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税込み1100円で美少女エルフを買ってしまいました  作者: 白田 まろん
第2章 まずは金を稼がないとね
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第8話 じいちゃんの武勇伝

「ち、父?」


「ええ。貴方から見たらお祖父(じい)様になるけど」

「はあ!?」


 待て待て、じいちゃんが父だって? まさかじいちゃん、ばあちゃんが死んだあと、こっちで子作りしてたってか。てことはこのニーナさんが、俺の叔母(おば)さんになるんだよな。こんな若くて綺麗な人が親戚ってのはウエルカムだが、衝撃度がスマホを水没させちゃったレベルだぞ。


 いや、しかし今はそれより大切なことがある。ラクリエルとかいうならず者たちの始末だ。


「貴様ら、生きて帰れると思うなよ」

「よせって!」


 様子を見ていた3人に向けて再び手刀を抜こうとした俺の腕を、隣に来ていたケントリアスさんが掴む。


「あんな悪党連中でも、殺しちまったら罪人になるのはお前さんだぞ」

「ですけど……」


「アキラが捕まったら、残された嬢ちゃんはどうなると思ってるんだ?」

「それは……」


「おいおい、黙って聞いてりゃ随分なこと言ってくれるじゃねえか」


 言葉と共に、男の1人が腰に差した剣を抜いた。それを見た残りの2人も、同様に剣を抜いて構える。レストランの客たちは悲鳴を上げて後退(あとずさ)り、その中には先ほどセルシアを獣扱いした奴もいた。


「君たち、私のギルドで剣を抜くとはいい度胸ね」

「へっ! ギルマスだか何だか知らねえが、エルフのクセに生意気だぞ!」


「私はハーフエルフよ。いいから今すぐ、その剣を収めなさい。さもないと……」


 なるほど。ハーフエルフだから、セルシアより耳が短いのか。


 それはそうと、彼女の言葉で壁際に整列していたウエイトレスさん達が、一斉に3人を取り囲んでいた。見るとその手には、どこから取り出したのか短剣が握られている。


「小娘が何人かかってこようと、俺らの敵じゃねえぜ」


「分かってないわね。うちの従業員は皆、王国軍で戦闘訓練を受けているのよ」

「何だとっ!」


「当たり前じゃない。登録にくる人の中には荒くれ者だっているんだから」


 ケントリアスさんとか、最初の時に見た大槌(おおつち)を持った人なんかのことだと思う。


「そして私はゼンゾウの娘よ。名前くらいは聞いたことがあるんじゃないかしら?」


「ぜ、ゼンゾウの……娘……?」

「分かったらさっさと剣を収める!」


 やっぱりこの人、俺の叔母さんだったのか。何を隠そうゼンゾウとは、漢字で善蔵(ぜんぞう)と書くじいちゃんの名だ。話の展開から別人ということもなさそうだし、なんだかフクザツな気分だよ。


 それにしてもじいちゃんの名前、(とどろ)いちゃってるぞ。さっきまで威勢のよかったならず者たちの顔が、気の毒に思えるほど青ざめているのだ。そんなの見せられたら、殺意も失せてしまうよ。


「いい? 今後この子たちにちょっかい出したら、うちのギルドが全力で貴方たちを潰すから。覚えておきなさい」

「ちえっ! わぁったよ!」


「ならさっさと出ていく! そして2度とここには来ないように!」

「けっ! 誰がこんなところ、来てやるもんか!」


 負け惜しみを言いながら、3人はそそくさと尻尾(しっぽ)を巻いて出ていった。


「セルシアちゃん、痛みは?」

「大丈夫です」


 俺はまだ少し震えているセルシアを、そっと抱きしめた。それでようやく安心したのか、彼女の頬を涙が伝う。


「仲がいいわね」

「大事な使用人ですから」


「使用人?」


「ええ。ね?」

「はい!」


 セルシアに微笑みかけると、彼女も嬉しそうに首を縦に振った。


「そう。ところで貴方と貴方!」


 ニーナさんがセルシアを獣扱いした客に鋭い視線を送る。


「うちは種族で差別はせず、誰にでも料理を出すの。そしてこのエルフちゃんは、将来の私の姪っ子よ」


 はい?


「それを獣呼ばわりするなんて許せないわ」


 ちょっと待って。その前なんて言った?


「お代はいいから貴方たちも出ていきなさい。もちろん、今後の出入りも禁止よ」


 気まずそうに出ていく客を見送ると、今度は残った客たちに笑顔を振りまく。


「お騒がせしたわね。今日は皆さん、お代はいいのでゆっくり料理を楽しんでいって」


「おお! ギルマスさん、酒もいいか?」

「どうぞ。好きなだけ飲んで、食べてちょうだい」


「ヒャッホー!」

「ラーカンドル最高!」


 それからニーナさんは、再び俺たちにニッコリと微笑む。


「さて、これでいいわね」


 いや、待ってってば。


「あの、さっきの姪っ子って……?」


「あら、その彼女……セルシアちゃんだっけ? お嫁さんにしてあげるんじゃないの?」

「はぁ!?」


「えっ! お嫁さん……?」


 俺とセルシアは、抱き合ったまま互いを見つめて絶句したが、急に恥ずかしくなってしまい慌てて離れた。


「子作りはまだなの?」

「こ、子作りって!」


「何をそんなに慌ててるのかしら。父と母、貴方のお祖父様と私の母は、出会ったその日から始めたらしいわよ」


 じいちゃん、何やってんだよ。


「そして私が産まれた」

「はぁ……」


「貴方たちも早く始めた方がいいわよ」

「何をですかっ!?」


「子作りに決まってるじゃない。エルフ族はなかなか妊娠しないんだから。それに使用人として雇ったなら、するのは当たり前のことでしょ」


 当たり前なのか。思わずエッチな妄想に入ってから何気なくセルシアを見ると、彼女は真っ赤になってうつむいてしまった。いやいや、違うって。そうじゃないから。


 この後俺は、彼女とはそういう間柄ではないと説明したが、納得してもらった頃にはヘトヘトになっていた。ただ、セルシアががっかりした表情になったのにはちょっと驚いたよ。鈍感系主人公になる気はないが、まさかね。彼女が俺に恋愛感情を抱いているなんて、あるわけないよね。


 そんな思いで改めて彼女に目を向けると、ふいっと顔を逸らされてしまった。やっぱりないかぁ。とほほ。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 3人に謝罪等のけじめをつけさせなかったこと。
[良い点] セルシアちゃんの健気さにほっこりするところ。 [気になる点] ニーナさんは義母ではなくて血のつながった叔母で、 セルシアちゃんは将来の義理の姪かと思います。
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