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税込み1100円で美少女エルフを買ってしまいました  作者: 白田 まろん
第2章 まずは金を稼がないとね
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第9話 会いたくなかったんだけど

「じいちゃんなら3年前に……」

「え? 亡くなったの?」

「知らなかったんですか?」


 まあ、死んだよなんて報告に来られるわけはないし、知らないのも当然か。


 ちなみに俺とセルシア、それにケントリアスさんは今、ギルド内のマスターズルームに来ている。ニーナさんの仕事部屋だ。


「母からは体調が悪くなったから、ニホンに帰って静養してるって聞いてたんだけど……」

「ニホン?」


 ケントリアスさんが、(いぶか)しげな表情で呟く。


「旦那様のお国の名前、ですよね?」

「うん、そう」


「そんな国の名前、聞いたことがねえぞ」

「あら、話してないの?」


 セルシアには漠然(ばくぜん)と話していたが、ケントリアスさんとは2日前に出会ったばかりなのだ。だから俺の素性を聞かれた時も、外国から来た程度のことしか話していない。変に興味を持たれても困るし、この人面倒くさそうだし。


「ニホンというのはね……」

「ニーナさん、そんなことより……」


 実は俺たちがここに呼ばれたのは、じいちゃんの話をするためではなかった。何でも昨日のピラーギルの件を王国に報告したところ、国王が興味を持ったというのだ。伝わるの、早過ぎだろ。


「500匹以上の群だった上に、(ぬし)までいたんでしょう?」

「はい。デカかったですね」


「それを貴方たちが2人で倒してしまったんだもの。国王陛下じゃなくても興味持つわよ」


「本当はアキラ1人で倒したんだけどな。ほぼ完食してやがったし」

「でもどうして魚の魔物を倒したくらいで国王様が?」

「えっ!?」


 俺の何気ない一言に、ニーナさんとケントリアスさんが唖然とした表情を返してきた。


「おい、相手は主だったんだぞ」

「それはまあ、あの時もそう聞きましたし」


「ピラーギルの主と言えば討伐のために1個連隊、だいたい3000人くらいが必要だと言われてるんだぜ」

「そうなんですか?」


「ああ。主には常に普通サイズのピラーギルも群れてるからな」


 彼(いわ)く、あの時相手にした群はその中でも異常な数だったそうだ。おそらく主の魔力が強大で、いくつもの群を引き寄せたのだろうということだった。


「数十匹くらいで群れるのがほとんどなんだよ」


「旦那様がお食べになられたのは500匹……」

「セルシアちゃん?」


 その時、何の前触れもなくセルシアの(つぶや)きが耳に入ってきた。あれ、様子が変だぞ。


「旦那様、帰ったら少しお話しさせて頂けますか?」


「あの〜、何の話かな?」

「お聞きしたいことがございますので」


 何だろう。背筋にとっても冷たいものを感じる。気のせいだと思いたいが、彼女の曇りのない笑顔に返って恐怖感を(あお)られるよ。


「ほらほら、そこの2人。こんなところでイチャつかないの!」

「イチャ……!」


 ナイス、ニーナさん。セルシアはどうして俺を睨むのかな。


「王国も巨大な群に気づいて、討伐軍を編成していたところだったそうよ」


「それをアキラがやっつけちまったってわけか。なあアキラ、検問所でクルクレアが言ってたこと、覚えてるか?」

「クルクレアさん? 何でしたっけ?」


「黒っぽい煙のようなものが見えるって言ってただろ?」

「ああ、確かに」


 遠見(とおみ)からの報告だって教えてくれたことだよね。


「それがアイツらのことだったと思うんだよ」

「言われてみれば、方角は合いますね」

「そりゃ、国王様だって興味持つわけだ」


 自分は望遠鏡の汚れだとか言って、バカにしてたクセに。


 でもお陰で法力(ほうりき)の威力が、何となくだけど分かった気がする。あと、本気で使ったらめっちゃ腹が減るってこともね。どれだけ食っても腹が膨らまないのは謎なんだけどさ。


「それで、その国王様がどうしたんです?」

「アキラさんに会いたいそうよ」


「お断りします」


「お、おい、アキラ! 国王様に会えるんだぜ。なんで断るんだよ?」

「俺、作法とか知らないし面倒なんで」


 そもそも国王と言えば、国家権力の(さい)たる人物だ。ラノベの世界ではフレンドリーだったり、ちょっと抜けてたりするが、この情報収集力と行動の素早さである。きっと俺が苦手な、権力を自在に操る()()()()()なのだろう。関わりたいと思う方がどうかしてるよ。


 それにセルシアを始めとする、エルフ族への酷い風潮を野放しにしているのも気に入らない。会ったら燃やしてしまいそうだ。


「陛下はそんなことを気にする方ではないわよ」

「面倒なものは面倒ですから」

「困ったわね」


「どうしてニーナさんが困るんですか?」


「お忍びで、もうすぐここにお見えになるのよ」

「はあ? いつの間に呼んだんですか?」


 そんな素振りは全く見えなかったが。


「陛下は時々ここにお茶を飲みに来られるの。今日はたまたま。それに、父が置いていったニホンの紅茶も大のお気に入りなのよ」


「じいちゃんが?」

「ええ。もうとっくに切れちゃったけど」


 ニーナさんの目は、明らかに買ってこいと言っている。それくらいどうということはないが、俺には応える義理も義務もない。


「そうですか。でも今日はこれからセルシアちゃんと買い物に行くので、国王様に会ってる時間はありませんね」

「お、おい、アキラ……」


 ケントリアスさんが何かを言いかけた時、扉をノックする音が聞こえた。


「マスター、お見えになられました」

「そう、すぐに行くわ」


 ニーナさんは立ち上がると、俺とセルシアを交互に見て微笑む。


「セルシアちゃんも一緒で大丈夫よ。少しだけ、会っていかない?」


「私は……旦那様のお言いつけに従います」

「はぁ……」


 俺は深くため息をついた。これはもう、仕方がないだろう。


「分かりましたよ。でも、少しでもセルシアちゃんを傷つけるような言動があったら、すぐに帰りますからね」


「ええ、構わないわ」


 こうして俺とセルシア、それにケントリアスさんの3人は、ニーナさんと共に国王に会う羽目になってしまったのである。


次話より第3章に入ります

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