オヤジ…恥の上塗り?!
大通りから、裏道に入った時見えて来たのは怪しげ満載の看板!
『貴方のオカゲ』
ええーー!!
ドン引く名付けだなぁ。
まさか…オヤジの知り合いの店じゃないよな?
ふぅ。
通り過ぎたよ。
え?
隣の店の扉をオヤジが触った途端?!
鏡?
俺たちの姿が扉に写ったらオヤジが俺連れて扉へ向かっていくよ!!
オヤジよ。
見えてるか?
ぶ、ぶつかる!!!
??
スライム?海月?
ぬちゃぬちゃしたスライムもどきに突然変身した扉に突入!!
い、息が!!
と、思ったら扉はもう存在しなかった。
それどころか、目の前には屈強の大男が二人剣をオヤジと俺の首筋に当てて睨み付けてるよ。
こ、困るー!!
「お前らは、どうやってこの扉のアクセスコードを知った!言わなければ、今すぐ首と胴体を離れ離れにしてやるゾ!!」
大男の声にしては、情けない声で内容は物騒な脅し文句だ。
ど、どうする、オヤジ。
偶然ですって、言った方が良いかもよ。
ん?
笑ってる?
「ククク。
相変わらずこけ脅しが趣味か?
さっさと姿を表せ。この扉は本人の魔力の波長を登録して読み込む最新式だろ?
インチキなんて出来るかよ!」
ボフン!!
ブワッと白い煙の後、立っていたのは痩せこけたおっさんだ。
それにしても、貧相そのものだな。
食べてるか?
「タヌキ。
コイツはこれでも大丈夫だ。
だいたい、年齢なんぞ我が師匠と似たり寄ったりだしな。」
あら?
男がキョトンとしてるよ?
「ま、まさかお前ゼルグフか?
そ、そんな趣味があったから結婚しなかったのか。
以前からおかしいと思ってたんだよ。
ちっとも女性に興味を持たないから。
女装趣味だったとはな。リリラルも言えば良いものを。うっかり知り合いを紹介しちゃったじゃないか…」
最後は小声で聞こえないなぁ。
オヤジが苦虫を噛み潰したような顔で猛反発し始めたぞ。
「クッソー。
お前なら見抜くと思って忘れてたし。
この変身はラクスゥだ。
このクゥに変身してるのはパパラヌだ。
趣味な訳がないだろうが!!」
「まぁまぁ。大丈夫だ。
これでも長く生きて来たんだ。
そんな趣味の一つや二つ。驚きやしないさな。
だが、ラクスゥとは言い訳にしてはあまり宜しくないな。
その上、尻尾付きはお前さんとは思えないし。
尻尾…この国の精鋭部隊じゃないか?
アレ…お前さんとは知らずに付けるな。
ゼルグフだと知られたら面倒になるぞ?」
オヤジよ。
可愛い顔で苦虫を噛み潰した表情止めよう。
せっかくのご褒美タイムが台無しだよ。
「あ、来た。
お前が相手しないさいな」
貧相なおっさんは、そのセリフの後、ふわっと姿を消した。マジック?
すげ〜。
あ!!
ドカン!!!!!!!!
オヤジに抱かれたまま、店の扉が木っ端微塵に粉砕され大勢の魔法使いらしき人々が踏み込んで来た!!
警察?
この店の摘発か?
「女!!
その姿を真似てただで済むとは思うなよ!!」
え?
どっかのアイドルか?
肖像権侵害か?
馬…アイドルオタクかぁ。
えっと。こんな時は…。
「オヤジは、アイドルオタクじゃないんです!
馬なんですよ。
馬も悪気はなくてアイドル好きが講じただけ…あ!」
オヤジ?
変身終了なの?
目の保養タイム終了でオヤジは、何故かマッパだ。
不味いぞ。
今度は猥褻物陳列罪になる。。。
俺は風より早く動いてオヤジの前に立ちはだかる!!
これでちゃんと隠れるハズ…。大丈夫だよね?
ん??
オヤジってば、素早く魔法で服着てた。
すっげー。
あれ?
警察さん達が、真っ青だよ。
「「「「ゼルグフ様」」」」
お?
一斉に叫んで警察さん達は、オヤジを取り囲む。
その上、真っ青な顔が今度は赤みが刺すし…。
情緒不安定か?
「久しぶりだな。
マスル部隊長…」
そうか!!
オヤジ。
昔のここでアイドルをしてたのか。
ファンに囲まれたオヤジ。
うーん。
お嫁さんに誤解されないといいけど。
ま、平気か。
男だらけだし…な!
ーオヤジ視点ー
しくじった。
まさかグラセルでも変身を見破れぬとは思わなかった…女装趣味とは。。。
ラクスゥの趣味だとの主張も当然の事ながら、信じては貰えない。
はぁ。
間抜けな汚名が加わったな。
は!
精鋭部隊に付けられた?!
恥の上塗りとは、この事だ。
ならば…。
魔力を込めたその瞬間!
変身が解けた…。
このタイミングは、狙ったのか。
魔力を使うと解ける仕組みだったのか…。
そんな事を考えたのが、更なる恥の上塗りとなる。
タヌキが自分の前に立ちはだかるのに気づいた瞬間に、魔力を全開にした。
裸…。
ラクスゥよ。
いったい、俺に何の恨みがあるんだ?!
こんな仕打ち…。
精鋭部隊のマルスが蒼白になっているのを見て我に返る。
この国で、自分が英雄とされている事態を。
いや。
マルス辺りは、崇拝と呼ぶべきで。
混乱の極みにいるのに、タヌキは相変わらず俺を『モトアイドル』とか呼んで喜んでいる。
何のことか分からぬが、今回に限り何となく意を得ている気がする…が…。