楽しい?!お買い物。
ーたぬき視点ー
ルンルン♪
買い物って楽しいなぁ。
大通りには、沢山の店があるけど少し敷居が高い。
オヤジと二人店を覗きながら、もう少し奥へ向かってる。
どうやら、馴染みの店があるらしいんだ。
どんな店だろう。
ワクワクしながら、歩いていたらやたらと人目が気になるオヤジがソワソワしてるよ。
は・はーん。
変身が恥ずかしいんだな。
凄く似合ってるのに。
金髪碧眼の美女だよ!!
しかも、ナイスバディ!だよ?!
もう、男の夢でしょ!!
喜ぶところなのに、最初は嫌そうでさ。
そうそう。俺は犬になったよ。
ほら、ご主人様と飼い犬のペアだよ。
だから、目立たずに買い物出来るって訳。
やたらと、オヤジが抱き上がるのが困るけどね。
でも、この球もある。
あ、これはね『透明球』と言って。
そう!
その名の通り、地面に投げつけるとボンッ!と煙を出して俺たちは透明人間になれるよ。
『困った時に使うが良い。
変身出来る時間は限られているしな』だって。
急がなきゃな。
サプライズの『ライスシャワー』の為に米を買いに来たんだから。
ーオヤジ視点ー
あり得ない。
これは、なにかの罰なのか?
俺の姿は、この国の王女の姿に見えるだが。
しかも、数世代前の…。
なるほど。
ラクスゥの出没時期と合っているが…。
気がついた者達の目線に不安ばかりが増す。
しかもだ。
タヌキ…。
お前の変身って。
幻獣『クゥー』だよな?
この愛らしい姿があまりの人気で愛好家が奪い合ったと言われる伝説の生き物。
タヌキの姿と同じに街中を歩き回ろうとするタヌキを慌てて抱き上げて隠し気味にして目的地へと向かう。
情報を得るならば、あの店しかない。
ただ…この姿で中へ入れるかどうか。
「なぁ、オヤジ。
買いたいモノがあるんだ。
それに…
あの棒のついた食べ物欲しいなぁ」
タヌキの指差すモノはこの辺りの名物『ルルース』
冷たい菓子だ。
氷に果物が入っている菓子で歩きながら食べるモノだが。
影からこちらを窺う者達を躱すように、クゥーに変身したタヌキを庇う俺に、その余裕は無いが。な。
しかし、いつもならこの国に溢れる魔力の様な気配が薄いのが気になるな。
異変は、もう待ったなしの事態になっているかもしれないな。
焦る気持ちから俺は、段々と歩く速度を上げて目的の店を目指した。
(しかしこの靴、歩き難いな。女性って…スゴいんだな…)
ため息混じりで、歩く俺は普段より注意力が欠如していたのだろう。
撒けずに、付けられているのに気づかなかったのだ。
この国の精鋭部隊に…。