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税込み1100円で美少女エルフを買ってしまいました  作者: 白田 まろん
第4章 セルシアと2人の少女
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第1話 セルシアの知り合い?

 セルシアに首輪をプレゼントしてから半月ほどが過ぎたその日、敷地内に警備兵の詰め所と、彼らが寝泊まりするための兵舎(へいしゃ)が完成した。国王、仕事(はえ)えな。


 派遣されてきた警備兵は全部で6人。基本は2人ずつ2交代で立哨(りっしょう)するそうだ。むろん緊急時には全員で警備に当たることになると聞かされた。


「こちらが兵舎の間取りとなっております」


 案内係はシューバという、20歳そこそこの若い男性だった。その若さで、いくつかの班を指揮する小隊長らしい。


 彼に促されて入ってみると、部屋は4畳半ほどのワンルームでトイレも完備されている。しかし風呂は付いてなかった。


 もっともこの世界では、湯に()かれるのは貴族や裕福な商家、あるいは温泉街の住人のみというから、これが当たり前なのだろう。そんな部屋が3戸ずつの2階建て、合計で6戸あった。


 ちなみに、台所として使われる水場は共同で狭い。ただ、警備兵たちの食事は毎日王国から届けられるとのことなので、その程度で十分なのかも知れない。


「では、警備の任務に()く兵士たちをご紹介致します」


「セルシアちゃんも一緒で構わないかな?」

「え? 旦那様、私は……」


 俺に付いてきていたセルシアが尻込みしている。だが、シューバさんは(にこ)やかに応えてくれた。


「もちろんです。彼らの任務は主にセルシア殿の警護なのですから」

「そうなの?」


「はい。ここには常駐しない私を含め、警護班全員がエルフ族に対する偏見を持っておりません。どうぞご安心下さい」


 それから、と彼は続ける。


「班員の中には、家族をピラーギルに食い殺された者もおります。その者は特に、今回のアキラ様の偉業に感銘を受けておりました」


「あはは、あれは依頼を受けただけだから」

「ご謙遜を。それではこちらにどうぞ」


 彼に導かれて兵舎の外に出ると詰め所の横に男性4人と女性2人、合わせて6人の兵士が直立不動の姿勢で待機していた。


「皆さん、お2人がお屋敷のご当主、アキラ・カムイ様と使用人のセルシア殿です」


 軍服姿の兵士が一斉に敬礼してくれる様は壮観(そうかん)である。彼らは向かって右からイノドア、カルトス、サブナレ、ヨグースの4人が男性。残りの2人はエイノール、ジョシュニアと名乗ってくれた。


「ジョシュニア班長、代表してご挨拶をお願いします」

「王国警備隊カムイ家警護班班長、ジョシュニア・コロアードと申します!」


 全員を1度で覚えるのは無理だから、ひとまずこの班長さんだけでも覚えておこう。


 彼女はブルーブラックの髪が肩の上辺りで切り揃えられた、涼しい目元に凛々(りり)しさを感じる女性である。身長は俺より10cmくらい低く見えるから、170cm前後といったところだろう。女性としては高い方ではないかと思う。


「アキラ・カムイ様、お会い出来て光栄です!」

「ん?」

「アキラ様、彼女が先ほどお話しした……」


 シューバさんはその先の言葉を濁したが、なるほど、ジョシュニアさんが家族をピラーギルに殺された本人だったのか。


「ぜひ、その時のお話しを……」


「お願いです! お助け下さい!」


 その時、突然女の子が2人、門にすがり付きながら叫び声を上げた。彼女たちが着ている服はボロボロで、あちこちが破れて泥だらけである。加えて露出している肌の部分には、まだ負ったばかりと思われる新しい傷がいくつも見えた。


「どうした……」

「何事かっ!?」


 女の子に近寄ろうとする俺を制して、一番門の近くに立っていたイノドアさんが怒声(どせい)を放つ。


「その前に門を開けてあげなよ」


「ダメです! 素性の知れない者を中に入れるのは危険です!」

「いやいや、怪我だってしてるし」


「ミルエナさん……? それにもしかしてワグーさん?」


 不意にセルシアが、俺の後ろから顔を出して呟いた。信じられない、という表情を浮かべている。


「セルシアちゃん、2人は知り合い?」


「せ、セルシアちゃん!?」

「えっ!? セルシアがどうして……?」


 2人の女の子たちも唖然としていたが、そこへ荒々しい足音が近づいてきた。


「見つけたぞ!」

「手こずらせやがって!」


 何だよ、またあの3人かよ。いい加減、俺の前に出てくるのはよしてくれないか。


「旦那様! 2人を……2人を助けてあげて下さい!」

「知り合いなんだね?」

「はい!」


「聞いた通りだ。門を開けろ」

「わ、分かりました!」


 だが、イノドアさんが門を解錠したところで、2人の細い手首がラクリエルたちによってねじ上げられていた。


「痛いっ!」

「おいっ! その手を放せ!」


 ところが男は、更に俺の神経を逆撫(さかな)でする言葉を吐くのだった。

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