当たって砕けろ?!
ーたぬき視点ー
『貴方のオカゲ』
やっぱり、オヤジの目的地はこの店だった。
はぁ、類友か?
フェイクの扉の仕掛けと言い、客を選ぶ店だったらしい。
店主のグラセルは、怪しい魔法道具作りの天才らしくさっきから警察のマルスさんに詰め寄られていた。
「いくら稀代の天才と名を馳せるグラセル殿と言っても今の言葉は絶対に許せません」
男って、譲れないモノがあるんだ。
それが、だよ。
昔年のアイドルだったら?
そう!!
今のマルスさんに状態はまさにそれ!!
分かるけどさぁ。
役者が違う感じなんだよなぁ。
オヤジと言えば、自分を庇って怒り心頭のマルスさんを完全放置。
まぁ、最初から激しかったモノなぁ。
「ゼルグフ様!!!!!!
まさかこんな店でゼルグフ様にお会い出来るとは…
何という幸運だろう。
これも王女姿を完璧に真似られたゼルグフ様の魔法の凄さとセンスの良さだ。
伝わる王女より数段上の艶姚な姿にドキッとしました。更には見事な肉体美!!
恐れ入りました。
あの肉体美ならば、お見せになりたいお気持ち分かります。いや、なにも申されるな。
男ならば、自慢でしょうな」
あの、長ゼリフ。
オヤジと来たら、途中から魂の抜けた顔になってたよ。
分かるよ、オヤジ。
あんなすれ違うタイプの人間なんて身近にいないから、疲れるよな。
無理すんな!!
あれ?
肩を落として疲れ切ったまま、店の奥へ向かって行ったよ。
買いたいモノあるのかな?
ーオヤジ視点ー
つ、疲れた。
そう言えばこういう奴だった。
マルス。。。
忘れてた。いや、忘れようと心から思ったんだった。
少しばかりグラセルにマルスを委ねて目的地に行くか。
ここには、魔力探知機がある。
ちゃちい世間に溢れているモノではない。
ここがグラセルの凄いところだ。
広範囲に、しかも精度は高い上に『聖者の塔』に関しては記録をとっている。
本人曰く『聖者の塔の研究者』と名乗っている。
と、くればここに異変の情報が無い訳がない。
グラセルのあの痩せた身体や青白い顔も、何とかしようと飲食を忘れて研究に没頭した結果だろうからな。
さてと。
ん?
これは…。
用意は万端か。
なるほど…これは異常だ。
中に入れない『聖者の塔』で唯一の避難場所がある。魔法使いのみが入れる場所。
そして、どんな魔力不足も一瞬で満タンになる魔力の満ち溢れた場所だ。
そこに一ヶ月前から入れないようだ。
更には言えば、魔力の枯渇した。
いや。
この塔は、常に大量の魔力を放射していたのだ。
そのお陰で他国も攻め入らない場所で。
バリアに似た防護壁を超えられるのは、魔法使いのみだったからだ。
また、街の全ての動力は、魔力。
魔法道具に頼り切りで生きるこの国にとり、最大のピンチだ。
どうすれば。
迷いながらも、近づいてきたタヌキをみてフッと笑ったよ。
何だ、ソレ?
「青いモノと古いモノ。
それを花嫁にプレゼントしよう!!
確か結婚式に必要だから」
タヌキの手には…
青い石が。
ソレハ…魔法道具で石鹸だけどな。
流れると、贈り物にしないので有名なのに。
でも。
タヌキの満足顔を見て、悩みが薄くなったよ。
当たって砕けろだな。。タヌキ。
明日は、その青い古ぼけた石を持って『聖者の塔』へ行こうな。
まだ、グラセルとマルスの口論は続いていたが…
「喧嘩するほど仲が良いんだな、
そうか!!
二人は親友なんだー!」
の、叫びで終了となる。
やるな…タヌキ。