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ギルマス現る?!

ギルドの受付テーブルには、並々ならぬ緊張感が走っていた。


それは、それを見つめる他の冒険者達も同じで。

何せテーブルに並ぶのは、『魔物の核、通称魔石』だからだ。


普通の冒険者が倒すのは、肉やその他の素材を得るためであったり、村や町への被害の軽減の為だ。


だが。魔石が出る魔物となると様相は一変する。

良くて近隣の町の全滅。

悪くすれば、地方の崩壊だ。


その魔石の中でも、最上級と言われる極大鰐の魔石まであるのだ。

極大熊豚の魔石は、なんと3つだ。


倒した人間を見れば、この街の者ではないようだ。

たった二人で倒したのか?


常軌を逸している。

人間か?


騒つくギルドに、珍しくギルマスが姿を見せた。

ブーラカ街の小さなギルドでは、受付は全てアサビ嬢が引き受けていた。


冒険者の中には、初めて顔を見る者もいる。


「あの人は、配達のお兄さんじゃないのか?」


薪を運ぶ姿を見た者達が囁く。


「それにしても、優男だな。あれでギルマスなんて勤まるのか?

この地方は『ゲランバの森』を抱えてるんだぞ。

ギルド本部は何を考えているのか」


そんな声など聞こえないのか、にっこり笑ったギルマスが「買取希望ですか?」と尋ねた。


「そうだ。

幾らで買い取ってくれる?」


後方から、ゴクリと喉のなる音がした。



「そうですね。

ガイでは、お支払いは無理そうです。

白金貨でお支払いとなります。

極大熊豚は一匹20白金貨。

極大鰐は…3000白金貨でいかがでしょうか?」


「「「「おおーー!!!」」」」


一斉に上がった声に、ギルマスのドスのきいた声がボソッとした。


「ダーラント様。

昨日の連絡時に裏手でお願いしますと繰り返しお願いしたはずでは?」


笑顔が冷たい色を出す。

ひんやりした空気を感じたのは、隣にいた男だけだった。


「いやあー。

さすがギルマスだ。


この魔石はそのくらいの価値があるな。

何せこの地方を助けたのだからな」


「では。お支払いはゼルグフ様宛と致します。

よろしいですね?」


ギルドに騒めきが上がる。


ゼルグフ…?


誰だ?


田舎街にその名を知る者はいなかった。

もし、ここが首都であったなら全く別の反応になっただろう。


ある者は蔑み、ある者は崇める。

そんな対応に…。



「ほお。

ここでは持ち込んだ俺たち以外に支払うのか。

ギルドの原則から大いに外れているのでは?」


不敵な笑いを浮かべる男の真意を見極めるようにギルマスは睨め付ける。


「この魔石の様子から、大魔法が展開されたと分かります。失礼ながら、ダーラント様もそちらのザルゼ様も魔法使いではないとお見受けします。

いや、多少の心得ではこの大魔法は難しい。

それを使えるのは、この国広しと言えどリリラル様かゼルグフ様以外にはいらっしゃいませんから」



ダーラントはザルゼと目を合わせた途端、大笑いをした。


ザルゼは肩をすくめて、苦笑いだ。


「すまないな。この男はこうして少し揶揄うくせがあるのだ。

ギルマスのお見立て通りゼルグフ様のなさった事だ。見事な魔法の展開を見ただけでも得るものはある。

さあ、ダーラント殿。サクッと参りますよ!」


笑いの発作を起こした男を引き摺ってドアを目指そうとすると。

ダーラントが突然、立ち止まって真面目な顔をギルマスへ向けた。


「安心するんじゃない。

アレはまだ序の口だ。『群れ』はまた続くだろう。

『ゲランバの森』の危機かもしれない。その事を上に報告して貰いたい。


あの男がここにいる幸運に甘えるなと、伝えてくれよ。

グランにな!」


それだけ言うと、手を振ってダーラントはドアを出た。無論、後にはザルゼも続いた。


ギルドを出るとザルゼが尋ねた。


「ワザとか?

あの内容を聞かせてたかったのだろう。アノ者達に…」


その問いかけにダーラントは、ニヤッとしただけで答えない。


「な、『デセルト布団店』へ行って土産を買おう。パパラヌのお気に入りの毛布さえ持っていけばまた中に入れてくれるさ!」


名案にニヤニヤするダーラントに、ため息をついてザルゼはその場を離れた。

自分もこの場にいるのが、バレたのだ。


首都に筒抜けになるのは、不味い。

取り敢えず部下達を動かす時だと街の外れへと急いだ。



ダーラントも『デセルト布団店』へ向かう。

店主に、土産を見繕って貰おうと…。



二人を影から見つめる者達は、三人。


それぞれを牽制し合いながら、主人への報告をとその場を離れた。


「ゼルグフ発見!」


その報を出そうと闇へ消えようとした瞬間!



ザザーー!!


そのまま影の中で倒れた。

誰にも気付かれず。



起きた時、その記憶は全く残っていまい。

自分が何者かも、含めて…、



ーオヤジ視点ー


大魔法を暫く振りに使うが、何だか楽チンだ。

我に返って魔法棒を見つめると、隙間に埋めた米粒がキラキラ光っていた。


は?

何が……デレンだな。

アイツの細工に違いない。


たぶん、タヌキとは関係ないはずだ。

そうだ。


その…はず…。



転移しても、魔力に問題はないな。

自分の魔力に違和感を覚えるほどの力が漲るとは…。


やはり、デレンの奴を問い詰めなくては…な!


それにしても、何だろう。

焦げ臭いな。


残り香か?



タヌキ…暖炉で火遊びなのか?

え?

ヤキイモとは?

ヤキオニギリ…。


タヌキは斬新な料理人だったのか?


だいぶ焼けているが。

いや、ほとんど焼けているが僅かに残っている部分は美味い。


いや、本当だ。


あ、デーレントめ。


食い意地の張ったやつだ。

あんな奴だったか…。


まあ、いいか。

アツカンというモノだけは、タヌキにやめてくれるように頼んだ。

何せ、沸騰したら酒は無くなるのだ。


キハツセイとか呟いているタヌキの寝床を見て驚いた。


あの気に入っていた毛布は?


まさか…気を使って。


ガックリしていると、どうやら接待の用意の途中だったようだ。


え?

俺の為?

あんなにお気に入りの毛布を貸してくれるというのか…タヌキよ。



タヌキの心遣いに感激しつつも、毛布を返すとやっぱり嬉しそうに受け取っていた。

よほど毛布はお気に入りなのだな。



そう思うと、魔石は少し惜しかったかなと初めて思ったな。

何せ、タヌキに最上級の毛布を探すのにガイは必要だったからな。




ガイなんて気にした事もなかったからな。

飯も食えれは良かったし。



明日にでも、『群れ』を探すか。

そのついでに狩りでもしようか…。


しかし…何かおかしい。


どうも、キナ臭いのだ。

もしかして、どこかに巨竜螢雷(キョリュウ)が出たとしたら。。





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