お師匠様、家に住み込む?!
「坊やよ。良かったじゃないか。
アンタにもようやく守るべき家族が出来たんだね」
お師匠様の一言は、意外にも祝辞で。
もっとタヌキの能力について聞かれると思っていた。だからこそ、連絡をせずにいたのだ。
「ま、それより巨竜螢雷がまだ居る可能性はどのくらいあるんだい?」
「恐らく、群れで居るものと」
「ひっ!」
珍しくロナが息を飲む。
そうだ。
たった一匹でこの辺り一帯を殲滅する巨竜螢雷が群れで居る。
その意味は、この国の崩壊なのだから。
「それにしちゃアンタは、まだこの小屋に住もうとする。
策はあるんだね?」
さすがお師匠様。
策はある。
あの魔法棒が意外な能力を有していたからだ。
「恐らく、群れは今のところ街へは向かっていません。ですから、誘き出して一匹づつ殲滅します。
一日おきなら可能ですから。
昨日ももう一匹倒しました」
おや?
師匠にしては、目を剥いているな。
「お前さん。自分の言ってる事が分かっているのかね。誘き出す事なんて出来ないと誰もが…。
まさか、パパラヌか?」
お師匠様の目がタヌキは向くのを遮るように立ち位置を変えた。
いつの間にか寝床でイビキをかいているタヌキを起こすのは忍びない。
「あら、ホントだ。
笑うのね。ゼルグフが笑ったなんて昔な仲間に言ったら…
あーー。ごめん。
失言だったわ」
ロナの表情が変わる。昔の仲間…。
この響きを平然と聞ける日が来るとはな。
「このタヌキの臭いのする毛布が餌になります。
沢山でなくてもいいので、千切ってますけど」
以前、ぺちゃんこにした毛布。
不要だと思いつつ、取っておいた。
そしてこの間の巨竜螢雷との戦い。
奴はやたらとタヌキを気にしていた。
それが隙を作り最終的に勝利を手にした。
ならばと、千切って仕掛けるとノコノコ一匹やってきたのだ。
そして、タヌキとお出かけ後に済ましてきたのだ。
昨日の事だ。
「不思議なパパラヌだね。
いいだろう。アンタの家族を守るために私も協力してやるよ」
え?
それは…。
「なんだい?断るのかい?」
正直、お師匠様にタヌキを近づけたくない。
研究好きのお師匠様が何をするか…、
あ!
「そうですか。
オヤジとの熱い絆があったのですね。
少し、重役との恋話は苦手分野ですが。
努力しましょう」
握手してる?
歓迎してるのか?
「ええー!!じゃあ私も!いいでしょパパラヌ」
や、やめてくれーー!
タヌキよ、
それだけは。。
「レディに言いにくいのですが、オヤジの食欲に影響しますからご遠慮します」
師匠…笑い過ぎです。
晩ご飯をたかって、やっと奴を追い出したがお師匠様はこの家の改築を始めようとしたので、隠れ部屋へ案内した。
「へー。こんな場所を作ると言うとこは、危機感はあったんだね。
じゃあ、暫くは老体に鞭打って頑張るかね」
老体…無理がありすぎる。
年齢不詳になって何百年か分からないクセに。
タヌキがいそいそと、お師匠様に夕食の麺を勧めてる。
どうも、麺料理の布教活動してるみたいだな。
タヌキ…違う料理も食べさせてやるよ。
本当に美味いものを…な。
今日、買ってきた料理本を読もうと決心していて、タヌキの独り言は耳に入らなかった。
「うーん。
婚活パーティーの試食係をゲットしたけど。
女性には、ラーメンだけじゃな。
スイーツが欲しいな…」
リリラルのみがコンカツパーティという謎の言葉に数日悩む事になる。