オヤジの危機!!ー救え、ファッションリーダー?!ー
今日は、オヤジがお出かけなので秘密の場所へ向かう。
いやぁ。
ファッションリーダーとしては、猟師のオヤジのイメージだったからな。
もう服屋には注文済みで今日、お届けしてくれるらしいんだ。
と、なれば…。
そう。
アクセント!!
ファッションと言うのは、アクセントが大事だ。
ほら!男なら金のネックレスだろ?
でもさ、
金はな…たぬきには高嶺の花な訳で。
で。
今、お目当てを探しに来てるんだ!!
えーと。
この辺りにあるはずなんだけどな…。
あ!!
あったぞ。
1本の高い高い木。
あ!あのな、単なる木じゃないんだよ。
この木…葉っぱが桁違いなんだ。
ほら、里芋の葉っぱみたいな撥水性みたいに。
光を吸収して中に貯めてるんだ。
え?
なんで知ってるかって?
そりゃさ!見たんだよ。
時折、夜になると光るのをさ!
光って、確か凄いんだよな。
光合成とか言う武器を持ってるって。
だから、コレを迷彩服に沢山付けたら最強になるだろう。
光るオヤジ…。
おぉ…俺天才か?
間違いなく、女子の瞳は釘付けさ!
沢山取って帰ると、既に服は届いてた。
よしよし。
リリに手伝って貰って飾り付け完了だ。
でも…おかしいな。
迷彩服は、いつの間にかピーターパンぽい気がするんだ。
森のイメージと、葉っぱがいっぱいの服って言ったのに…。
地下足袋もちょっと違うな。
一体感はあるけど…ブーツっぽい。
「パパラヌ。
アンタの目指す場所は分からないけど、ゼルグフが変わってゆくという事は間違いないね。
ちょっと、予想外の変わり方だけどね。
それにしても…この葉っぱ。
いったい…」
あーー!
オヤジ。
しまった。驚かそうと思ったのに…アレロア青い顔してる?
腰蓑は?どこ行ったんだ?
「時間がない。
カラが時間稼ぎをしてる隙に…」
「コレを着な!変装にはうってつけだよ…」
何だろう?
オヤジ…気に入ったのか?
めっちゃ急いで服を着てくれるな…良かった!!
オヤジをじっくり眺めようとしたその時。
ピカッと!!!
目の前が眩しく光って、リリと手を繋いでいた俺は
『転移』した。
オヤジは?
リリと俺は、森の外れにいた。
リリは、何故か顔色が悪かった…。
ーオヤジ視点ー
逃げる算段をしている途中で、カラに呼び止められる。
「不味いぞ!
王が、ジャンセに唆された!!
『聖者の塔』からの命令すら聞き入れない。
今は…私では止められぬ。
すぐ、逃げてくれ!!」
身体から、戦いの傷痕が見える。
騎士団相手に恐らく、たった一人で…。
巨人族と言えど、彼でなくば出来ぬ事だろう。
我が国と対立しても、力を貸してくれたのか。
ジャンセ…。
彼の稼いでくれた時間は貴重だ。
微かに頭を下げると急ぎ家へと向かう。
恐らく…。
捕縛隊ともなれば、アレを所持しているだろう。
そう…その名は『ブレス』。
魔力を封じ込めるモノ。
アレには、例えお師匠様とて歯が立たぬ。
不味いな…は!!
タヌキ…もし、見つかれば…。
真っ黒な想像に心の臓を掴まれる…。
足は、最高速度まで早めていた。
息も切れ切れに家に着いた途端!!
何故か、奇妙な衣装を持つお師匠様に無理矢理着替えさせられる。
この急場に?
何故?
その行動の理由は、すぐさま理解した。
なるほど…。
間に合わなかったのか…。
(タヌキを逃す為だな…有り難い)
『隠密転移』
大量の捕縛隊が家の中を占領する。
捕縛隊に彼がいたのか…。
『隠密転移』を使う彼にブレスを嵌めされた俺は、そのまま王都へ『強制転移』させられる。
普段なら、誰も強制など出来ない魔力を保持している俺ではあるが、ブレスがあってはそれも無駄だろう。
着いた先は牢屋だ。
そのまま閉じ込められた牢屋は、魔法使い専用のものをかなり強化したある。
。。。
なるほど。
俺を捕まえる為に…態々か。
魔力の封じられた魔法使いは、間もなく動けなくなる。
奴らの思うままだ。
万事休すか…。
ん?
魔力が…。
消えてない?
いや、魔力とは少し違うか…。
何だ?
。。コレか!!
服に付いてるこの『葉っぱ』か!!
徐々に溜まる魔力に似た力からは、何故かタヌキの暖かさを感じた。
そうか…。
だから、お師匠様はこの服を!!
タヌキと逃げたお師匠様の作戦を薄っすらと悟り始める。
タヌキ…もうすぐ帰るぞ!
素敵な服をありがとう…。