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救い主は、小汚いオヤジ?!

連載中の作品がありますが、思い付きで書いております。

よろしくお願いします。

真っ白な雪の景色は、美しい。

チラチラ舞う雪は、銀色に輝いてまるで夢の中の世界のようだ。


だが。

問題は、自分がココに行き倒れている事だ。


身体は、全く動かない。

目だって、やっと薄眼を開けているだけで今にも閉じそうだ。


このままでは、不味いと分かっていてももう為すすべとて無い。

諦めて目を閉じかけた時に見たものは、最後の夢のプレゼントなのか?


それにしては、小汚い救い主がヒョイっと自分を摘み上げたところだった。

かなり乱暴に…だ。

顔を見たいと願ったが…



そこまでで意識は途絶えた。




次に目を開けた時には、パチパチと焚き火の爆ぜる音がした。

た、助かったのか?

暖かな毛布の上に寝ているようで、試しに手足を動かせば…。


ピクッ。


お!

動くようだ。


モゾモゾと自分の身体の点検をしていて、周りに注意を払わなかった。

だから、暫くしてやっと他の存在に気づいた。


人が居たではないか!


あれは、夢ではなかったという事か?

あーー。

が、それどころでは無い!!


鉈が!!


鉈を持った小汚い救い主が、目の前に振りかざした状態で立っているではないか!!



なんと。

救い主と思っていたのは、間違えだったのか。

本当は自分を食べる為に捕まえたのか…。


助かったと思ったのに。


ちょっと悔しい。

でも。

今や、風前の灯になった自分に出来る事は、小刻みに震える身体を丸めるくらい。


鉈を持った人間相手ではと、ギュッと目を閉じていたら…。


アレ?


待てど暮らせど鉈の気配は無い。

何故だ?


「ふん!

お前みたいなチビ助を食っても、旨くなんか無い。

さあ、元気になったらコレでも飲んで何処となり行け!!」


本当に?

今度こそ、助かったのか?


ぐぅーー。


腹の虫が無事な自分を教えてくれる。

目の前に出された平皿には、並々に注がれたミルクがある。

なんとも言えない甘い匂いが、腹に直撃する。

そう言えば、餓死しそうになって巣穴から出て来たんだった。


オヤジの鉈は薪を割っていた。

大丈夫そうだと思っても、身体の震えはまだ残ってる。

でも、腹の虫の催促は続き。

いよいよ、チラ見しながらも無関心になった酒臭いオヤジに警戒しつつミルクをペロリ。


う、うっまーーー!!



ガツガツの飲んだら一瞬だった。

残ってるミルクも残さず舐めとる!!


空きっ腹に響く美味いミルクに、薄っすら涙が出てくるよ。

無理だよ。こんなに美味いもの『たぬき』に生まれてから食べた事ないから!!

泣けるよ…。



「お?こりゃたまげた。『たぬき(パパラヌ)』でも泣いたりするのか?」


パパラヌ?

もしかして、自分の事か?


ええーー!!

『たぬき』って名前じゃないのか?


「さあ、飲んだらサッサと出て行け」

オヤジは、皿を片づけながらそう言い放つ。


こんな吹雪の荒れ狂う音が聞こえるのに、追い出すのか?

そりゃ、野生動物だし。

美味いものご馳走になったし…。


カタカタ揺れる窓枠の音を聞きながら、尻尾を引きずるように出口へと向かうと…。


「あーー。分かった、分かった!

今夜一晩だけだぞ。明日になったら出て行くんだぞ!」


小汚い、酒臭い、オヤジだけど。


優しい人だな。


うっ。

またも、涙目で見てたらオヤジは呆れていた。


「お前、野生動物としてどうなんだ?!

はぁ。変なもの拾っちゃったなぁ…」


オヤジのため息を聞きながら、再び毛布の寝床へと戻る。たぬきと生まれ初めての暖かい幸せな夜だった。



そして翌朝知るのだ。

あの毛布は、貴重な毛布だったと。


オヤジは、薄い布団一枚で風邪をひいていたから。

熱を出して、寝床で唸ってるのを見て今こそ『恩返しだ』と!!思いついた。


たぬき臭い毛布をオヤジの身体の上に乗せると、晴れて白銀の世界となった外へと飛び出して行く。



『回復草』と人間が読んでいる草の生えてる場所を自分は知っているのだから。

役に立つぞと、先を目指して急ぐ!!



だから。



駆け出した自分の後は、ドアが開いたままだったのに気づがなかった。



「ハクション!!」

クシャミ連発でオヤジが凍えていたのに気づいたのは、それから一時間後だった…。




たぬきの恩返しは、まだ続く。


たぬきは、こちらの世界ではパパラヌが正式です。頑固な主人公は、あくまで『たぬき』で通しております。

ご容赦ください。

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