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第3話 見世物団ギゼル

「ほら〜、すぐあの男が食われるから〜」


 悪魔の言葉が終わらないうちに猛獣は俺たちを飛び越え、司会者を体当たりで転ばせてその首にかぶりついた。


「ぐうっ!」


 一瞬の出来事に()(すべ)はなく、しばらく足をばたつかせていた司会者も、やがて窒息して絶命してしまう。しかし、この場でヤツが食事する光景を目にするのはあまりにエグい。それに空腹感で目が回りそうだ。ここは一気に片を付けるしかないだろう。


「仕方ない。消し炭にするか」

「あら〜、それならアタシが頂くわ〜」


 言うが早いか突然悪魔の頭が巨大化したかと思うと、ろくろ首のように首が伸びて、猛獣と司会者の死体を丸呑みにしてしまった。それを見た獣人女性は唖然としている。どうでもいいけど、結局獣の方も食うんじゃねえかよ。


「ね〜、あっちはどうする〜?」


 元の頭に戻った彼が指さしているのは、片腕を失った1人を含む男たち3人である。奴らは過去にも多くの獣人たちを苦しめてきたはずだから、報いを受けるのは当然だろう。ただ、さすがに生きたまま悪魔に丸呑みさせるわけにはいかない。


「契約でも何でも好きにするがいい。ただし、前みたいに他人に危害を加えさせるようなことは許さん」

「分かったわ〜」


 本当に分かってるんだろうな、コイツ。


「アンタ、名前は? 俺はアキラだ」


「アキラ様、助けて頂いてありがとうございます。ネネルと申します」


「1つ聞きたい。ネネルはノエルンの母親か?」

「ノエ……あの子をご存じなのですか!?」


「ああ。うちで一緒に暮らしている」


「一緒に……あの子は生きているのですか!?」

「もちろんだ。元気にしているぞ」


「あの子が……ノエルンが生きている……!」


 娘の無事を知った母の目から、止めどない涙がこぼれ始める。あれだけ酷い目に遭ったというのに、やはり娘のことを心配していたようだ。俺はノエルンと出会った経緯を、簡単に彼女に話して聞かせた。


「そんなことが……」


「貧民街に帰すのは危ないと思ったからな」


「あの子に、ノエルンに会わせて頂くことは……?」

「もちろん、最初からそのつもりだよ」


「ありがとうございます! ありがとうございます! 何とお礼を申し上げればいいか……」


「気にするな。ただ少し待ってくれ。まだやることが残っているからな」

「やること?」


 今回の第一の目的であったノエルンの母親の救出は達成したし、外にあった(おり)には他に捕らえられている獣人の姿も見えなかった。とすれば残るはあと1つ、()()(もの)団ギゼルを壊滅させることである。するとそこへでっぷりと太った縦縞(たてじま)のスーツ姿の男が、4人の取り巻きを引き連れて現れた。髪も歯も金で、何とも悪趣味である。年齢は60代といったところだろうか。


「これは何事だ!?」

「と、頭目(とうもく)!」


「マシュジン、その腕はどうした!?」

「ソイツらに……」


「この若僧が?」


 待て待て、やったのはお前らが飼っていた猛獣だろう。


「アンタがこの見世物団の頭目か」


「口の利き方を知らん若僧だ。ワシを誰だと心得ておる!」

「知らんね」


「無礼者! この方はゴルブ・ギゼル男爵閣下だ。分かったらその場に(ひざまず)け!」


 黒服の取り巻きが頭目の前に出て叫ぶ。だが、俺には彼に従う義務などない。


「断る!」


「頭目! アイツは変な魔法を使います! 気をつけて下さい!」


「あら〜、失礼ね〜。魔法なんか使ってないわよ〜」


 指さされた悪魔が舌なめずりしながら俺を見る。アイツらの魂も食いたいというわけか。


「いいぞ、条件はさっきと同じだ」


「やったわ〜! これで9人前〜」

「9人前って何だ?」


「アタシ実は悪魔なの〜。貴方(あなた)たち、アタシと契約しな〜い?」

「あ、悪魔だって!?」


「そうよ〜。契約すれば〜、獣人がた〜くさんいるところにご招待するわよ〜」


「バカな! こんなところに悪魔がいるわけがないだろう!」


「あ〜ら、信じないの〜? じゃ、そっちの人の腕を治して見せてあげるわ〜」


 悪魔がマシュジンに向かって人差し指をクルクル回すと、まるで木が枝を伸ばすように、彼の腕が元通りになっていた。コイツ、こんな魔法も使えるのか。


「ど〜お〜? これで信じてくれたかしら〜?」


「おお! 痛くない! 痛くないですよ、頭目!」


「よ、よし、分かった! 契約だ! 契約しようじゃないか!」

「それじゃ、獣人のところへご案な〜い!」


 悪魔がバレエのピケのようなターンを繰り返すと、男たちの姿がその場から消えてしまった。おいおい、獣人がたくさんいるところってどこだよ。


「地獄の食堂よ〜。もちろん料理される方ね〜。彼らに殺された獣人たちに食べてもらえるんじゃないかしら〜」


「はぁ?」


「生きたまま切られて焼かれたり煮られたり〜。でも安心して〜。何度でも再生するの〜。簡単には死ねないところよ〜」


 繰り返し何度も恐怖と痛み、苦しみを味わい、絶望するヒマさえないと言う。そうすることにより、魂の味に深みが出るそうだ。それに関してはよく分からないが、地獄に()としたというなら、この世で他人に迷惑をかけることはないだろう。形はどうあれ、アイツらも多くの獣人がいるところに行くという望みだけは叶ったわけだし。それより腹減った。


「それじゃ、アタシも行くわね〜」


「そうか。もう来なくてもいいぞ」

「つれないこと言わないの〜」


 言いながら彼は、すっと消えるようにその場からいなくなった。


「さて、俺たちも早いとこ帰るとするか」


 その後、見世物団ギゼルが突然姿を消したことで大騒ぎとなったが、気がつくと数日で話題にも上らなくなっていた。おそらく悪魔の仕業(しわざ)と思われるが、どうもアイツの考えることはよく分からない。もっとも俺としてはノエルンの母親を救い出し、見世物団を潰すという目的を果たせたのだから結果オーライである。悪魔には約束通り、次に店に来た時に食事代を半額にしてやればいいだろう。


 それから店に帰った俺は、またもやカップ麺を12個平らげたのだった。


家で休んでるだけなので、この他に2話ストック出来ました。

ひとまず明後日までは更新続けますよ〜(^o^)

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