たぬきは、街へーオヤジと初買い物へ!ー
しまった!!
俺が早起きに失敗するとは!!
恐ろしき毛布の魔力!!
オヤジに頼み事があるから、猟に出掛ける前に言おうと思ってたのに。
仕方ないな…今日は諦めよう。
オヤジは、早起きして猟に行く事が多いからな。
そんな時でも、テーブルの上には朝ごはんがある。
よし、朝ごはんが先だな。!
美味そうなパンやスープが並んでる!!
しかし、この美味しさ!ヤバいな。
うーん。
一宿一飯の恩義が降り積もって…。
えーと、あーー!!!
カズ数えるの忘れてる?
と、とにかく早急にあの棒の修理を…と考え事していたら、後ろから声が掛かる。
「おはようタヌキ」
なんと、オヤジがいた!!
あれ?ダラさんは?
「あー、ハエか?飛んでったよ。気にすんな」
ハエ…定着…かな?
いいのか?オヤジ!
あ、無視ですね。この話題は禁句だと。
空気読みまくる、たぬきだからね。俺は!!
ちゃーんと、黙るさ!
でも、別のお願いを頼む事にする!!
「オヤジ。折り入ってお願いがあるんだ。
米をくれ」
ポカンとするオヤジ。
ん?
パン派とは理解してるよ。
米…ないのかなぁ。
食べちゃった?
「米ね。そんなモノ売ってたかなぁ。
町に出たら、買ってくるよ!」
町かぁ。あー、行ってみたいなぁ。
ま、所詮たぬきには、夢物語だけど。
それに、たぬき汁になるのは、いやだか…!!
オヤジ。
その思案顔は何ーー!
もしかして、たぬきの戯言を真面目に聞いた?!
ダメだよ。
たぬきなんだよー!!
たぬき汁一直線じゃん!!
あー。
なんか既に用意始めたし?!
オヤジ時折、聞く耳を収納するよな!
全く、しょうのないオヤジだ。
町かぁ。。 つ、付き合うかなぁ。
え?
楽しそうだと?
そ、そんな事ないから!!
オヤジの付き添いだから!!なっ。
オヤジは、俺の首に何やら巻いて
「コレで大丈夫!アサビさんからマークが必要だと聞いた時、作って良かったよ。
さすがアサビさんだ。
先見の明があるな。さて、米を買いに行くか!」
そんな風にオヤジと初のお出かけになったけど…米欲しいだけで、おおごとになったなぁ。
恩返しには、いるんだよ。どうしても米。
ーダーラント視点ー
翌朝早々に、家から追い出された俺はまずはギルドへと向かった。
接触出来ると思ってなかったから、先立つものがないんだ。先日、魔獣を仕留めておいたから幾らかにはなるだろう。
自由気ままな身の上は、便利で楽ちんだがとにかく、ガイが必要だ。
人にはガイなのか…せちがない。
小さなギルドだが、首都まで聞こえる業績を上げている。それを更に巧妙に隠しているからこそ、奴の足取りを掴めたのだが。
お?
探知魔法か。
珍しいな、この俺に向けてくるとは。
よほどの馬鹿か、もしくは余程の手練れか。
あれは!!
手練れの方か。
隠密の魔法陣を懐に入れてなくば、危ういところだったな。
目くらましも追加してギルドへコッソリと。
ふぅ。
単にギルドへ来るのにこんなに苦労するのは、久しぶりだな。
身分から解き放たれて以来か?
「受付は、コッチかい?引き取って貰いたいモノがあるんだが。」
可愛らしい小さな女の子が座ってる。
目をパチクリしてるな。
あー、この辺じゃ見ない顔だからか。
正直者なのな。俺、そういう子は結構好きだよ、
「あのー」
遠慮がちな声にハッとする。
しまった、考え事をする場所じゃないよな。
「えっと、引き取って貰いたいモノはココに出すのはちょっとな。
もう少し広い場所ない?」
俺のその言葉に頷いて、裏手に案内された。
「ココで如何ですか?」.
広い。田舎のギルドにしちゃ中々の場所だ。
「コレ買取出来る?」
俺は少し意地悪して、実物をドンと出した。
アレ?普通ならギャッと悲鳴が聞こえるんだけどな。
「大鰐ですね。二匹だと45000ガイになります。全額を今日お持ちになりますか?」
なるほど。
奴の獲物で見慣れてるのか。
遠慮がちなセリフは、全額清算はキツイ裏事情が透けて見えるな。
では…
「あー、15000ガイのみで後は預けるよ」
少し点数でも、稼ぐかな。
これから暫く滞在する事になるからな。
そんな風に、楽しいひと時をギルドで過ごして宿屋探しに街中へと。
すると。
なんと…。
奴とパパラヌだ。
こんな街中に、アレ連れてきちゃダメな奴だろ?
他の人々の目線を一気に集めながらも、全く気づかないな。ま、昔から目線なんて全く気にしない奴だったからな。
しかし、キョロキョロしてお上りさんか?
「おい、こんな所にパパラヌ連れて来て何してるんだ?」
声を掛ければ、パパラヌがボソッと。
「地獄に仏だな」
俺と目が合う辺り、奴は余程困ってるんだな。
いつもなら、目線すら合わないからな。
「仕方ない。米の売り場のみ教えろ!」
へ?
何?
まさか…
「米っで…お前ら何の買い物してるんだよ。
この変なコンビで」
「だから、米だ!ただ、買いに来たんだ!」
の一点張りかぁ?
期待の眼差しのパパラヌに、目線を逸らしたままで聞くゼル。似た者同士の二人に笑いたいのを堪えて。
「デセルト布団店」へと歩を進める。
いやぁー見つけた時は本当に驚いたよ。
あの大店がこんな場所にあるとは、と。
でも、覚えておいて良かったな。
近く居られるチャンスに繋がるように…と。ここは親切の一手あるのみ!!
「ここは…」
固まったゼルに、知っている店だと分かった。
あー、あの論外の毛布を買った時だな…と。
ま、分かるけどな…。
米なんて、取り扱い店はこの国の貿易だとしても、数件のみ。
かなり、遠い国からの輸入品である米。
「店主、米置いてあるか…」
やな奴みっけ。
なぜザルゼが。。ココに…。