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アサビ嬢の親切。

タヌキ…。


聞き慣れない言葉を口の中で繰り返しながら、街中を歩き回っていると。


ん?

アレは確かアサビさんでは。


「き、奇遇ですね。

私は今日は、ギルドが休みで買い物してる所なんです。

ゼギーさんは、今日は?」


有り難い人と出会った。


不案内な街中を彷徨っていたが、目的の買い物場所へすら辿り着けないとは。

情け無い…。


「アサビさん。

休日なのに申し訳ないが、ある店を教えて欲しいんだが…」


快諾とは…本当に良い人だ。

アサビさんは、その上買い物にすら付き合ってくれると言う。


「あのー。お手伝いとか言って押しかけ的ですが、かえってご迷惑では?」


恐縮するアサビ嬢にこちらが申し訳なく思うも、買い物を素早く済ませたいので、早足となっていたようだ。


「さすが、猟師さんですね。健脚です」と声をかけられハッとした。


不味い…人と歩くのなどあまりに久しぶりでうっかりした。

声を掛けてもらって、息切れしたいる彼女に気づき、慌ててゆっくり歩く様に気をつけてながら、もう一度彼女に詫びたが。。


「いえ。良い運動です。

それより、目的のお店に到着しましたよ」


彼女の言葉に感謝を感じつつ目の前を見ると。


大きな看板が目に入る。


『家具屋アバンド』


立派な店構えだな。

期待が募る。


ドアを入ってすぐ、店員さんに声をかけるアサビさんは恐らく買い物上級者なのだろう。


「すみません。店主さんいらっしゃいますか?」

笑顔のアサビさんに、店員がすぐさま対応する。


「これは、ギルドのアサビさんではないですか。

今日は、ギルマスのお使いですか?」


やはり…有名人だな。アサビ嬢。

二人の会話が長く続いているので、そのままそっと離れて周りを見る。


あれは…、


目的のテーブルを見つけたぞ。


良い木材を使用してるな。

手触りを確かめていると、店員が近寄って来て。


「お兄さん。

ココは、高級品売り場でね。

ほら、あっちに沢山あるから見てみてくれよ」


指差す方向には、確かに沢山のテーブルがある。

だが、これが気に入ったのだ。

動かない俺に、業を煮やした雰囲気に変わった店員が何が言おうとしたその時。


「これはお目が高い。

さすがアサビ様のお知り合いですな。

このテーブルは、首都にもないお品ですよ。

隣国から買い付けた珍しいお品で、1500000ガイになります」

恰幅のよい紳士がにこやかな笑顔で後ろから現れた。


ほう、安いな。

そんな値段で隣国の品物が買えるのか。

危険な地帯を越えての商売なのに。

は!

もしかして、アサビさんが気を使って裏工作を…。

有り難いがここは…。


「少しお高いですかな。では…」

「アサビさん、気を使ってもらったのですね。

こんな安い値段をつけて貰って申し訳ないですよ。

御店主。普段通りのお値段で頂戴します。お気遣いありがとうございます」


御店主の言葉に、被るように言ってしまった。

何を御店主は言ったのだろうか?

こういうスキルがかなりダウンしているな。

重なるとは。


まあ…昔からあまりスキルなど無かったが、確かに酷くなってるな。


「ゴホン。

失礼しました。

こちらは、お運びしますか?」

さすが店長だ。笑顔でさっと対応とは。


「いや、持ち帰るよ。

それと、雑貨も少し見たいのだが」


良かった。

御店主は、理解してくれたようだ。


タヌキの寝床用の籠。

食器や調理器具。食器戸棚。

次々と買い込んで、支払いをした。


まだ、俺が現役の頃に貯めた金があるんだ。

名前を変えて、ココのギルドでは預けている為に、遠くのギルドへ転移で向かい下ろして来たのだから。


とは言え、使う当てのない金は結構あったようだ。取り敢えず白銀で下ろしたのだ。

ガイでは、大量になり無理があったからな。


白銀2枚で買い物は、終了した。

お買い得な店だな。


やはり、アサビ嬢にはお礼でもと、誘おうと声をかけてみた。


「あの、アサビさん。

買い物にお付き合い頂いたお礼で…」


アレ?アサビ嬢の顔色が悪いぞ。

もしや、調子が悪くて今日休んでたのでは?


「いえいえ。元気いっぱいなのですがこの後約束しているので。

良かったら、またの機会にお願いします」


爽やかな笑顔で走り去るアサビ嬢に、ポカンとなる。



んー。

タヌキよ。これが『振られた』と言う事だぞ。

と、心の中で言う。


(あれからリリカル様との誤解を解くのに苦心したのは、思い出したくない…)


タヌキの待つ家へ向かいながら、屋台を眺めていた。


肉巻きが好物だったと思いながら…。



ーアサビ嬢の報告ー


「ギルマス!!!!


聞いてますか?

こんな任務は、本当にもう無理ですから!!!」


アサビ嬢はゼギーさんと別れた後、すぐさま駆け込んだ先にはギルマスの部屋で。


「で。どうだったんだ?」


余裕のギルマスに、腹立ちは更にいや増す。

アサビ嬢は真っ赤になりながら叫んだ。


「あの人。

どうして、こんなトンデモ金銭感覚なんです?

今日、ものすごーーく高いテーブルを即!買ったんですよ。

そこまでは、まだ理解出来ますよ。

でも、

その値段をみて、あろう事か値引き交渉を私がしたと考えて私に面倒かけたと謝るんですよ?!

。。

めっちゃ高額なのに、安いねとか言って。

もう、店主さえ固まっちゃいましたよ。

でも、そんな我々に全く気づく事なく。

更に、更に!!

次々と躊躇いとか、迷いとか、全く無しであっという間に白銀2枚の買い物終了ですよ!!

白銀とか。

私、おとぎ話と思ってましたよ。


出した時の店主は、よくぞ気絶しなかったってところですよ。

周りの店員はけっこう、ふらっとしてましたから。

どうなってるんですか?」


ギルマスは、白銀の箇所で暫し固まっていたがおもむろに話し出した。


「この街自体が変わり出しているんだ。

まあ、いい方向ににだがな。

彼の買い物は、桁違いだ。

そんな利益が次々と上がるのだ。

商店は、更に情報に強い。

種々様々な商店がこの街に店を出したいと望む有様だ。

だいたい、こんな田舎町では今までの獲物の買取先だって全て首都だったんだ。

更なる情報として…

おおごとになる前に、密かに騎士団の一部が動き出しているらしい。

もちろん、ギルドの本部も承知だ。


だが、この事はまだ彼には知られたくないんだ。

今のところ、彼の信頼の一番厚い君が適任なんだよ。申し訳ないがこれからも頼むよ」


ギルマスは、テーブルの上にひとつの封筒を出した。


お金だろうかと、彼女が取ると。


中身は。



『王宮演舞会の御招待』と書かれていた。



憧れの演舞会。



でも。


「もちろん、行き帰りの手配や宿の準備も万端だ。おっと、ドレスもあの『ルーサンド』で仕立てる予定だと。

どうだ。やって貰えるか?」


アサビ嬢は、首が取れると不安になる程頷いて部屋を出て行った。



「さすがだな。

あの方の読み通り、アサビ嬢はこの後も頑張ってくれるだろう。

だが。

こうなると、私も先が読めない…。

今一度、あの方の采配を頼むか」


ギルマスの独り言は誰にも聞かれる事はなかった…。







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