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オヤジの踏ん張り!

浮かれてる。


浮かれるなんて、何年振りかも忘れたが完全に浮かれていたのだろう。


人嫌いと言われる俺が、更に人間不信になり森に篭ってかなり日が経つ。

一人は気楽だった。

だから満足していたと思ってたが…やはり寂しかったのだろう。


リリラル様に言われるまで分からなかった。

いや、リリラル様に言われても、分からなかったと言うべきか。


パパラヌ。

単なる小動物を気まぐれに助けた。


それだけのはずだった。

だが、あのパパラヌは変な奴だった。

それが、俺には何とも心地良かったのだと、指摘されたのだ。


何度も『そんな事は無い』と自問自答したが、パパラヌを追い出すという結論にはならない。

そして。

リリラル様曰く。


「それこそが、結論よ。

とにかく、いつもみたいに小難しく考えないで今は一緒に居なさい。

いやなら、パパラヌの方で出て行くわよ」


ズキリとした。

出て行く…そんな事が起きる想像などした事がなかったから。


リリラル様のご忠告に従う。

何せ、それが今回の報酬で良いとまで言われたのだ。あのリリラル様が!!だ。

…頷くしかなかった。


そんな風に自分に納得して。


俺は、とうとうパパラヌと一緒に暮らす結論を出した。


それにしても、やっぱりリリラル様だ。

あのパパラヌの変わりよう…普通では無いはずなのに。

自分で得た結論など、何も教えてくれる事もなく、笑顔を残して、彼女は帰っていった。



一緒に暮らすと決めて、気づいた事がある。



これは、住むのに適さない家だと。


見回して、足りないモノだらけと気づく。


俺はいったい、どうやって暮らしていたのだろうか?


不便さを急に感じ始めた俺は、思い切って家具を買おうと街へ向かったのだ。


買い物も久しぶりで、正直彼女の手助けなくば、買い物は出来なかっただろう。


良い買い物をしたと、満足して転移して驚いた。


なんと、転移魔法で家具を家へ送ったが、座標を間違えたとは…。


血の気が引いた。

ひとつ間違えば、タヌキをペッチャンコにしかねかないのだから。


タヌキは、外にいて無事だった。

だが、急いで戻ったタヌキが急に泣き出したのだ。


あ!!

タヌキの大切に大切にしてる寝床を潰してしまったのか…。

あの毛布はいたくお気に入りだったのに、無残な姿になっていた。

毛布の方を見つめながら泣くタヌキに胸の奥が痛んだ。


必死に謝りながら、ある事に気付いた。


何故泥だらけ?

タヌキ…泥遊び好きなのか?


そんな生態だったか…。


泣き止んだ途端、家の外へ走り出すタヌキ。

何処へ?


タヌキとは、とにかく、足はめっちゃ早いモノなのか?慌てて追いかけると。


危ない目に遭うかもしれない。

何せ日暮れには、魔物も多い…。


え?

何を?


泥だらけのタヌキの答えは、まさかの

『隙間を埋める為に、壁作り』とは…。


賢いのか、違うのか微妙なタヌキだ。

だが、泥だらけで日暮れは不味い。


暫し考えたが、ココは思い切って魔法を全開にする事にした。


久しぶりの本気の魔法だ。


タヌキに詫びた後に、魔方陣を展開する。

こんな複雑な魔方陣を描くのは久しぶりだ。

何処か心がワクワクする…(やはり根っからの魔法使いなのか…)



ひび割れの魔法棒では、少し無謀かもしれない。

それでも、やりたかったのだ。


久しぶりに、誰かの為に魔法を使いたかった。



『木・土・風・火のエレメンタルよ。

その力を持って、我が意を叶えよ』



昔、猟師が住んでいたと言うボロ小屋は、あの頃の俺にはちょうど良かった。

有り難く住まわせて貰った。


だが。


今、我が家となる新しい家を魔法で構築したのだ。


あらゆる防御陣を込め、秘策も盛り込んだ今の俺の精一杯だ。


家の完成だ!!!


不味いな。

やはり、ひび割れ魔法棒では魔力漏れがあるのだな。力の使いすぎで身体がフラつく。


タヌキがウロウロする気配で、振り返ると。

ニヤッと笑ったタヌキがいた。


家を見ながら、素直に嬉しそうなタヌキ。


ワクワクを隠せないのか、早く入りたがるが、この泥だらけではな。


裏へ周り、ひとつのドアを開ける。


「う、うきゃーー。

ふ、風呂。風呂ですーーー!!!!」


壊れた…と思うほどタヌキが喜んでいる。


狂喜乱舞してるタヌキは、俺の方を見て。



「一番風呂は、やはりオヤジで」

と、遠慮していた。


イチバンブロ…?


意味がわからない。


でも、タヌキの心遣いは理解出来る。


「ありがとう。

でも、少しする事があるから、先に入ってくれ」


と、言うとタヌキは、何度も何度もお辞儀を繰り返した。

そして。


ダーーーシュしてぽちゃん。


風呂の中にダイブした。


良かった。

喜んでくれた。


それを見届けて俺は、部屋の方へ。

とにかく、疲れた…。


でも。

満足の出来る家の様子に、笑みが零れた。

久しぶりの魔力に、魔法棒はかろうじて堪えてくれていた。


(良かった…でも。

お風呂は、明日にしよう。水の入れ替えをする魔力がもう無いのだ。


あの泥だらけでは…な)


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