表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/30

第21話 草原

 草原は見通しがきき、近くの茂みから急に襲われる心配がない分、森の中を歩くのに比べ気分的に楽だった。

 草の丈は胸くらいまでしかなく、土は堅く歩きやすかった。

 陽が昇るにつれて暑くなってきたが、そよぐ風が心地よかった。

 風の音に混じって聞き慣れた羽音が聞こえ、周囲を見回すと一匹のセグロヤンマが少し離れたところを飛んでいた。

 北には赤茶けた高い山が連なっていて、俺たちはそちらに向かって歩いていた。

 先頭はアーロン、次にミリアムと俺、最後にイサークとメトセラという順で並んでいた。

「ヨシュアってさ、なんかみんなから誤解されてねえか」

 先ほどの会話の流れを受けて、後ろからイサークが話しかけてきた。

 少し嬉しい気持ちもあったが、単純に喜ぶこともできなかった。

「戦いで我を忘れると、仲間を傷つけているのも事実だ」

 振り返ると、三白眼には意外に優しい光が浮かんでいた。

「そういや、この間、鎧竜との戦いの後の鈎爪竜との戦いで邪魔なやつを一人蹴り飛ばしてたよな」

「見てたのか?」

「ああ、チラッとな。でも、あれくらい普通だろ。鈎爪竜に食われるのと、蹴飛ばされるのだったら、蹴飛ばされたほうがマシだろうからな」

「そう言ってもらえると助かる」

 イサークはすっかり饒舌になっていた。

「まあ、あとは何だな。戦いぶりが怖いのかな」

「戦いぶり?」

「ああ、ヨシュアの場合、短い剣を使って、血まみれになって戦っているからな。肝っ玉の小さい奴には恐ろしく見えるんだろう。どうだ、いっそのこと、弓をやってみないか。そうすればみんなから恐れられることも減るかもしれねえ」

 イサークなりに気を遣ってくれているようだった。

 俺たちの仲間にならないかと誘われたのは初めてだった。なぜか急に目頭が熱くなった。

 俺は目を伏せ、小さな声で答えた。

「そうかも知れない。でも、イサークが弓の腕前に誇りを持っているように俺も双剣の扱いに自信を持っている。邑全体の戦力維持のためには今のままのほうがいいような気がする」

 せっかくの気遣いにこんな答えを返したら、気を悪くするかもしれなかった。

「そうか、そうだな。じゃあ、今度、短い剣の使い方を教えてくれよ。昨日の森での戦いみたいに弓が使えない状況で戦わなくちゃいけないこともあるからな」

 顔を上げてイサークを見ると、彼はにやりと笑っていた。

「喜んで」

 俺は心の底からの笑顔を浮かべた。


「目的地はあの山ということでいいのか?」

 俺とイサークの会話がひと段落つくと、アーロンが振り返らずによく響く声を発した。

 話しかけている相手は恐らくミリアムだ。

「ええ」

 ミリアムは緊張に表情を硬くした。

 どうもアーロンのことは苦手らしい。

 そう言えば、アーロンもミリアムとは必要以上の会話をしようとしなかった。

 同じ目的の旅をする以上、もう少し話しかけてもいいのではないかとも思った。

 もっとも、アーロンは生粋の武人で、もともと口数の多い方ではなく、女性に対して不器用なところがあった。

 今は亡きアーロンの父親も優れた戦士だったらしく、今アーロンが使っている長剣を操り、数多くの鈎爪竜を葬ったそうだ。

 アーロンの父親は耕作地を広げる作業中に鈎爪竜の群れに襲われ、傷ついた仲間を逃がすためにしんがりを務め、命を落としたと聞いている。

 彼の最後の活躍は今も語り草になっていた。

 アーロンはそんな父親を目標にひたすら剣の腕を磨き、結果として戦士の長の地位に上り詰めたそうだ。

 俺はそんなアーロンを尊敬していた。

 今までの俺にとって、憎むべき鈎爪竜を殺すことが何よりも優先する目標だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ