真実の鏡?!
少し長くなりました。
視点がコロコロ変わります。
宜しくお願いします。
いつもお読みいただきありがとうございます。
ーダーラント視点ー
捨てたはずの身分を盾に、無理矢理進む。
リリラル様から、パパラヌしかゼルグフをいやこの国を救えぬと言われて王宮へ向かう。
予想通り、各地の検問が立ちはだかる。
リリラル様とカラ殿。
そしてパパラヌの姿絵…。
何処から得たのか、詳しい姿絵のパパラヌ。
しかし、ゼルグフのパパラヌは一味違う!!
こんな時に小型化していた。
リリラル様曰く、突如変化したと言うのだ。
そんな能力のあるパパラヌなど聞いた事もない。
いや、どんな動物も魔獣も…。
不味い…コイツの正体を詮索している場合じゃない。
王宮が近づくにつれて、警備の隙間を縫うのも難しい。俺の身分が邪魔をする事態も近いだろう。
ジャンセなら、必ず俺の情報を得て対策を立てているだろうからな。
しかし、王族だけが知る抜け道もある。
ココから…。
侵入は上手く行った。
後は王宮内へ如何に入るかだ。
何!!
まさかの大量の影…。
ここまでやるか…ジャンセの奴。
不味い!!
影の一人と目線が合ったか?!
咄嗟にパパラヌだけを王宮の庭園に放すと、素知らぬ振りで庭園内を進む。
やはり、付けてくるか。。。
今や、この王宮へ入る身分証もないのだ。
忍び込む方法も実は手探りの状態で。
しまった…詰んだか。
その間にも影は、徐々に距離を詰めて来ていた。
背筋に冷たい汗が流れる。
「貴様!!こんな所で油を売ってるんじゃ無い!!
早く、付いて参れ!!」
突然の大声。
もちろん、聞き覚えのある声の主に心の中で手を合わせながら。
「申し訳ありません。ただ今参ります!!」
直立不動の姿勢をして彼の後をついて行く。
チッ。
影の舌打ちが小さく聞こえた。
危なかった〜。
間一髪か…。
「グズグズするな!!このノロマが!!」
よそ見をしていたら、尻を蹴り上げられた。
かなり、痛いぞ。
間違いなく、恨み辛みが篭ってる1発だな。
暫く付いていくと、見慣れた風景が。
訓練場か。
なるほど…。
ここなら影も近づけまい。
全ての騎士ならば、コヤツの下にいるはず。
「よくもあんな場所へノコノコと…。
貴方と言う人は、非常識にも程があります。
私でなくば、救出は不可能でしたよ…」
怒り心頭の奴に頭をかきながら詫びる。
「すまないな。
本来なら恨み言の一つも聞いてやるべきなのだが、今は緊急事態でな。
一旦、怒りを忘れて力を貸してくれ。
エンデバン将軍閣下」
腕を組んだ奴の目線は冷ややかだ。
「ほぉ。腹心の私にも一切の相談なく奔放した貴方が、助けを求めるとは…。
相変わらず貴方は変わりませんね。
まあ、今回は特別です。
ゼルグフ様の件ですね。
今、接見の間に大臣共とジャンセ一味がゼルグフ様を連れて押しかけています。
事は、一刻を争います。
さぁ、お早く!!」
彼の言葉に駆け出そうとして、ハタと思い出した。
パパラヌ!!
急ぎあの庭園へ戻るとパパラヌも俺を探していたようだ。
何だと?
ゼルグフの助けが聞こえた?!
エンデバンの奴は、パパラヌにギョッとしながらも一切の質問もせずに一路接見の間へ向かう。
変わらないな…安定の有能さに頭が下がる。
離れて分かる事もある。
奴の忠誠心。
有能さ。
そして、俺の傲慢さ…。
身分を捨てる前に、一言…せめて、な。
接見の間の前で護衛兵に止められる。
ジャンセに抜かりはないか。
ならば!!
力づくしかあるまい。
無理矢理押し入る俺を止めらる兵士などいない。
兄上!!
怒鳴り声も変わらないが、少し窶れて見える。
ゼルグフを取り巻く貴族共が焦りの表情を浮かべる。
あ!!
奴らが、ゼルグフに更にあの腕輪を嵌めよとしていた!!
アレは魔法使いを弱めるモノ。
しかし、重ねれば命取りに…!!!!
ゼルグフ!!
叫びは口の中で消えていった。
信じられない情景が目の前に広がったからだ。
何を…。
『光の道』
伝説と言われる祝福の道。
『光の道』から、神様が其の者に祝福を与えに降りてくる。
我々の国では、数百年確認されていない。
言い伝え状態の伝説。
まさか…ゼルグフが??
やがて『光の道』は、グルリと奴を取り巻いて奴事態が薄っすらと発光し始めた。
ん?
んんん????
嘘だろ…パパラヌなのか?
あの光の下にいるのは…かなりチビになって増殖してるが。
ゼルグフの手に合った腕輪は一瞬で粉砕した。
更に、恐らく魔力も満タンになったのだろう。
真っ白な顔色が、血色の良い健康優良児化してるからな。
「これは…。
彼の申す事は、誠の事なのか?
では、英雄ジャンセ殿の言われる事は、まさか…」
兄上も蒼白な顔で呟く。
しかし、最も顔色が悪いのは英雄様ご一行だろう。
「王様。
奴は歴代随一の魔法使い。
この様な小細工など、容易かと」
小細工とは…。
周りの奴の信者は騒ぎ出したが、少し迷いもあるな。
もし、真実『光の道』ならば。
天の意に逆らう事になるのだから、当然だろう。
「今から、お見せしよう。
真実の姿を…」
それは呟くようなゼルグフの声だったと思うが、何処か天からの声のように感じた。
発光していた彼の周りの光が、一つに纏まり鏡のようになる。
光の中に何か見えてくる。
アレはあの日のあの場面?!
ーたぬき視点ー
ちょっと、不味いよ。
コレがダラさんのドッキリでもさ。
最後がオヤジの発光じゃな。
!!
あ、危ないよ。
やっぱり、踏まれそうだよ。
オヤジは発光に忙しくてぼーっとしてるし。
(こう言う所が女子に受けないんだ…きっと。だって馬鹿ズラだもの。な!)
仕方なく豆狸一同は、猿団子状態になる。
固まれば何とかなるだろう。
ん?
あ!
光る石も猿団子状態?
くっついて丸くなってる。
あー、鏡みたいだ。
ちょっと触ったら、ピカッとしたんだよ?!
びっくりしたから。
俺…その場にひっくり返っちゃったよ…。
ーオヤジ視点ー
遡る過去。
聞いた事もない状態の犯人は、すぐに見つかった。
何故か、小型化して増殖していたがタヌキだ。
光に驚いて全員、失神しているが。
一人づつタヌキをそっと手のひらに拾い集める。
その間も、過去はそのままの姿で皆の前に現れた。
有無も言わせぬ真実の姿。
喚くジャンセにダーラントが一喝していた。
「これは、真実。
王よ。
ゼルグフは、その命を散らす寸前でした。
いや、リリラル様のご助力なくばまずはこの場に存在しておりません。
この様な奇跡を幾つも見せられても、まだお目が醒めませんか!!
私が、将軍職を降りたのも。
ロナ殿達、ギルドが反旗を翻したのも全ては真実を知っているからこそ!!
我々は、その目で真実を見ましたから。
ジャンセ!!
お前たちこそが、真なる卑怯者だ。
そして、裏切り者だ!!」
怒鳴るダーラントに俺は彼の真意を知る。
彼もお師匠様と同じく怒っていたのか…。
「俺にこんな風に恥をかかせる国など、もう守ってはやらぬ!!
他国から誘いは幾つもあるのだ!!
後で泣きを見るがいい!!」
まさに捨て台詞で逃走するジャンセ達。
転移魔法の陣を何処から、手に入れあっという間に消えた。
この王宮で魔法を使うとは、余程の陣だな。
ココは魔法禁止地区なのだから。
その時だ。
「伝令!!『暴発』が発生しました」
やはり。
俺は、そのままダーラントの所に行ってタヌキを預けた。
「タヌキを頼んだぞ。
あちらは恐らく師匠が戦っている。俺も駆けつけるから」
何やら後ろは騒がしいが、力漲る今なら出来る。
『転移』
。。。
やはり、『葉っぱ』の威力は凄いな、タヌキ。
俺たちの家は、必ずや守るからな!!
俺はお師匠様の元へと急いだ…。