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税込み1100円で美少女エルフを買ってしまいました  作者: 白田 まろん
第4章 セルシアと2人の少女
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第3話 ならず者を野放しには出来ないっしょ

「お、おいっ! 何をしやがった!?」


 自分と仲間に異常が起きていないことを不審に思ったのだろう。3人の中の1人が、辺りを見回してから俺に向かって叫んだ。


 しかし俺は先ほどの言葉通り、ヤツらには何もしていない。ただ、その後ろの女の子たちは、違った意味で自分の体を確かめるように眺めている。そして――


「あ、あれ……」

「痛みが……?」


 そう、俺はまずセルシアの知り合いであるミルエナ、ワグーと呼ばれた2人の少女の傷を癒したのだ。


「旦那様!」


 声に振り返ると、この中で何が起きたのかをいち早く(さと)ったセルシアが、嬉しそうに駆け寄ってきた。


「セルシアちゃん、2人を中へ」

「はいっ!」


「お、おい! どういうつもり……」

「警備隊は3人を捕らえろ!」


 腰を抜かしたままの男たちを尻目に、セルシアが2人を門の中に連れていくのを見てから、俺はジョシュニアさんたちに向かって叫んだ。しかし、彼らはすぐに動こうとしない。


「で、ですがアキラ様、彼らは何も……」


「コイツらは先日、ギルドでセルシアちゃんに暴力を振るったんだ」


「いい加減なことを言うな! 俺たちは暴力なんて……」


「セルシアちゃん、調味料のビンが当たって痛かったよね?」

「え……? あ、はい! とっても痛かったです!」


 本当に彼女は勘がよくて頭の回転も速い。この状況で俺の意図をすぐに汲んでくれたのは、さすがだと言わざるを得ないだろう。


「忘れたとは言わせないぞ。ギルドのレストランで、お前が投げたビンが彼女に当たっただろう」


「あ、あれは……あれは偶然その害獣(がいじゅう)に……」


「偶然だとっ!? あと少しズレていたら顔に直撃だったんだぞ!」

「アキラ様、それは(まこと)のことですか!?」


 ジョシュニアさんの言葉で、シューバさんも含めた警備隊全員が門の外に飛び出してきた。


「聞いてなかったのか? ヤツはすでに認めてるぞ」


「その者たちを捕らえて下さい」

「や、やめろ! 俺たちは何も……!」


 シューバさんの一声で、ならず者の3人は呆気なく縛り上げられてしまう。大の男でもきちんと訓練を積んだであろう兵士には、歯が立たなかったというわけだ。


 そして更に、俺は思わぬ朗報を聞かされることとなる。


「アキラ様」

「何だ?」


「先ほど私は、暴行罪でも怪我を負わせてなければ罰金刑と申し上げました」

「ああ、聞いた」


「ですがこの者たちが暴行を働いたのは、我々が国王陛下から勅命(ちょくめい)(たまわ)って警護するセルシア殿です」


「だったらどうなるんだ?」

「私がお答えしましょう」


 ジョシュニアさんに手を挙げて合図を送り、俺の正面に立ったのはシューバさんだった。


「セルシア殿に危害を加えたとなれば、それは陛下のご命令に背く行為。すなわち反逆罪となります」


「ちょ、ちょっと待て! その害獣にビンを投げ付けたのは認める。しかしあれは半月くらい前のことだぜ」

「そ、そうだ。国王様が命令される前じゃねえか!」

「俺たちはただの暴行罪のはずだ!」


 ヤツらは口々にそんなことを言い出した。まあ、確かにそれも一理あると言えばある。しかしこの()に及んで、まだセルシアを害獣呼ばわりしているのは許せない。更に、暴行の事実は認めたものの、反省している様子が全く見受けられないのだ。


「なあ、シューバさん」

「はい、何でしょう?」


「王国の法に侮辱罪ってのはないのか?」

「侮辱罪? いえ、それはどのような罪なのですか?」


「事実無根なのに、公衆の面前で相手を侮辱する行為だ」


「なるほど。しかし公衆の面前とは言っても、今は我々しかおりませんが」

「忘れたのか?」

「はい?」


「アイツらが自分で言ってたじゃないか。ここは天下の往来だって」


 シューバさんが大きく頷く。しかしそのような法律は王国には存在しないとのことだった。


「ところで何故そんなことを聞かれたのですか?」


「セルシアちゃんを害獣と呼んだのが気に入らないのさ」

「ああ、それでしたら……」


 軽く微笑んだ彼は、その顔に不気味な影を宿して男たちに向き直る。この人、もしかして怖い人なんだろうか。


「貴方たちがセルシア殿に暴行を働いたのは、陛下のご命令の前だったかも知れません」


「そう……だよな。俺たちが反逆罪になるわきゃねえよな」


「ですが! 陛下が警護対象に定められたセルシア殿への暴言は、陛下に対する暴言も同じ。よって不敬(ふけい)罪が成立します」

「ふ、不敬罪だって!?」


 通常、不敬罪は貴族にのみ独断での断罪が許されている。ただしそれでも、その場で相手の首を()ねたりするのはご法度(はっと)とのことだった。処刑する場合には王国へ届け出て、許可を得る必要があるそうだ。よく見るラノベの設定とはちょっと違うな。


 だが、それが国王に対するものとなると意味が違ってくるらしい。国王への不敬罪は、反逆罪と同等の扱いだそうだ。言論統制とも言えなくはないが、コイツらに限ってはそれもアリだと思う。


「残念だったな。えっと、ラクリエルだっけ? だから俺の言うことを聞いて、さっさと立ち去っておけばよかったのに」


「ま、待ってくれ兄さん! もう2度とその害……エルフを害獣呼ばわりはしねえ!」

「そう言われても、俺の一存じゃどうにもならねえし」


 ま、仮に俺にその権限があったとしても、コイツらを許してやるつもりは毛頭ない。だが――


「奴隷共をなぶり殺しにするのもやめる! そ、そうだ、今後は俺たちが奴隷を護る。それでどうだ?」

「少し足りないな」


 彼らの言葉で俺はいいことを思いついた。


「これからは俺の奴隷として世のために尽くすと誓え」

「誓う! いや、誓わせて頂きます!」


「むろん俺の命令は絶対だ。背いた時には即、消し炭にしてやるから覚悟しておけよ」

「わ、分かりました!」


「だそうだがシューバさん、コイツらの件は1度俺に預けてもらえないだろうか」


 そんな俺の申し出に、彼は意外なほどあっさりと応えてくれた。


「アキラ様がそれでいいと(おっしゃ)るなら。我々はアキラ様に従うよう、陛下より(おお)せつかっておりますので」


 かくして街のならず者のラクリエル一味が、俺の配下に加わったのである。

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