掃き掃除と言えば…笹!!
あれ?
寝落ちしたか…。
オヤジの姿は、見えない。
あんなに高熱だったのに、どこ行ったんだ?
扉を開けて、外を見れば足跡が。
うーん。
名探偵じゃないから、捜索は出来ないけど森の奥へ行ったな。
まさかの狩り?
あの風貌…狩猟狂いとかなのか?
はぁ。良く無事だったな。
俺…たぬきなのに…。
熾火が微かに燃えているだけで、部屋が寒い。
オヤジの奴、きっとまた具合悪くなって帰って来るから部屋暖めとくか。
ヨイショ。
薪を焚べたら、火が赤々と燃え上がる。
パチパチと爆ぜる音を聞きながら(あー、火が綺麗だな)と考えてぼーっとしてた。
このままじゃヤバイよ。
暖かくなったけど、まだやるべき事が山盛りあるんだから!
まずは、あの台所!
汚すぎるだろ?
もう、混沌としたカオスと化しているんだから。
そして、部屋を箒で掃いて、と。
ん?
箒・ほおき・ホオキーーーー!!!!!
無い?まさかの箒無しなの?
ええーー!!
なるほど…カオスの理由が理解出来たよ。
仕方ない。
自分で箒を作るしかないか。
材料は笹だったよな?確か…。
えっと、笹っぽいのはこの辺にあったような。
思い切って、外へ出て箒になりそうな枝を集めた…けど、寒いーー!!
たぬきの割に(毛皮着てるけど)寒さに弱いな。
不味いぞ、このまま巣穴に帰ったら凍死確実じゃん!!
と言うか。
どうやって、前回の冬を越したんだ?
あ!!
そう言えば、2回目の冬だったっけ。
前回は、母親が居たんだった。
なるほど…だから雪に埋もれて倒れてたんだな。
寒いし、材料も集まったから、早く小屋に戻って…
は!!!
「お前…野生に帰ったんじゃなかったのか?」
オヤジ。。。
帰ってた…間に合わなかったか。
お掃除しておこうと思ったのに…
アレ?
視線が合わないよ。
どこ見て…あ!
笹っすね。
えーと。
恐々と小屋に入ると、隅の方を掃き掃除して見せた。デモンストレーションと言う奴だ。
どうだ?
目が点。
えっ、その意味するところは?
あ!
小屋が汚いって、自覚が無かったのか。
よーし、いよいよ掃除の必要性が高まってるな。
この笹の箒でちゃんと掃除が出来るとこ見せなきゃ。
どうだ?
さっ、さっと。
汚いからやり甲斐あるねぇーー!
とにかく、あったこっちからゴミを集めて、あ!
箒を取り上げられた?
なんでーー!!
やっぱり。
やっぱり、食べるのか俺を…。
「お前な。テーブルの上を見てみろ。
飯にゴミが降ってきてるだろ?
ほれ。まぁなんだな。
狩りをちょびっとやったら、懐が暖ったかくてな。
あんまり金が余ったから、ついでにな!」
オヤジ、顔が赤いぞ?!
また、熱が上がってきたな。
(やっぱり、狩猟狂いは良くないなぁ)
ん?
テーブルの上…
なんじゃコリャーーーー!!!!!
パ、パーティすか?
誰か招くのか?
え?
笑顔でオヤジの頷く…その真意は?
まさかの2人前??
オヤジ…隠れ大食いか。
ズリズリとテーブルに近づいたら、腹の虫がいつの間にかオーケストラに変わっているのを気づいた。
しまった。
さっきからオヤジがニヤニヤしてるのは、聞こえてたか。
うぉ。
美味そうなものがいっぱいだ。
蒸かし芋。
りんご。
あれは、何だ?
葉っぱに包まれてるぞ?
「お前、まさかの肉巻きからか?
雑食って本当だったんだな。
蒸かし芋とか食べるイメージだったのに。
まあ、食べろや。
とにかく、あの案内の娘に期待するしかないか。」
ブツブツ言うオヤジは、ほっといて手渡された葉っぱに包まれたナニカを剥く。
うっ。
こんな時、たぬきの手は不便だ。
あーー、俺の肉巻き取ったーー!
なんで?
え?
ムキムキして、ハイっと渡されたよ?
オヤジ…。
なんと世話焼き体質まで持ち合わせてるとは!!
顔に似合わず良いオヤジだな。
うまっ。
この肉巻きの味付け絶品だよ。
このタレだけでご飯もいけるし。
うまーーー。
?
蒸かし芋?
食べろって事?
おぉ、蒸かし芋とか久しぶりに食べたけど、味が違うよ。
なんだろ、この芋は甘くてホクホク感満載。
名物なのか?
夢中で食べてた俺は、オヤジがガン見してるのに気づかなかった。
はぁ。
命の恩人の分もあるのに、一泊二食の恩まで増えて。
恩返し(する予定が!!)…増加中。