ギルマスの能力は?
オヤジは、今日も早起きだ。
やっぱり、栄養は大切だな。
芋やコメは栄養豊富だからな!
でも。
昨日の熱燗の失敗は、痛いな。
と、なれば次の段階へ進まねば!
たぬきと言えば…酒でしょ!!
コメが手に入ったんだ。
と、ならば!!
これで『どぶろく』が作れるぞ。
コメ炊いて麹を入れてあっためる!だったよな…確か。
コメはある。
麹をオヤジの買い物メモに書き出しておいたから。
あーー!!
甕がいるな。
そうだ。確かあの辺にあったかも?
俺が飛び出してきた洞窟に、なんかの残骸があったから。その中にあったな。
よーし。
久しぶりに森に出掛けるか。
甕を手に入れれば、もう出来上がったも同然だ!
オヤジ…。
待ってろよ〜!!
ーギルマス視点ー
『群れ』の知らせを聞いて、ゼルグフ様がこの地に在る事にホッとしながらも。
運命の皮肉さをしみじみと感じる。
それにしても、ダーラント様はお人が悪い。
ギルドでの一幕に、文句も言いたいが注意喚起を促すには良かった。
普通の冒険者には、全く歯が立たないと。
危険はすぐそばまで迫っていると。
お二人の周りを飛ぶハエは、記憶を消しておいた。
そう。
記憶操作。
人々の心に働きかけるこの魔力は珍しい。
これこそが、私がギルマスになれた要因だ。
顔を知られてないのもこの能力で人の記憶に霞をかけているからだ。
ただ、圧倒的な能力の差がある場合は能力に不備が生じる。
そんな訳でダーラント様達の記憶は、触るのも出来ないのだ。
彼は圧倒的過ぎるから。
考えに耽っていたら…。
おや?
アサビ嬢が血相を変えて駆け込んで来た?
「た、大変です!!
ゼルさんが、大量の魔物を持って査定に来ています!!」
ゼルグフ様の驚異的狩猟能力に、慣れたはずのアサビ嬢のこの顔。
裏の査定所に行くと…。
(自分自身はあくまで隠れている。どうにもならない場合のみ、姿を現わす約束をして…)
あー。
これは…。
「すまんな。
ガイの入り用があってな。
一気に査定してくれ」
極大熊豚とは、こんなに簡単に大量捕獲出来るのか?
小屋からはみ出している?!
裏庭を埋め尽くす極大熊豚。
魔石ではなく本体ごと仕留めたのか…。
まさか!
全て1発で仕留めてある。
しかも、魔法ではなく剣だ。
この方が、剣でも引けを取らないと知っているがこれほどとは…。
「あの。これだけのガイをいっぺんにお支払いするのは…」
あー、困ったアサビ嬢が遂にお願いに出たか。
本当は、本部から白金貨を預かっているのだが。
とにかく、滅多な事で見ない白金貨だ。
恐らく、120白金貨にはなるだろう。
た、足りるだろうが、いったいそんな大金を何に使うのか?
武器か…?
魔法守護鎖か?
それとも。
魔石で武器を作るのか?
「いや。
これから寒くなるから、防寒対策をな。
寒がりが住んでいるんだ」
アサビ嬢…顔に出てるぞ?!
「寒がりって、まさかこの間のパパラヌですか?」
微か頷くゼルグフ様。
マジですか?
あの毛皮を着ているパパラヌの為の防寒対策?
その為に、あれほど狩りを??
「足りないか?
もし、足りなければコレを」
そ、そ、それは極大鰐の魔石では?
では。
あの『群れ』で仕留めた極大鰐は全部で三匹?
「あの…コレを」
アサビ嬢が差し出したギルドの札。
これさえあれば、どんな買い物も高額になろうともギルドが保証するもの。
こんな早く、この札を使う事になるとは…。
それにしても、最後にゼルグフ様の言われたセリフが気になる。
「『群れ』は、これからが本番だろう」と。
記憶を抜いた三人の照会を掛ける為に、本部への回線を開いた。
そして。
私は本部への報告をランクアップさせる決意をした。
もう、イエローの時期だと…。
これにより、ギルドに増員が来るだろう。
遅きに失して居なければ、いいが…。
増員は、更なる悩みも連れてくる事になるとは、その時の私はまだ…知らずにいた。