ご名答…」


 二人は再び黙って歩き出した。適宜、水を飲んでいるとはいえ、かなり早いスピードで消費していた。このままでは、水不足で限界が訪れそうだった。しかも、それだけでなく、


(まずいな…お互いに汗をかきすぎてる…)


のも問題であった。汗をかきすぎたことによるミネラルの喪失、気温と日差しにより延々と上昇する体温、この気温で歩き続けることによる疲労、どうやっても熱中症になるのは目に見えていた。


(上にいるやつの狙いは、私たちが弱るのを待つことか…)


(それかこのまま俺たちが朽ち果てるのを待つつもりだな…)


(そうと分かれば…)


((誘い出すのみ!!))


「なあ、オーグル」「なあ、コウヤ」


 俺たちは同時に声をかけて、互いに向き合った。


「「………ははっ!」」


「どうやら、本当に似たもの同士らしいな俺たちは。」


「全くだな、コウヤ。なら、私の言いたいことも分かってるだろ?」


「ああ、そうだな。」


 そういって、浩也とオーグルは、互いに手に持った水筒を飲み干した。


「「これで、私の(俺の)水筒は空になったんだ。」」


「「おまえの水筒も空かもしれんが、確か隠し持ってた水筒が一本あっはずだ。それを渡せ!!」」


 直後、オーグルと浩也は互いに掴み合った。


「うぉおおおっ!!!!」


「ふん!どうしたコウヤ、そんなものか?!」


 ステータスに差がありすぎるのか、浩也はすぐにオーグルに投げ飛ばされてしまう。


「おぉおおぉおお!…………っそ、脳筋ゴリラめ…!戦いは、筋肉だけじゃないってことを教えてやる!」


 浩也は、今度は無闇にオーグルに掴みかかるのをやめ、オーグルの攻撃を避けつつ、確実に攻撃を当てられる時にだけ攻めるというヒットアンドアウェイを展開していた。確実に浩也の攻撃がオーグルに当たるようになったものの、ステータスの差は大きいようで、大したダメージにはなっていないようだった。ただ、攻撃が当たらず、一方的に攻撃されるというのは苛立たしいようで、オーグルの剣に怒気が篭ってきていた。


「なかなかに、小賢しい戦いをするじゃないか、コウヤ!」


 オーグルは剣を振るスピードをさらに上げ、浩也は回避のスピードをそれに合わせて上昇させた。そのまま両者は、高速の攻防を続けた。それから2分ほど経ったとき、共に限界だったのか、浩也とオーグルは膝から崩れ落ちた。


「はぁ…はぁ…はぁ…」


「はぁ…はぁ…はぁ…」


「……なかなかやるじゃないか、コウヤ…あそこまで、私の攻撃をかわすとはな…」


「…オーグル、あんたも、あれだけのスピードとパワーで剣を…振れるなんてな…流石だぜ…」


「はは…ここは素直に褒め言葉だと…受け取っておこう…」


「……」


「……」


「……なあ、オーグル」「……なあ、コウヤ」


「…お前から言え、コウヤ。」


「……出会ってばかりで、短い旅だったけどよ、なかなか楽しかったぜ。生まれ変わったら、またおまえと旅してみたいな」


「礼をいうのはこちらの方だ、コウヤ。おまえに命を救われた、最期に良い旅をすることができた。ありがとう。私も生まれ変わったら、おまえとまた旅がしたいものだ。」


 二人は仰向けになったまま、互いに微笑み合い、そのまま目を瞑った。言うなれば、穏やかな死に顔なのだろう。それでも日差しと気温を残り僅かな二人の命を確実に刈り取るかのように強さを増していた。



「意外と呆気なかったな…"ドラゴン"と"サイクロプス"をやった骨のある奴だと聞いていたが、脆かったな。」


 オーグルと浩也が倒れた近くに降り立ったのは、身体を炎に包まれた人型の魔物であった。名をイフリール・サンといい、アスラ王国を脅かす魔王ウィル・レセマから名前を授かった魔物の一人である。


「最期には意味のわからん戦闘を始めるわ、おかしな生物だ人間というものは。」


「一応、ウィル様には報告しておこうか。ふむ。ウィル様も退屈しているだろうし、面白く報告しておこう。人間が暑さに狂って、発狂死したとな……ハハ!」


「うるせぇよ、てめぇが発狂してろ。」


「!?」


 するはずのない声に驚き、イフリールは後ろを振り返る。そこには、自身の目の前に何か白くくねくねしたものを突きつける浩也の姿があった。


「!?!!??」


 突きつけられたのは一瞬だったが、あまりにも"それ"との距離が近く、"それ"の細部までがよく見えてしまい、イフリールはそれがなんなのか認識してしまった。残念なことに一瞬でも、"それ"を認識してしまったのだ。


 直後、イフリールは発狂した。


「?!d?ga?mg?!.mj?sa?pg?!!」


____________________________________

カード名: くねくねドール

型: 使役型

効果: 人形型のくねくねを召喚する。くねくねの正体を認識したものを発狂させる。認識速度には、くねくねとの距離が関係しており、距離が近ければ近いほど早く認識し発狂する。ただし、それは相手だけには限らない。使役時間は、任意。

クールタイム: なし

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