米粒は、良い仕事をしたか?
台風が来ています。
どうぞお気をつけ下さい。
皆様のご無事をお祈りします。
我が家へ、ギルドの配達人がやってきた。
ん?
何も頼んでないが…。
疑問に首を傾げながらも、用件を聴けば。
内容は、意外にも深刻な内容だった。
「ギルマスからの伝言です。
『ゲランバの森』から群れがいくつか見つかりました。ギルドに登録している皆様に協力のお願いなのです」
俺の家は、その『ゲランバの森』にある。
ここに住むと決めた時から、こんな事が起こる予感はあった。
しかし、魔法棒の調子の悪い時には…。
悩みながらも、魔法棒の様子を見に行くと。。。
何と?
えっ。
コレは何が起きたんだ?!
昨日のご飯粒が沢山ひび割れに詰め込まれるんだが、まさかタヌキか?
まだ夜明け前なのもあり、夢の中のタヌキは口をむにゃむにゃしている。
寝るたびに見る光景なので、よほどご飯が足りないと思えば…
大量に作って並べれば。。
「コレは明日の分」とか言って、食べきれない分を仕舞に行くのだから、謎の多いタヌキだな。
それにしても、コレは参った。
オニギリを握って、盛んに叫んでた時にでもうっかり触ったんだな。
出しっ放しの俺が悪いのだが、ことは急を要すし。
仕方ない…思い切るしかないな。
『転移』
ごちゃごちゃした部屋は、相変わらず本や何か分からないもので溢れていた。
汚い…。
片付けるように何度注意されても、研究馬鹿なコイツにとって宝物ばかりらしく首を横に振るばかりでしまいには泣く。
「おい。起きろ、デレン。
至急の頼み事だから、今すぐ起きないと宝物もゴミ箱に放り込むぞ!」
ニヤニヤと笑って寝ている怪しい男は、そのセリフでガバッと飛び起きた。
「ダメです、師匠。
お願いです、捨てないで!!
。。。
ハッ!
夢か…ええーーーー!!!!
まさか、まさかの本物???
ゼルグフの偽物にしちゃ、その扱いの酷さは本人っぽいな」
「寝ぼけるな。俺だ。
急ぎで頼み事だ。今すぐ頼む」
奴の鼻先に魔法棒を突き出した。
「ん?
こ、こ、コレはーー!!!
えぇ、いいのか?どういう風の吹き回しなんだよ。あんなに頑なにその魔法棒にこだわっていたのに…」
よく喋る。
もし、コレで仕事が出来なければ、絶対に頼まないのだが。
仕事だけは、確かでコイツ以上の腕前を見た事はないのだから。
「『ゲランバの森』に『群れ』が出た。
しかも二種だ。
意味は分かるな。急がねば、俺の家が吹き飛ぶ。
ま、そう言う事だ」
『群れ』の一言で、そのまま奴の煩い口は開く事がなくなった。
それどころか、すぐさま仕事に取り掛かる。
あ、そうか。
コイツが師匠に拾われた原因が『群れ』だったか。暗い顔のチビ時代を思い出しかけて、奴から声がかかる。
「ゼル。
あんなに拘ってた魔法棒に何で米粒詰め込んだんだ?
しかも、おかしな魔気が混じっておかしな事になってるぞ?
アレ…コレは珍しいな」
独り言が出る時は、調子の良い時だと経験上知っている。何かを見つけた時もそうだ。
朝日が部屋の中に僅かにカーテンから漏れ出した頃に奴から声がかかった。
「出来た」
えっ。
まさか、新しい魔法棒への移管があの短時間で?!
驚く俺に、奴は更に驚く事を言い出した。
「魔法棒は、そのまま使って貰う。あ、もちろんひび割れの修理は終了したよ。
ゼル。その顔は違反だな。
魔法棒が修理の効かないモノだと知らない訳ないだろ?それでも、治った。
しかも、少し毛色を変えてだがな。
大切に使ってくれよ。この先も何かあればきてくれ。こんなに研究し甲斐のある魔法棒は無い!!
ずっと待ってるよ」
半信半疑で受け取って、何か不思議な魔気を感じた。
「さあ、行けよ。
『群れ』なら、一刻の猶予も無いぞ」
その言葉を受けて、礼を言って『転移』と呟く。
その寸前の事だ、
「魔気の恋人によろしくな!」
殴っておけば良かった…。
家の前に転移すれば、見慣れた見たくない二人が立っていた。
「黙って出かけるなよ。
パパラヌが不安そうだったぞ」
見たくない二人の横にタヌキがいたが…
ん?
魔法棒を見てニヤニヤしてるな。
そうか…米粒くっつけたのを気に病んでいたのか。
クルクルと回して、見せると。
「良かった。恩返しミッション第一号、遂に成功か。」
と、訳の分からない事を言っていた。
とりあえず、家の中へ。
嫌だけど。
すごく不本意だが、後の二人も一応入れた。
『群れ』でなければ…入れないんだがな。
タヌキが張り切って、接待してる。
タヌキよ。
人を見る目を養わなきゃ、だな。
それにしても、
騙されやすそうだな…タヌキ。