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買い物もスキルがいるな…(別視点 ギルマス)

最近、買い物とかしてないから忘れてた。

2500ガイで、どんくらい買い物出来たっけ?

足りなきゃ、ギルドへもう一度行って貯めてた分を下ろすか。


とにかく、まずは毛布からか。

寒さが厳しいから、俺だって一枚じゃマズイ。


この際、二枚買ってパパラヌの奴の分は新品にしてやるか。毛皮あるくせに、寒がりだからな。


は!

これは、その。

飼うとかじゃなくてだ。

アイツが居座りそうな時の為にだ、な。


えっと。



はぁーーー。

誰も聞いてないのにする言い訳は虚しい。



とにかく、まずは雑貨屋へ入った。

この小さな町では、たった一軒の雑貨屋だ。


「へい、いらっしゃい。

おや、アンタはあのおっかない森の小屋に住んでる狩りの人かい?


珍しいねぇ、滅多に町まで降りてこないのに、さ!」



人と話すのは、最近はアサビさん以外なかったから口が更に重くなるな。

困った。

毛布は、諦めるか。


「分かった!

お兄さん、毛布をお探しだね?

私かい?私ら商売人は、お客さんの欲しいものが分かるのさ」


なんと。

珍しい能力持ちだな。

そこへ行くと俺のなど、大したものでもないな。


「まずは、コレだね。

毛山羊(ケヤギ)。普段使いにゃ勿体無いが良い品物だよ。

80ガイは値段よりは、お得感があるから。

更には毛猫(ケーニャ)も良いよ。

珍しい砂漠にいる奴でね。だから110ガイするけど、毛感触最高さ。

一度買ったら手放せないよ。

あ!兄さんの予算も聞かずに悪かったね。

もっと、安いのにするかい?」


あまりの早口に半分も聞き取れずにいたが、先程からやたら目に入る毛布を見つけた。

あれなら、極寒も耐えられそうな気がする。


手を伸ばすと。


「おや、兄さん目利きかい?

猛毛羊(モーモーヒツジ)の毛布を手に取るとはやるねぇ。

こりゃ私も初めて入荷したものでね。

あんまり高額だから、この辺りの人間には用がない品さ。

ただ、首都に出荷する商人が襲われてコレだけしか残らなかったんだってさ。

まあ、命があれば有り難いってもんたけどね」


「いくらだ?」


「ちょっと、兄さんでは手が届かないと思うよ。

300ガイもするんだよ。だから、コッチの…」


「買った。全部くれ」


どうした?

早口な店主が無言になるとは。


買い手としては、俺は不合格か?


「あ、ごめんなさいよ。

えっと、3枚で900ガイだよ。

もし…あ!

毎度あり。今、お包みしますね」


良かった。

早口の店主は、売ってくれたようだ。

あのフサフサ感は、パパラヌの毛皮を越すだろう。これなら…。


毛布を肩に担ぐと店を出て、食料品屋へ向かった。

いつもはパンとミルクくらいしか買わないが、今日は少し多めに買うか。


箱に買い物を詰めていたら、店主が寄ってきた。

臭いのか、俺。


「だんな。

その中にいれた、チーズや干し肉はかなりのお値段だよ。それにそのパンの量。

一人じゃ腐るよ。

それより、このクッキーなんか日持ちするから良いよ。ほら、芋も日持ちするし」


次々と紹介されるものも、箱へ。

そのまま、ドンとカウンターへ出すと店主が計算を始める。


あれは。

久しぶりに見た。


「肉巻き」だ。

首都にいた頃は、良く食べてたな。


これも。

ついでに、数個いれた。


「いいのかい?

全部で800ガイにもなるよ」


頷く代わりに、料金を乗せた。


箱を小脇に抱えて小屋へ向かう。

とにかく、パパラヌがまた、腹の虫を鳴らしているだろう。


急いで帰り着いた小屋の扉は、少し開いていた。


パパラヌ…。


居ないのか?


火は燃えていて、暖かだがパパラヌは居なかった。


俺は荷物を降ろして、苦笑した。

そりゃそうだ。


野生の動物がいつまでも、こんな小屋にいる訳ないか。


パパラヌの為に大量に買った食料や毛布を並べて、アサビ嬢に引き取って貰う算段をしていたその時。


ギギーー。

何かが、扉から覗いてる?


パパラヌ!!



すまなそうな顔をして、ひょこひょこ帰ってきた。しかも、何か葉っぱを持ってだ。

なんだろうか?


そうか。

腹の虫を治めようと食料の葉っぱを取りに…ん?


ビクビクしながら部屋の隅にいたパパラヌは、奇怪な行動をする。


何を?


葉っぱを床に擦り付けて、バサバサと埃を撒い散らしていた。


俺がただ、見つめてたらやたらと張り切って同じ行動していたが、アレは何の行動だろうか?

アサビ嬢に聞くことがまた、増えたな。


とにかく、テーブルに置いた食料品が埃まみれになる前にやめさせなきゃ。


不思議と、このパパラヌは言葉が通じるから。

本当だ!決して、飼い主の贔屓目とかじゃないからな!

まあ、気のせいかもしれないけど…。

やめてくれて助かった。


さて、パパラヌの腹の虫の為にも、まずはテーブルの上の食べ物を見せ食べるように勧めると。


「肉巻き」を最初に掴んだ?!


アレは動物が食べるものなのか?

剥こうとして、四苦八苦しているから手伝ってやると顔じゅうを汁でベタベタにして食べてる。


蒸かし芋や干し肉などすぐに食べれそうなものを並べていたが、目が泳いでいる。

かなり、時間をかけてクッキーに手を伸ばす。


にまーっ。


パパラヌも笑うのか…。


食べる前から、ニヤついたパパラヌはクッキーのカスを撒き散らしながら食べていた。

これじゃあ、掃除が必要か。


それにしても、寒いな。

火が小さくなってきたからか。

そろそろ、頼んだ薪が届く頃かな。

この辺りのギルドは、珍しく薪の配達をしているのだ。


お?蹄の音がする。

森深いから、馬車で配達に来るんだ。


ビクッ。


パパラヌが慄いている?

ほお、パパラヌも蹄の音がに気がついたのか?

耳は良いんだな。


それにしても、気弱な野生動物だな。

これで野生で生き延びてたのが不思議だ。

いや。違うか。

だから行き倒れてたと、言うべきか。


ドンドンドン!


「ゼギーさん。お届け物です。」


これを届けるギルドの職員は、普段はギルドで見かけない。

おそらく、配達専用の職員なのだろう。


扉を開け、薪を受け取っていると職員が固まったではないか。

珍しいな。

無関心っぽい人だと思ってたのだか。


あぁ、そうか。

パパラヌがいるからか。


「コレはな。偶然が重なった結果で。

とにかく、飼うとかそういうんじゃなくてな。

とにかく、パパラヌがココにいるからだな。

必要に迫られてと、言うか…

まあ、いるなら食べるだろうと思ってな」


いかん。

会話スキルゼロだから、変な言い訳になった気がする。

ここ数年、滅多に会話なぞしないからな。


配達人は、一枚の紙を寄越した。


『パパラヌの食べる物!』

と題されたのは、恐らくアサビ嬢のメモ書きで。


「助かった。

報酬から、代金を支払ってくれ」

と言うと配達人は、ペコリと頭を下げて帰っていった。

(パパラヌまで、お辞儀をしていたのには驚いたが。真似好きか?)


その後、猛毛羊の毛布で寝床を作ってやるとパパラヌは潜って暫くの間、奇声を上げていた。


喜んでる?んだろうな…たぶん。




ーギルドマスター視点ー


その頃、町では…。


「ねぇ、聞いた?

雑貨屋の女将さん。奇声を上げてるから見に行ったらあの高級品の毛布が売れたって叫んでたらしいのよ」


「あら、私が聞いた話では食料品屋も同じらしいわよ。なんでも一ヶ月分があっという間に売れたらしいの。入荷したけど、高すぎて売れないあのクッキーすら全部売れたらしいわよ」


婦人の会話を聞きながら、ギルドへの帰り道を急いだ。


早く、アサビ嬢に伝えなくては。

俺がしている薪の配達は、誰にでも出来る仕事じゃない。

命懸けの仕事だ。

それは。

あの森の中に行くには、冒険者を雇う必要がある程危険な場所だからだ。更に言えば、Aランク以上が必要だ。

ギルドマスターの自分なら、問題はないが。



ゼギーが来なければ、そもそも自分は首都にいただろう。訳あって、この町の近くにゼギーが居を構えたと言う情報は極秘扱いで回ってきたので自分はすぐさま立候補して高倍率の中、合格したのだ。

(恐らく面識が無い…が最大の自分の売りだっただろう)


顔が売れてなくて、実力のある人間。

その双方を有していた自分がここに着いた翌日。

ゼギーは、初めてこのギルドセンターに獲物を売りに来ていた。


もし。

馬小屋の改造が遅れていたら…。

もし。

アサビ嬢が、見事な演技力を見せなかったら…。


彼は、二度とココへは現れなかっただろう。

それだけの理由が彼にはあるのだから。


それにしても、驚いた。

まさか、本当にパパラヌを飼っていたとは。


しかも、飯時のテーブルには高級品が山積みだとは。


アサビ嬢を見習って、表情筋を鍛えなくちゃいけないな。


でも。

柔らかに笑うあの人を久しぶりに見て嬉しかった。



SSSランク冒険者…ゼルグフ。

幼い頃見た彼を、俺は忘れてはいないから。




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