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恩返しは更に遠のく…

うーん、難しい…。


草や泥にまみれながら、頑張っている。

この雪野原に、泥を探すのは少し大変だったが家の近くに洞窟があるんだ。

そこから持ってきた。



早くしなきゃ。

帰って来るから!!



「ハクション!!」

昨日の晩の事だ。


最近、やけにご馳走続きの食卓のおかげで立派なタヌキ腹になった俺は満足げに寝床に入ったところだった。


そしたら。


「ハクション、ハクション!!」


お?

三回…という事は風邪だな。

噂話は、4回からだったし。


原因は分かってる。


『隙間風』


アレは冬の厳しいこの地方には、不味いよ。

俺も毛布がなきゃ、凍えてたよ。


オヤジは、身体が弱いくせに俺の薬草をやたらと断るから。

薬草のトラウマだな。


しかし、子供の頃のトラウマって怖いな。


そこで、最近は生活環境の改善に乗り出した訳なんだよ。

何をしたら、いいか考えてたその晩にあの『くしゃみ』だからな。



俺は、知ってるんだ。

草と泥を捏ねて、竹の隙間に入れると壁になるんだよ(確か…そんな記憶が?)


それの応用だ。

さすがのたぬきでも、泥はお外でと。

家の近くで捏ねてます。


ふぅ。

不味いぞ。

何故が買い物から、素早く帰ってくるから。


棒だな。

あのヒビだらけの棒。


アレを振るんだよ。


何の棒かな?

だけど、一瞬で行ったり帰ったり出来る便利道具とか…うーー羨ましい!!


ドカン!!!



何??

家の中から、物凄い音が聞こえたけど。


まさか、オヤジは着地に失敗して。

転んだなーー!!



オヤジーーーー!!!!!!


頭を打っていたらと、慌てて家へ飛び込むと…。



何処ですか?ココ…。


デカ過ぎる家具や雑貨で家がーー!!



狭過ぎる。


もはや、俺の極上の寝床すらペチャンコとは…。



うっ。

しまった、泣けてきた。


大切にしてたのに。

あのふわっふわの毛布。


「しまった…加減を間違えるとは。

こんな失敗は魔法を覚えた頃以来だ…あ!!


タヌキ。

タヌキ…申し訳ない。


そんなつもりじゃなかったんだ。

食べ物を並べてるテーブルとか、タヌキの寝床の籠も良いものを見つけたから…。


ん?

それにしても、何故泥だらけなんだ?」



必死に謝るオヤジに、俺の涙も止まった。

ワザとじゃないなら、怒らないさ。


ワザとじゃないのに、怒られるのは俺…嫌いだから。何かめっちゃ嫌な気持ちになるんだ。


ん?

誰にされたんだろう…。

母親は、兄弟と生まれて間もなく出て行ったのに…。



ん?

ソレハナンダ…。



オヤジが手に持つモノが気になる。


「これはな。

洗いブラシだ。

このブラシに仕込んである生活魔法で、身体を擦ると綺麗になるから。


さ。

まずは、綺麗にしよう」


嫌な予感は当たった。


アレは、たぬきの天敵だ!!


ゴシゴシ…「ギャアーーーー!!」



俺はその足で外へ逃げ出した。


いたーーー!

何アレ。痛すぎますよ。


たぬき用じゃないんだよ。

無理無理。たぬきは、お風呂が良いよ。

(まあ、無いけど…だから、ちょっぴり臭い気がするけど…)



追いかけて来たオヤジが固まってる?


「これか?

これは、草と泥を捏ねて壁を作るんだよ。

隙間風がこれでなくなるから!楽しみしてくれよ。

本当は、帰ってくるまでにやり遂げるはず!!だったんたけどな」


もう、夕方近くになる。

不味いな。


急がなきゃ…と、また捏ねようとすると。


「タヌキ…。

ありがとう。お前の気持ちは汲んだから。

少し俺の出番も欲しいよ。


寝床の詫びだと思ってくれ」



オヤジの言葉に、暫く考えて頷いた。

二人でやれば、あっという間に出来る…あ!!!



オヤジ。。。



結果。

オヤジは、暴走した。


ボロ小屋は、消え去ったんだ。

何だろ。


二倍の大きさの小屋が目の前に??

しかも、キチンと建ってるよ…。


剥がれそうな屋根と、隙間だらけの木の壁。

禿げた色。

ドアも、ガタピシ。



それが。


立派なログハウス??


ん?

ログハウスって何だ??



とにかく、立派な小屋の完成だ。


オヤジの顔色は少し悪いが、嬉しそうに笑ったから。


俺もニヤッとした。



良かった。

これで、病弱なオヤジが元気になるぞー!!と。



でも。

俺の恩返し計画は、またもや延期になった…。


その上、新しい家の中にはまたもや、恩返しが必要なモノがーーー!!!



あぁ、

恩返しは、更に道遠し…



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