魔力の暴走?!
ーオヤジ視点ー
待つ身の辛さ。
そんなモノ感じた事もなかった。
だから、知らなかったのだ。
最前線に立てない人間の心情が…。
ふと、戦いの最中を思い出す。
『ゼルグフ様には決してお分かりにはならない。単なる人間の身の上の不甲斐なさを…』
あれは、確かエンデバンだっか?
当時、ダーラントの右腕としてサポートしていた時のものだな。
時計の針は、やけにゆっくりだ。
買い物は出来ただろうか?
ちゃんと、ランスの指示に従っているだろうか?
胸騒ぎがして、ジッとしていられない。
ん?
アレはなんの虫だ?
こんな一列に並んで、俺の方へ向かって…
「うぇ!!
虫とか俺は苦手なんだよ。
ゼルグフ!!早く追い出してくれ!!」
外野の戯言は放っておこう。
あの虫…!!!!
そうだ、やっぱり…。
と、確信したその瞬間!!
ドドドドドドンンンンンンンンン!!!!!!!!
身体の魔力が外へと溢れ出した
怒りが身体中を駆け巡ったのだ。
それは、体験した事のないモノで…。
ーランス視点ー
ミニパパラヌの甲高い声が指示を出す。
『言いから、早く追うんだ。
きっと助けが必要になる!!』
肩に座ったバランス感覚の良いミニパパラヌの言う通りにする。
と、言うかそれ以外出来ない。
誘拐犯が、パパラヌ本体を持ち去ったのだ。
何が起こるか分からない。
(それがパパラヌ!!)
だからこそ、従うしか無い。
どうやら、本体の居所が分かる仕組みらしく、誘拐犯とパパラヌ本体のかなり近づいたようだ。
ここは…まさかの王宮?!
それでも、ようやくパパラヌの近くに来たとホッとした。
そう思ったのに…。
鬼だ。
鬼が猛スピードでこちらに向かって来る。。。
怖っ!!!
うっ。
鬼の狙いは間違いなく、俺だな。
一直線だからね。
定規で引いたみたいに、ホント真っ直ぐで…。
周りにあるモノや人々に見向きもしないんだからおっかない…。
今の現状は、パパラヌの護衛として最悪の結果なのだ。甘んじて受けるしか…思い詰めていたら、呑気なミニパパラヌの声がする。
『心配するなよ、お兄さん!!
おーい、オヤジ…こっちだよ〜』
え?まさか呼び寄せてる?!
肩のミニパパラヌがゼルグフ様をこっちへと誘導していた。。。
背中に冷たい汗が流れ落ちる。
万事休す。
下を向いたまま、固まってると、なんと…ゼルグフ様は我々に気づかずそのまま通り過ぎた?!
ん?
あのオーラ。
ちょっと不味くないか?
見た事のない『魔力の塊』が身体中に纏わりついている。
あのまま進めば、間違いなく王宮が木っ端微塵になる。。。
わーーー!!!!!!!!
不味すぎる、国際的な大問題になるよ。。
慌てる俺を他所に、パパラヌの独り言が…。
『お?
むむむぅ。
ならばコレを喰らえ!!』
何?
肩の上のパパラヌが珍しくおかんむりのような?!
え?
光が…光が集まって来る??
点々とした光が大量に肩のパパラヌの元へ集まり出した!!
『蛍たちよ!!
良いか?
オヤジに、あんな勢いだけじゃ無理だから耳を澄ましてって…あれ?
なんか、本体の緊急信号が途絶えたし…。
えー!!なんか、本体ってば嬉しそう??』
待て!!
そんな呑気な場合じゃないぞ!
今、ゼルグフ様が腕を振り上げて魔法棒を構えてる?!
間に合わない!!!
『集え、この場を支配する力の全てよ。
この王宮に通り道を開けよ!!!』
あ、あーーーーーー!!!!!!
間に合わなかったかぁ…。
そりゃ、
あ、開きましたよ。
確かに、通り道は…。
でも、よく見れば通り道と言うよりは→『穴』
真っ直ぐ向こうに空が見えるほどの『穴』
しかも!!
怒りに燃えるゼルグフ様は、『穴』如きでは修まらず次なる攻撃態勢に入ろうとしてるし!!
ま、待って…え?
点々とした光は急速にゼルグフ様の元に集まり出して眩しいな…!!!
ピカッ!!!!!!
なに?!
まさか…
あの集まってた光が爆発したのか?!
「目が、目がチカチカして見えない…ん?
タヌキ?
声が聞こえるような…側から悲鳴も?!」
ゼルグフ様の様子がオカシイ…。
なんだ?!
もしや頭を打って意識が混濁しているのでは?
やっと怒気の治まったゼルグフ様になり近づける様になったので、俺が慌てて近寄ると肩にいたミニパパラヌがゼルグフ様へと飛び移った。
『さあ、オヤジにもやっと聞こえたな!!
本体は、何か良いものを見つけたみたいだぞ!!
進め!!!本体までひと飛びだぁ!』
その声が聞こえたと思ったと同時にゼルグフ様のお姿が見えなくなる。
何処へ?
あの一瞬で、まさか…。
周りを見れば、恐々コチラを見つめる巨人族の護衛兵。
辺りは静まり返っていた。
ふぅ。
疲れ切った俺は、とにかく一歩ずつ『穴』へと向かう。ゼルグフ様とパパラヌを追いかけて…。
そう、パパラヌが先程、指差した方向を信じて…。