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税込み1100円で美少女エルフを買ってしまいました  作者: 白田 まろん
第4章 セルシアと2人の少女
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第2話 自分たちが犯した罪を数えろ

「おおっと警備隊の(かた)、コイツらは俺たちがたった今奴隷商から買ってきた()ですぜ。この通り、売渡(うりわたし)証明書もある」


 俺にはこっちの世界の文字は読めないが、それが正規の書類であることは、イノドアさんの表情から容易に推察出来た。ラクリエルたちは性懲(しょうこ)りもなく、また奴隷商から弱い女の子を買ってきたのだ。しかもいたぶって殺すつもりで。


「それとも、もう一度買い取ってくれやすかい? コイツらは2人だし、エルフではなく人間だ。あの皿でってんなら30枚で手を打ちますよ」

「お前ら、まだそんなことを」


 会話するのも面倒になってきた。てか皿という言葉のせいで、セルシアが痛めつけられていたことへの怒りが再びこみ上げてきたよ。そうなると、先日のギルドで一旦は収まった殺意まで(よみがえ)るのは当然の結果と言わざるを得ない。


「ふんっ! 俺たちが何をしようと勝手だろ? なあ、魔法使いの兄さんよ」

「ここは天下の往来(おうらい)、俺たちは何も悪いことはしてねえ。つまり、兄さんも警備隊の方々もこっちには手も足も出せねえってことだ」


「放して下さい! キャッ!」


 男は容赦なく2人を後方に突き飛ばす。(あら)わになった彼女たちの太腿(ふともも)は、何度も殴られたのか(あざ)だらけだ。おそらく全身があんな感じなのだろう。


「旦那様!」


「アキラ様、奴らの言う通りです。我々にはどうすることも出来ません」


 セルシアが悲痛な声で俺にすがりつき、シューバさんも口惜(くちお)しそうに唇を噛みしめている。だが待てよ。奴らは何も悪いことはしていないと言った。果たしてそうだろうか。


「なあシューバさん、他人の奴隷に暴力を振るった場合も罪にならないのか?」


「いえ、所有者の許可がなければ暴行罪になります」

「そうか」


 俺は彼を押しのけて、セルシアを下がらせてから門の前に歩み出る。


「おい、お前たち!」

「な、何だよ?」


 威勢のいい啖呵(たんか)を切った男だったが、俺が門を開けて外に出ると怯えたように後退(あとずさ)った。


「俺がお前らを叩きのめしたらどうなるんだ?」

「旦那様?」


「アキラ様、いけません! そんなことをされては我々がアキラ様を暴行罪で捕らえなければならなくなります」


「だとよ。ちゃんと聞いたか?」


 ジョシュニアさんが慌てて俺の前に立ちはだかり、両手を広げて静止しようとしている。


「暴行罪で捕まると、どんな罰を受けるんだ?」


「相手が負った怪我の程度にもよりますが、罰金から懲役(ちょうえき)までです。ただ、それが元で相手を死なせてしまった場合には、懲役か死刑のどちらかになります」


「じゃ、怪我まではさせなかったら?」

「罰金刑程度かと」


「なんだ、そんなもんなのか」


 俺の怒りに対して、いくら何でも軽すぎる刑だ。それにコイツらは、これまで何人もの奴隷を殺してきているに違いない。その人たちの無念と、今後苦しめられるであろう奴隷たちのことを考えれば、生かしておく道理すらなさそうに感じる。


 だが、俺は法の番人ではない。


「今すぐその2人を解放して立ち去れ」


「はあ? 兄さんアタマおかしいんじゃねえか?」


「言うことを聞いておいた方が身のためだと思うぞ」

「ふざけんな!」


「どうしても聞き入れないんだな?」


 俺は未だに両手を広げているジョシュニアさんを脇にどけ、右手の人差し指と中指で手刀(しゅとう)を作る。そして(さや)()して軽く握った左手からゆっくりと手刀を抜いた。するとその先端が青白い光を帯び、それを()の当たりにした男たちの顔から血の気が引いていく。


「な、何だよ! 魔法を使おうってのか!?」


「怖いのか?」

「アキラ様!?」


「いいから、警備隊は少し黙っていろ!」


 再び前に立って邪魔しようとした班長さんを、俺はひと睨みして払い除けた。そのあまりの気迫に押されてか、彼女はゴクリと唾を飲み込んで硬直してしまう。


「お、俺たちに何かしやがったら、兄さんが罪人になるんだぞ!」

「安心しろ。お前ら相手に魔法など使うものか」


 それに俺が使えるのは魔法ではなく法力だ。だが、今は言葉遊びに(きょう)じるつもりなどない。


(りん)(ぴょう)(とう)(しゃ)(かい)(じん)(れつ)(ざい)(ぜん)!」

「ひ、ひぃっ!」


 俺は一呼吸置くと、素早く手刀を縦横に振って(はや)九字(くじ)を切った。その動作を見た3人は、自分たちに向けて魔法を放たれたとでも思ったのだろう。仲良く身を寄せ合って恐れおののき、一様(いちよう)尻餅(しりもち)をついて情けない悲鳴を上げるのだった。

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