追いついた?ーカラ視点ー
ーカラ視点ー
やっと追いついた…。
ラクスゥの登場と言う驚くべき事態に、唖然としている間に二人を見送る事になった。
近くに居たかったが残念だ。
だが、『聖者の塔』の危機的状況は以前よりその兆候を我が国の者達が掴んでいた。
その深刻さに父王も憂いていたのだ。
魔法使いは、世界の宝。
その中心地とも言える場所。
その崩壊は、魔法使いの奪い合いになる可能性を含む。
ならば、最も危機的なのは間違いなくゼルグフだ。
彼は今、フリーだからだ。
急ぎで駆けつけた俺は、またもや出遅れたと知った。
あり得ない事に『聖者の塔』は既に回復していたらからだ。
それどころではない!!
鐘が鳴ったと言うのだ。
そのせいで街中が浮かれ気分に包まれ、まるで違う街だ。
『聖者の塔』から出る魔力のウェーブは、街を超えて辺り一面を包み込んでいた。
永らくその恩恵の元、魔法道具の開発をして来たこの国の人々は魔力無しでは暮らせない。
しかし、元々魔法使いなどほんの一部。
普通の人間たちは、塔から出る魔力を使い魔法道具を使っていたのだ。
徐々に減少する魔力に街は衰退の一途を辿っていたのだ。
ところがどうだ!
店先のカラクリ道具たちは賑やかな音を立てている。まるで歓喜に沸く人々の心の様に。
あちこちから、掛かる客引きの声には明るさが溢れ赤札があちこちに立つ。
『復活祝い!!
今なら10%引き!!
復活を祝して、今日だけ半額!!
今、買った人には更に二個オマケだよ〜!!』
謳い文句に人々の明るい声が重なり、賑々しい広場に一際人だかりが出来ていた。
何事かと、覗いてビックリしてのだ。
そう。
そこには目的の人物と一匹が…いた。
ゼルグフ…いったい何をやってるんだ?!
ーグラセル視点ー
見失った!!
抜かったな…俺とした事が。。。
だいたいマルスの馬鹿が悪いのだ。
うちの店に押しかけた上、塔にまで付いてきて何の役にも立たないクセに(まぁ。俺とて大した役に立たなかったが…)
あのパパラヌ。
じっくりと研究したかった。
塔で会ったと言うのは、恐らくこの国の始祖である女王。
だとすれば、彼女は未だ存命なのか?
それとも別の存在に変化したのか?
いみじくもゼルグフが彼女の姿に変化していたのにも訳がありそうだが。
何処へ行ったのだ?
恐らく、買い物、買い物とパパラヌが叫んでいた記憶があるから市場へと向かった。
しかし、最悪だ。
街の混雑は想像を絶する!!
人混みの苦手なゼルグフがパパラヌに付き合って買い物へ行くとは。あいつも大人になったものだ。
しかし、先へ進めない。
そう言えば、ゼルグフはこの国の英雄的存在だ。見つかると面倒だといつも変装したいたが。
この人混みならば、その心配も無いか。
んん?
何が?
リズミカルな音が響いている。
何とも心地よい音。
太鼓か?
ふーむ。
まぁ、この騒ぎでは太鼓などぴったりだ。
なるほど。
誰が叩いているのか、中々上手いなぁ。
!!!!!!
ゼルグフ?!
いや、パパラヌか?
何故買い物に来て、腹太鼓となったのだ?
その上、そのお連れ様は?何だぁ??
やたらと多い人混みが静まり返るお客様の数々。
ラクスゥ。
レレベーナ。
そして、何かの精霊だろうか?
何か布を被っているから、顔が見えないが…。
そして、パパラヌとパパラヌの大群?
魔力とは違う何かで辺りが包まれていた。
長い時間生きて来たが、初めて見る風景だった。
女王様…いや、主様。
塔から見ておられるだろうか。
パパラヌ達の太鼓の音は、森を超え何処までも広がっていった…