第壱話:人命救助
ふと思い至って小説を書いてみました。
これから先、理学方面の話へ展開していくのですが、作者本人は理系では無いので知識不足が多いです。
もし、気になった点が御座いましたら、優しく教えてくだされば御幸時に存じます。
とある廃れたビル群が特徴的な街並みの路地裏。全てを溶かすような真っ暗な狭い道を、1人の少女が駆けていた。
「待ちやがれ宇野遥無ァ! モルモットの分際でちょこまかと逃走しおってからに!!」
後ろには複数の、空と同化してしまいそうな程に全身黒尽くめの服を着た男達。
「ハァッハアッハッ、だめだ、このままではっ!」
このままでは追い付かれると悟った少女は、此処迄かと目を瞑る。
「!!?!??」
その次の瞬間、遥無は何者かに体を抱え上げられる。『宙に浮いているのではないか』と錯覚しそうな程に颯爽と街並みを駆けていた。
その内、鍛え上げられていない人間では到底辿り着けなさそうな、嘗ては煉瓦造りであったアパートの屋根の上に着地した。
「何処へ行きやがった!?!? 出て来い!!!!」
「チッ、直に雨が降る!!!! 引き上げるぞ!!」
ドカドカと遥無のほぼ真下を通り過ぎる黒尽くめの人間共。それから数分して、遥無は止めていた息を漸く吐いた。
そして、自分を抱き抱えている女性に意識を向ける。女性は自分より大柄で、ストレートに腰まで伸ばされたグレー髪が暗闇に映えていた。暗闇が邪魔をして顔立ちは窺えない。
「やれやれ、危ねぇとこだったな。」
「・・・えっと、助けていただき・・・有り難う御座いました。貴方は・・・誰ッスか?」
「まぁまぁ、細かい事は内に来てからにしよーぜ。」
「・・・・・・。」
正直、不信感が満載なこの女性に着いて行くのは如何かと思うが、このまま放り出されたところで、先程追われていた者共に捕獲されてしまう。
無言を了承と捉えたのか、女性は無言で遥無を横抱きにしたまま東の方角へ進んでいった。
遥無の襲われたこの街、陽亡市は、嘗て存在していたこの国で1番治安が悪いと言われている。
理由は山程あるが、一つは奴隷商売が盛んに行われているからだ。
1000年程前までは穏やかで、陽亡市も含め『犯罪』の『は』の字も知らないような平和な国だったらしいが、ある国際的事件を切掛に酷く荒れてしまったのだ。
ただ、『AIかつ不老不死となった人間が原因だ』という噂だけはよく耳にする。
まあ、1000年も前の話なので、騒ぎの根源となったであろうその研究チームが実在するかなぞ知った事では無い。その頃には人体実験まで行われていたのだ。
今では禁止され、ある機関に知られた場合、速攻で処刑となる。まぁ、『あくまで知られてしまったら』の話なのだが。
追われていた少女は、物心が付いた頃には孤児院と名ばかりの研究所に収容されていた子供である。
其処では散々鞭で叩かれては罵声を浴びせられ、腕には鎖の跡がついていた。挙げ句の果てには実験動物として非合法な実験をされ続けた上に、中途半端な力しか使えない副作用が残る身体にされた。
毎日毎日人間として扱われない日々を過ごし、それに対して嫌な慣れが出て何も感じなくなりそうな時だった。研究所が何者かに襲撃されて騒ぎになったので、脱兎の如く逃げてきたのだ。
そんな場所でも互いに信頼した仲間と、耳を塞ぐ程の暴言を吐いてしまった最愛の人を残して。
「お前も入るか? 『栄世人命保証機関』に。」
「・・・あの、何て?」
「・・・『栄命隊』。」