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束の間の休みと変異種の脅威

「何でしょう。ここまでずっと連続でモンスターが出てますね。銀の、何か知りませんか?」


「……私たちのせいかもね」


 あれから複数のモンスターに囲まれはしなかったが、進むたびに何かしら出て来ている。

 まぁ、ほとんどスライムだけど。

 さっきのヒルとゴブリンは本来は出くわしにくいのかも。


「そんなにエンカウント率高いかな」


 比べたこともないので、分からなかったり……。


「私たちって武器の姿をしてるけど、つまりは神でしょ? モンスターからしたら、天敵ってことよ」


 何だか申し訳なさそうにグラがそう言った。


「あぁ、寄せ集めてるってことか。でも、僕は別に気にしてないよ。むしろ戦える方が強くなれるしね」


「むふふ、アル様はカッコいいですね」


「私は知ってたけど? えっ、むしろニールは知らなかったんだぁ? さっきもぐじゃぐじゃに敵を倒してたじゃない」


「知ってましたけど。えっ、むしろグラさんは今の発言に感動しなかったんですかぁ?」


「やめようよ……ちょっとモンスター倒しだけなのに大げさだって」


 そんなやり取りをしばらく続けていると、気付けば二層にたどり着いていた。

 ゆっくり歩いていたのに、あっという間だったなぁ。

 まぁ、初心者でも進めるんだから当たり前だよね。


「わっ! 今度は森林ですか。想像してたよりずっとずっと大きいです」


「それに結構温かいよ」


 一層は暗い感じの雰囲気だったが、二層は外って感じ。

 陽も浴びれるし、迷宮というかなんというか。


「少し水でも飲まない? この川の上流に依頼の草も生えているみたいだし」


「さんせーです! ニールは身体も洗いたいですし!」


「私も汚ったない血を流したいわ。おえー」


 見つけた川に沿って歩き続けて、しばらく。

 さっきまで出くわし続けていたモンスターの影も姿もないことに気付く。

 ただ、気にしても仕方ないので僕らは座れるような大石が置いてある場所でようやくひと休憩する。


「うわうわ! 綺麗ですよアル様! お魚もいます!」


「ニール、石にコケが生えてるから滑らないようにしなよ!」


「お子ちゃまね!」


「とか言って、座りながら足バタバタさせてるくせに!」


「ううう、アルくんうるしゃい!」


 人の姿に戻った二人は楽しそうに川を満喫していた。

 それにしても、どういう理屈で水着になれるのだろうか。

 見れば見るほど便利な身体だ。


 思ったよりも足が疲れていたらしい。

 僕も水に浸かりながら、遊ぶ二人を眺めていると


「……アルくん、こっち! 見て見て、エビ!」


 手のひらに乗っけたエビをグラは嬉しそうに僕に見せてくれた。


「ありがとう! グラ、楽しい?」


 思わず子供みたいで僕はグラの頭を撫でてしまう。


「うん! 私のいたとこにはこんなのなかったから。生命の息吹かしら。そういうのを感じるわ」


「あーずるいずるい! アル様、ニールは魚を捕まえましたよ! グラさんよりたくさん撫でて下さい!」


「はぁ? なら私はナマズを捕まえてやるんだから!」


「よし、僕も何か捕まえようかな!」


 ☆


 しばらく遊んでいると、突如大きな風が吹いた。

 別段、風には代わりはないけれど、嫌な予感がして水辺から陸に上がる。

 それはグラとニールも同じようで、険しい顔をしながら風が吹いてきた方向を確かめた。


「……来ますね」


「さっきのヒルとゴブリンよりもタチが悪そうだけど」


「ちらほらと見えていた冒険者もそれぞれの目的の為か、見えなくなったし」


 二層には同じような冒険者が何人か確認出来た。

 まだ装備も整っていないような、駆け出し。

 だから、油断とかそういうのじゃなくてちょっとホッとしていた部分もある。


 助けもなければ、共闘もない。


 ドドド、遂に何かが地面を蹴る音が鳴る。


「複数の音ね」


 動かない方が良いか、それとも進むべきか。

 遊んでいる間に薬草の元は回収したし、撤退もできる。


「思ったよりも、速いです!」


 どうやら撤退する隙もないとみた。

 急いでニールとグラを剣に戻し、手に握る。


「グラ、ニール! って、あのモンスター達は、逃げてるのか?」


 川の更に上流から、見たことのあるホワイトウルフが十頭近く駆け下りてくる。

 咄嗟に剣を構えるが、脇目もふらず通り抜けて行った。


「何が起きてるんだ!」


 すぐ後ろ、更に大きい影が姿を現わす。


「ホワイト、ウルフ、なのか?」


 明らかにさっき通っていた狼と違う。

 左右の目は金と青に分かれ、前脚が異常に大きい。

 恐らく説明を受けた変異種だろう。

 敵意を持って僕らを見下ろす。


 通常のホワイトウルフの二倍近い大きさの獣はグルルルと喉を鳴らして、牙を剥き出しにした。


「……くっ」


 前脚をドンと振り下ろすだけで、風圧を感じる。

 スキル持ちだろうか。

 ただ決して踏み込むことはせず、僕らの相対する距離は縮まない。

 なら、先手必勝だ——。


「はっ!」


 怯むことなく、僕は水を叩き上げて目潰しを試みる。

 が、それを嘲笑うかのようにホワイトウルフは悠然と躱し、


「アル様、右足です! 構えて!」


「アルくん、堪えなさい!」


 その右足を振り抜いた。


 反射的に剣で受け止めて————。

 途端、強い衝撃が身体中を走り回る。

 確かに剣で受け止めたはずなのに、骨にまで響いて、身体が浮か上がりそうになる。


 小石をブレーキにどうにか一撃を抑え込んだ。


「……やってやる。来い、変異種」


 逃げられないなら、戦うしかない。

 ホワイトウルフを倒す為に、僕は頭で策を練るのだった。

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