失恋から脱出するには?!
ーたぬき視点ー
演奏が終わる頃、仲間たちは森へと帰って行った。
寂しいなぁ…。
そんな想いで去りゆく仲間たちを見ていたら、河童が気を利かせて俺に鈴をくれた。
鈴蘭のカタチに似た鈴。
『コレを渡して欲しいって、言われたよ』
もしかして、コレも楽器の一部に?
『じゃあ、帰るね』
え?
コレの使い方は??
河童の姿が段々と見えなくなる?!
まさか…
『アレは、川にいるモノ。
本体は、元々ここにおらんわ。
それよりも早く我を案内せよ』
ん??
案内…?
馬…だから牧場かな?
『あやつに言えば分かるわ!』
もう!!
バイリンガルは忙しいなぁ、馬語の翻訳もしなきゃいけないしな。
説明してみたけど。。
どうしてだろう。うまくいかない…。
オヤジめ。
失恋の痛手でやる気を失ってるな。
と、なれば。
ひとつ!!!
髪だな。
そうだよ。坊主しかない。
頭を丸めて、袈裟を着る。
そして、失恋から脱出する。
『馬。申し訳ないけど失恋をまずは癒さなきゃ。
丸坊主に出来る?』
馬は変化の才能がある。
なんて言っても、あのオヤジが美女に変化したんだから!!
『よいのか?』
オヤジの顔色が悪い気がする。
早く!!
とにかく、俺は袈裟を探さなきゃ。
オヤジのファッションリーダーとしての責任もある。
カッコいい袈裟を見つけるぞー!!
「待て、タヌキ。
この状況で何処へ…」
オヤジ〜。
待ち切れない気持ちもわかるけど、少し待ってくれーー!!
ーグラセル視点ー
精霊とパパラヌの演奏。
それは歓喜に湧く人々を一瞬で、黙らせる力のあるモノ。
ラクスゥが尻尾を揺らせば、柔らかな光がその場に現れて。
まるで小さな虹が沢山生まれているような。
更にはレレベーナだ。
水に関わる精霊だと理解するも、力の強さかのか直視出来ない。
まるで、太鼓に合わせて生まれる光の競演だ。
何もかも忘れて見惚れていたのが、不味かったのか。
いつの間にか、ラクスゥもレレベーナも精霊も何処にもいない。
まぁ、彼らは己の気が向かねば我々の目には見えないモノだ。
今、この街の住人全ての目に写る事自体が奇跡的なのだから。
残念さと、先程の歓喜の後味に翻弄されている俺の手を、誰かが引っ張る?!
結構な力で俺を連れ去ろうとしてるのは、まさかのパパラヌ?!
「店長!!
仲良しは後にして、今はオヤジのケサの為に頑張る時だから、力を貸してくれ。
頼むよ!!」
ケサ?
頑張る時??
はぁ、何のことか分からないまま俺はパパラヌと街中を移動中だ。
振り返れば、遠くに焦るゼルグフが見えた。
手を振り合図をした。
「こっちは任せておけ!」と。
久しぶりの暗号は通じただろうか?
しかし…。
飛んで火に入る夏の虫だな。
今のうちに。。。パパラヌの研究を…。
(後からこんな事を考えていた俺をぶちのめしたくなるが…それはまた先の話。だな…)