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ダンジョン探索

「早速増えてますね、お仲間さんが」


 そんなジト目で見られても困る。

 鑑定してくれたお姉さんが、面白くなさそうにそう呟いた。


「いやぁ、は、ははっ」


 苦笑いするしかない。

 とりあえずさっきボードから取った依頼書と、貰ったばかりのギルドカードを提出した。

 しっかり『三枚』も。


「離しなさい! 右腕は私の場所よ!」


「少しぐらい良い思いをする権利はニールにもありますから! だって、成人の儀から一緒なんてズルいです! とってもとっても羨ましいです!」


 で、左右の二人はさっきからずっとそんな調子だ。

 正直言って気が休まらない。

 他の冒険者には、『ここは遊び場じゃない』と嫌味まで言われる始末。


「ちょっと買い出しお願い」


 仕方なしに、僕は二人に必要な物を購入してくるようにお願いをした。

 どうせルールや決まりなんてあの二人は興味もないのだろう、割と素直に行ってくれた気がする。

 何にせよ食料、薬、地図などのギルド内で買えるものは、揃えておかないと……。

 宿は一応抑えるし、うん。母さんから貰った旅の費用もまだ残ってる。

 失敗しても、一週間は問題ないだろう。


「受注完了致しました。……今日が探索初日なので、必ず本日中に帰ってきて下さい。日を跨ぐのはなしです」


 細かいルールを聞きながら、頷く。


「それと、ダンジョンには、稀ですがレアモンスターが出ます。ただ、初心者が狩るのはしんどいので撤退をお願いします」


「レアモンスター?」


「例えばスライム。知ってるかと思いますが単体で言えば弱いです。それこそ大人が木の棒で殴れば倒せるぐらいには。ですが、変異種(レア)は別です。種類はまちまちなんですけど、体が鉄で出来てるメタルスライムや、スキルを持つスライムなんてのもいます」


 ふーん……レアモンスターか。

 グラで倒すとそのスキルも蓄積されるのだろうか。

 なんて考えていると、


「くれぐれも! 命を大切に!」


 そんな僕を見透かすように強く念を押される。

 スライムがスキルを持ってたってあんまり変わらない気がするけどなぁ。


 ☆


「北方封印迷宮か。名前無(ネームレス)の迷宮なのに、やっぱり大きいな」


「ですです。ですからアル様は、私の後ろに」


「唆されてはダメよ、アルくん。ビュンと移動しなさい。私の後ろに!」


 もう好きにやらせることにした。

 ツッコんでも終わりがなさすぎる。


「地上型の迷宮(ダンジョン)か」


 迷宮には大きく分けて二種あって、一つが地上型。

 上に登って行くような形の迷宮だ。

 もう一つは地下型。

 文字通り地下へと降っていく迷宮。


「地上型の方が多いのよね、確か」


「うん、分かりやすいしね。やっぱり地下型の方が強いモンスターが多いって話だけど」


 残念ながら神々の配慮により、入らなければ何層あるか分からない。

 外には、ぽっかりと穴を開けた入口があるだけだった。


 見ていても始まらないので、僕が一番最初に入口から進んでいく。


「あれ……思ったより暗くない」


「神々が人にモンスターを倒させる為に建てたのだから、当たり前じゃない。まっ、そういう訳にはいかない迷宮もあるみたいだけど」


 それに僕のイメージと違って、横も縦も広いのだ。

 木も生えているし、何より生き物の気配がする。

 壁は石と土で出来ているのか、触るとジャリジャリしていた。


「さて、私を使う時が来たようね。ここからはいつモンスターが出てもおかしくないわ」


「そうだね。……そんなに遠くないかも」


 あいにく、と言うべきなのか、それとも良かったと言うべきなのか。

 周りに人は一人もいなかった。


「じゃあ——」


「ニールも武器になれます! というか、その為のニールなんですけど……」


「えっ、そうなの? いや、そうか。確か鎚ってハンマーだもんね」


 流石にハンマーは武器として使ったことないけど。


「じーっ」


「うぇっ、待ってよグラ、そんな目で見ないで欲しい! そりゃ男だし、武器に興味がないやつなんていないっていうか!」


 別に悪いことはしていないのに、僕は言い訳をグラにする。


「ふんっ、お生憎様ね。トンカチ女! 私は剣、貴方は鎚。扱いやすさからして、段違いなの!」


「私は剣にもなれますけど」


「はぁ〜? ならやってごらんなさいよ! 今すぐに!」


 まるで出来っこないと言いたげに、グラはニールを急かす。


「……はい! アル様どうぞ」


 そう言って地面に突き刺さった一本の武器。

 ああ、これが——。

 見間違える訳がない、紛う事なき少し短い剣であった。

 黄金の剣、持つことさえ戸惑ってしまう美しい一振は僕に握れと促している。


「なっ、ななな」


「ふふーん、どうですかアル様! 綺麗でしょう?」


「にゃんでえええ! おかしいわよ、ズルイじゃない!」


 ダンジョンの探索はそんなグラの悲鳴で始まったのだった。

 

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