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税込み1100円で美少女エルフを買ってしまいました  作者: 白田 まろん
第2章 まずは金を稼がないとね
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第6話 思ったより報酬がかさばる

 翌日、予定通り俺とセルシアは、報酬を受け取るためにギルドへと向かっていた。彼女は黒地に小花柄のロングスカートと白の丸首ニット、その上から昨夜渡したダッフルコートを着ている。長い耳はフードに隠れているので、彼女がエルフだと気づかれることはまずないだろう。


「セルシアちゃん、絶対に俺から離れちゃダメだよ」

「はい!」


 しっかり俺の腕に巻きついた彼女は、とにかく上機嫌だ。


「今日はまずギルドに行って、昨日の報酬をもらってからランチしよう」


「ランチ?」

「お昼ご飯のことだよ」


「お昼ご飯のことをランチ、と言うのですね?」

「俺の国ではね」


「何だかお洒落です」


 相変わらず、すれ違う人は気さくに挨拶してくれる。その度に怯えたセルシアが、俺の腕にギュッとしがみつくのだ。気の毒だが、役得感が拭えない。


 それとやはりこちらの世界ではダッフルコートが目を惹き、何人かの若い女性からは購入元を尋ねられたりもした。外国製品なのでこの国では買えないと答えると、自分が着ているコートに金貨をプラスするから、譲ってくれなんて人もいたよ。もちろん断ったけどね。


「食べたら服屋を見に行こう。セルシアちゃんは欲しい服とかある?」

「私が着て旦那様が喜んで下さるものなら、どんなものでもいいです」


 メイド服がいいかな。初めてここに来た時も思ったけど、絶対彼女に似合うと思うんだよね。日本の通販で買えるヤツはコスプレ衣装がほとんどだから、こっちで買えるちゃんとした物を着せてあげたい。


 あとはセーラー服姿なんかも見てみたいね。安っぽいのじゃなくて、ちゃんと制服として使える物も買えるみたいだから、今度ポチっておくことにしよう。


「ここですか?」

「うん、そう」


 彼女が立ち止まったのは、レンガ造りの大きな建物の前である。メイド服姿や制服姿を妄想してたもんだから、危うく通り過ぎるところだったよ。セルシア、グッジョブ。


「大きな建物ですね」

「だね〜」


 扉を開けて中に入ると、一昨日(おととい)来た時より食事をしている人もウエイトレスさんも、格段に人数が多い。ちょうど昼時だし、ケントリアスさんが言った通り美味い料理を出すなら、賑わっていて当然だろう。


 ひとまずレストランの方は素通りして、俺はセルシアを連れて2階に上がる。すると、パミラさんが(にこ)やかに迎えてくれた。


「アキラ様、昨日はお疲れさまでした」

「こんにちは、パミラさん」


「そちらの方は?」


 パミラさんに視線を向けられたセルシアが、慌てて俺の後ろに隠れてしまう。


「大丈夫だよ、セルシアちゃん。この人はセルシアちゃんのことを知ってるから」


「あ、ではその方がアキラさんが助けたっていう?」


「せ、セルシアと……申します……」

「初めまして。パミラです」


 それからパミラさんは俺の方に向き直る。


「ケントリアスさんから聞いてます。半分を金貨、残りを銀貨でよろしかったですよね?」


 差し出されたのは金貨4枚と、銀貨400枚である。金貨は500円玉と同じくらいの大きさで、銀貨はそれより一回りほど大きく、日本の硬貨のように50枚1組で紙に包まれていた。貨幣にはこの他に小銀貨と白銅貨、銅貨があり、それぞれ500円、100円、10円くらいの価値と見てよさそうだ。


 それにしてもどうしよう。財布なんか持ってないし、そもそもこの数ではあっても役に立たない。とりあえず、普段持ち歩く程度のお金を入れられるような財布は、後で買っておけばいいか。


「ありがとうございます。セルシアちゃん、これ、コートのポッケに入れておいてくれる?」


「え? 私の、ですか?」

「うん」


 彼女に銀貨の包み1本を渡す。


「何か欲しい物があったら、それ使っていいよ」

「で、でも……」


 女の子なんだから、小物やアクセサリーなんかも欲しいだろうしね。


 それから俺たちは1階のレストランに立ち寄り、2人して鶏肉と野菜を使ったランチを注文した。セルシアには食べたい料理を選んでいいと言ったのに対し、彼女が同じ物がいいと応えたからである。


 ちなみに彼女は、食事中もコートを着たままだった。


「美味しかったですけど、私は旦那様のお作りになる物の方が好きです」


 ランチを食べ終えてのこの一言には、思わず笑ってしまったよ。


 もっとも人が口にするようなまともな料理自体、うちに来て初めて食べた彼女である。俺の味付けが、言わばお袋の味みたいなものだ。もちろんこちらの世界の料理も、決して不味(マズ)いわけではない。しかし優れた調味料などが数多く存在する日本と比較してしまうと、どうしても落ちると言わざるを得ないのだろう。


「さて、そろそろ行こうか」


 そう言って席を立とうとした時、セルシアの顔が青ざめているのに気づいた。悪い物でも入っていたのだろうか。だが、そうではないとすぐに気づく。


「あるえぇ? こんなところに汚らしい奴隷エルフがいるぞぉ」


 俺たちのテーブルに向かってゆっくりと歩いてくるのは、あの日彼女をいたぶっていた男たち。ラクリエルとマゴベラ、それにサノムトルの3人だった。

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