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第8話 何やってるんですか!?

「おーなー!」

「に、兄さんっ!」


 俺の声に気づいた4人が一斉にこちらに振り返った。むろん、剣を手にしている貴族も俺を見たが、出っ張った腹と偉そうな口(ひげ)を生やした顔は、明らかにこちらを見下しているように見える。


「貴様がコイツらの飼い主か?」

「アンタ、何者だ?」


「控えろ! この方はアロワカ・グロシアス閣下(かっか)。グロシアス伯爵(はくしゃく)家のご当主様だ」


 貴族の横に立っている執事のような男が、これまた偉そうに俺に向かって叫んだ。


「おーなー!」

「兄さん、助けてくれ!」


「その4人をどうするつもりだ?」


「この者たちは不敬(ふけい)罪で片腕を切り落とす」


 処刑するには王国の許可が必要だ。しかし腕を切り落とすだけなら、殺すわけではないからそれも必要ないということか。姑息(こそく)なやり口だこと。


「彼らがどんな不敬を働いたと言うんだ?」


「アロワカ閣下に対し、無礼にも後ろに並べなどと言ったのだ。不敬を問われても仕方ないだろう」


「それはおかしいな」

「何がだ!?」


「うちは身分による差別はしない方針を掲げている。彼らはそれを伝えただけだろう? 従えないなら店には1歩たりとも入れてやるわけにはいかない」


「き、貴様! 貴様もそこに正座しろ!」


「それで俺の片腕も落とすか? どうやって?」


 その時俺は貴族の手にある剣が、根本の部分から折れるイメージを思い浮かべながら(はや)()()を切った。直後、刀身が折れて地面に転がる。


「見たかっ! 兄さんは英雄……」


「ラクリエル、余計なことを言うなっ!」

「す、すみません……」


 だが、突然の異変に伯爵も困惑しているようだ。


「あ……あれ? 貴様、何をした!?」

「別に何も? 俺が何かしたように見えたか?」


 奴らに気づかれないよう、手刀(しゅとう)は手元で極力小さな動きにした。だから貴族はもちろん、並んでいる人たちからも俺が早九字を切ったところは見えなかったはずだ。


「伯爵閣下様に申し上げる! ここは王国の施策の一環として、国王が直々に認めている店だ。それでもうちの従業員を傷つけると言うなら、今すぐこのことを国王に告げるがどうする?」


「こ、国王陛下が認めているだと!? 一介の平民小僧がデタラメを抜かすな!」


「では何故、王国の警備隊員がいると思うんだ?」

「それは……」


 彼らの仕事はセルシアの警護だが、方便として利用させてもらおう。


「うちの店でメシを食いたければ、大人しく最後尾に並べ。それが出来ないなら入店はお断りだ。身分は関係ない!」

「くっ……」


 それから俺はツカツカと貴族の許に近寄り、他に聞こえないようにボソッと耳打ちする。


「次にくだらないことをやったら、剣ではなくアンタの首が転がり落ちることになるぞ」

「き、貴様やはり……!」


 この言葉で伯爵は真っ青になり、執事を連れて列の最後尾に並ぶ。こんな騒動を引き起こしておきながら、それでも立ち去らないハートの強さには感服するよ。むろん、様子を窺っていた行列の面々から歓声が上がったのは、言うまでもないだろう。


「セルシア、メシ!」


 騒動を治めて厨房(ちゅうぼう)に戻った俺は、朝食の残りご飯にカレーをかけて大盛り3杯を平らげた。余計な法力(ほうりき)を使った代償は、味わう間もなく俺の腹に消えるカレーライスだったのである。


◆◇◆◇

 

 11時の開店と共に、店内は一瞬で満席になった。あれだけの行列を待たせていたのだ。これも当然の結果と言える。


「う、うめぇ!」


「店員さん、カレーライス大盛りおかわりだ!」


「こっちはチキンライスのおかわりを頼む。もちろん大盛りでだ」

「はーい、ただ今ぁ」


 今日から3日間は大盛りを無料サービスとした。それでもおかわりする人が多く、店内は大忙しである。どれだけ腹を減らしてきたんだか。


「いやぁ、本当に美味かった! こんなに美味い料理なのに、おかわりしても銀貨1枚でいいなんて!」


「全くだ! 店員さん、金ここに置くぜ。また明日も来るからよ」

「ありがとうございます!」


 そして開店してから2時間も経たずにカレーが底をついた。だが、行列はまだまだ続いている。


「すみませ〜ん、カレーライスは売り切れてしまいましたので、この後はチキンライスのみとなりま〜す!」


「カレーライス売り切れかぁ。食いたかったのにな〜」

「でもチキンライスってのもすげえ美味いって話だぜ」


「よし。じゃ、カレーライスはまた今度ってことで、今日はチキンライスを食っていこう!」


 俺が行列に向かって声をかけると、そんな会話があちこちから聞こえてきた。実際は空いた鍋ですでにカレーを作り始めているので、出せないことはない。ただ、2日目のカレーとして売っている以上、商品を偽って提供するわけにはいかないのである。今作っているのは明日の分ということだ。


 ところが、厨房に戻ろうとしてもう一度行列に目を向けた時、見知った顔を見つけてしまった。なんと国王と王女が、粗末な身なりを(まと)って並んでいたのである。


「国王様にお姫様まで、何やってるんですか!?」


 俺は他の人たちには聞こえないように、2人の許に歩み寄って小声で叫ぶのだった。


何度か出てますが念のため。

カレーライスもチキンライスも、店での値段は1皿小銀貨1枚(日本円で500円)です。

つまり2皿なら1000円なので、銀貨1枚となります。

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