旅は道連れ?!
ーカラ視点ー
なんと言う事だろう。
正直、この国に彼は勿体ないと思っていた。
いや。
この国は、彼を理解出来まいと。
それ程の魔法使いをこんなに粗末にする王家を本気で潰すきっかけを求めて来たのが本音だ。
もちろん、彼を助けるつもりもあるが。
そんな意気込みも、無様に失敗したばかりか、彼を奪われた!!
本国と『聖者の塔』に緊急連絡を入れて、やっと助けに戻ると…。
あり得ない事態が、目の前にある。
国をひとつ滅すと言われる『暴発』をアッサリ抑えた彼とこの国の騎士団。
倒した彼に驚く以上に、彼と国の間にあった深い溝が埋まった事実に驚愕する。
その上、俺の悲願が遠のいたこの事態を恨み深く思っていたら。
神は我を見捨てなかった!!
旅…。
どんなに誘っても、この国を出なかった彼が旅すると言うのだ。
チャンスだ。
ワクワクする気持ちを隠して旅の同行を頼みに行って後悔する羽目になる。
な、なんでこんな存在が目の前に?
「キタサン…。
そうか。マリッジブルーだな。
独身最後の旅行と言うのも良いな。
お嫁さんも賛成してるし、一緒に行こう!!」
パパラヌ。
規格外と理解していたが…この状況で誘うとは。
しかもマリッジブルーってなんだ?
「だけど、これだとコレに乗れないよね。
どうするんだ?キタサン!」
キタサン?
何の事かと思って、何の気なしに馬を覗いて仰反った。
ま・さ・か。。。
魔獣の竜螢雷か?
小型化して、馬っぽく化けたから気がつかなった…。
こんな事って…。
俺の何かがガリガリ削られる気がするよ。
この一堂と、旅する???
辞めたい。
心から神に願うよ。
脱出したい…
『それは無理だな。
パパラヌが気に入った限りは、同行を許そう。
お前の野望が叶うと良いがな』
!!!!!!
小声で耳に聞こえたのは、伝説の存在で。
実体化した姿を見ることすら出来ずかなりの距離をとっているのに…。何故か声が響いて来るとは。
ぶるぶる。
身体から震えが止まらない。
「あ!!
キタサン。あそこにも独身旅行の仲間いたよ。
旅は道連れだよな。
誘って来ようっと」
駆け出すパパラヌの先に見えたのは、ギルドの最高メンバーとして有名なランス隊。
逃げようとしてたな。
ランスなら、この気配に気付いたのだろうが。
逃す訳ない。
何せ、パパラヌが乗り気なんだから。
「キタサンや。
コレで楽しい旅になったね」
こうして。
沢山の被害者?!を増やしながら旅は始まった。
それは思いもかけない旅となる…。
ーとある町人の視点ー
迫力ある一団の旅行者たち。
まぁ、悪い奴らでは無いが。
珍しくパパラヌなどを連れている。
背の高いパパラヌを連れた男は、町の女達の目を引いている。
一団には、有名なギルドメンバーもいるらしく、浮き足立つ町長に更に野次馬が出る。
それにしても、有名なギルドメンバーだけあって美女を連れてるな。
この辺りに出る魔獣退治を町長が頼み込んでいるが、アッサリ了承されたらしい。
有名なギルドメンバーとは言え大丈夫だろうか?
相手は、あの大鰐だ。
しかも三匹で。
パパラヌ連れのハンサムな男が、馬に乗って駆け出したが。
もう夕刻だ。
ミス判断だ。
助からないな。恐らく…
それにしても有名なギルドメンバーともあろう者が見殺しとは。
あり得ない。
後でギルドへ報告するか。
俺だって、昔ギルドに所属したいた事もあるんだ。
今はシガナイ宿屋のオヤジだが。
!!!!!
まだ、あれからたった15分位しか経ってないのに。
馬が大鰐を加えて戻ってきた。
大鰐の一部だが。
(本体は大き過ぎて、おいそれとは持てないからか?)
笑顔で迎えるギルドメンバーに、面倒くさそうに手を振る男は寝ているパパラヌを見てそっと馬を降りた。
ん?
町長が俺を呼んでる??
「お連れさまが寝たので、宿屋を紹介してくれと言うのだ。礼などそれで良いと、
我が町で唯一の宿屋は、お前の所だ。
頼んだぞ!」
ええーー!!!
大鰐を咥えた馬とご一行様を我が宿屋に?
驚きと無理だと言う気持ちが顔に出たのか、ギルドメンバーが解体とその後の処理を引き受けてくれた。
ご馳走を用意したが、酒は飲まないようだ。
「タヌキのドブロクがあるのでな」
その後、分けて貰った『ドブロク』の旨さと凄さに度肝を抜かれる事になるが。
それ以上に。
作り方をアッサリ教えた旅人に、俺は永久に感謝する事になる。
お礼を受け取らない旅人は、翌日旅立った。
その後、町にはパパラヌの像が建つ。
曰く…
『恩人の家族の像』
と、刻まれていた。