能力判明!
飽きとか言ってられない。
さぁ、この異世界に来てまずやることと言ったら自分の能力確認だ。ちなみに念じても自分の能力は見れなかった。
ステータスオープンとも叫んだがそれもダメだった。
もちろん周りに白い目で見られたのは言わずもがな。
仕方がないので戻ってさっきの門のところにいた傭兵に聞いてみることにした。
「あのぉ、ちょっと聞きたいことがあるのですけど」
「おー、さっきの坊主じゃねぇか。いいぜ。なんでも答えてやるよ」
「ありがとうございます。では、冒険者になるにはどうすればいいですか?」
俺が尋ねる。カイトが言っていたものだ。他の人とかもそうだが魔法といい身体能力といい人間業ではない。おそらくは何かの能力、もしくはステータスみたいなものだろう。そして、それがあるから冒険者になれたのだろう。
「冒険者じゃなかったのか。それなのにダンジョンへ潜っていたなんて。冒険者になるには冒険者ギルドへ行って手続きをすればなれるぞ。ついでに加護も貰える。しかし、ダンジョンは死んでもらっては困るから試験だけはするけどな。もっとも、試験をする前に合格するやつも稀にいる。女神の加護でとてつもない力を授かったやつとかだ。」
「まぁ、そんな奴は稀だから気にしなくていい。」
そういいながら傭兵は懐に手を入れる。
「一応地図は渡しておくが、入り組んでしてわかりにくいからな。分からなくなったら誰かに聞いた方が早い。」
「ご親切にありがとうございます。」
「おうとも、また何かあったらなんでも聞いてくれ。」
傭兵は胸を張って答える。
さてと、冒険者ギルドに行きますか。
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迷った。
いやいやなんだここ。立体過ぎる割には行き止まりが多いし。基本的に同じ高さに建物があるせいでどこを目指せばいいかわからねぇ。東京の地下鉄よりひどいぞ。
「ねぇ、キミどうしたの?道にでも迷った〜?」
ため息をついていると後ろから声がした。
振り向くとそこには頭に耳がある女の子がいた。
まさか、いるのか、この世界には!
ケモ耳っ子達が!
俺は興奮した。いやだってケモ耳だぞ?もふもふだぞ?それを本当にみることができるなんて、生きててよかった!神様ありがとうございます。
「うん、道に迷った。冒険者ギルドに行きたいんだけど……君、ここ詳しいの?良ければ冒険者ギルドへ案内してくれない?」
「えっ!?冒険者ギルドに行くの?!実は私も今から行くんだ!じゃあ、一緒行こうよ!」
元気いいなぁ。元気な人を見るとこっちまで笑顔になるよなぁ。
「そうなんだ。奇遇だね。じゃあ行こうか。」
そう言い俺は彼女の横に沿うように歩き出した。
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俺はケモ耳っ娘に悟られないように気にしながら横を歩いていた。ケモ耳がインパクトすぎて気にしてなかったが結構美人だ。顔は整っているし女子にしては背が高くて足が細くてモデルさんのようだ。それでいて健康な肌色で運動少女っぽい雰囲気が溢れている。
うん、綺麗だ。歩くたびにピクピク動く耳は見ていて楽しい。おっといけないあまりみとれすぎたら気づかれる。
そんなことを考えていると大きな建物が見えてきた。
というかとてつもなくでかい。冒険者ギルドと聞いて酒場とかのイメージだったのだが違った。大型スーパーくらいはある。
「着いたよ!ここが冒険者ギルド、この街最大の建物にして中枢機関の1つ、サオスだよ!」
「サオス!」
俺の目が輝く。
本当にワクワクするよな!こうゆうのって!
少しの時間感動してそれから中に入る。
おぉー!中はとても綺麗されていた。
入ってすぐに受付のようなところがありそこでクエスト完了の報告をしたり換金ができたり、とにかく色々できるらしい。換金とは魔物の体内にある魔石をお金に変えることだ。
そして左に通路がありそこを抜けると酒場らしいそこの入り口付近には掲示板がありクエストが貼られてる。ここで選びさっきの受付へ持って行くとクエストを受注できるそうだ。
早速受付に行く。
「すいませーん。冒険者登録したいんですけど…」
一番近くの受付に行く。受付嬢はみんな綺麗な人ばかりだった。その中で彼女は白髪で眼鏡をかけたお姉さんという感じだ。
「あ、はい。冒険者登録ですね。」
とても落ち着き慣れた感じで登録しての準備を始める。
「では、こちらに手をかざしてください。」
俺は言われるままに水晶のようなものに手をかざす。
すると水晶は淡く光る。
「はい、ありがとうございます。少しだけお待ちくださいね。その間にあなたの事を聞かせてください。」
俺は記憶喪失ということにしてダンジョンに来たとこから素直に話した。
「なるほど、そんなことが…大変でしたね。しかし冒険者でもないのにダンジョンなんて…しっかりと初期登録ですし…一体あなたは何者なのでしょうね。」
異世界から来た異世界人です。なんて言えないからなぁ。
「はい、できましたよ。あなたは未登録なので女神からの加護がまだですね?奥の部屋に案内します。」
案内されるがまま俺は受付嬢についていき奥の部屋に入る。そこには女神像のようなものがあった。
「では説明しますね。冒険者になると職業を得られます。それは基本職から希少職まで様々で希少職は数千もの種類があると言われています。その中でアタリと言われているのもありますがはずれもあります。だからダンジョンに潜るには基本職の方が安定していると思います。基本職は戦士、魔法師、弓師、騎士、聖職者の5つです。だいたいがこの5つのどれかになります。では、女神の前で手を合わせ祈りましょう。」
俺は職業についての説明を受け女神に祈る。
すると体が温かくなる気がする。
しばらくして目を開ける。
「終わりました。えとあなたの職業は…」
といつのまにか受付嬢の手にある紙を見る。
「え?うそ…なにこれ」
その直後そんな言葉が聞こえた。
ん?まさかチート性能きたか?!
そんな期待を抱きながら俺はさっきの部屋に戻るよう言われた。
いい職業こい。と何度か祈った。
そしてお待たせしましたと声が聞こえた。
「こちらが能力紙になります。ご確認ください。」
ついに来た!
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タクト♂16歳
職業 卵、災害の元
スキル 卵投げ 被災
パッシブスキル 台風の目 無数の卵
称号 なし
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あのぉ、これは?
なんか弱そうなのと物騒なのがあるんですが…
「あのーこの職業何ですか?」
俺が尋ねると受付嬢は気まずそうな顔をする。
「わかりません。」
「え?職業の詳細を教えてもらっても」
「わかりません。」
「あのぉ?」
「前例なしの職業です。おめでとうございます!使い方はわかりませんが…」
おんおん?使えなかったら意味ないじゃん。
「スキルなら念じると使い方等がわかりますよ。」
おっ?そうなのか。試してみよう。
そう思い念じてみる。
卵投げ
卵を相手に投げる。卵はいくらでも生成できる。腐ったものも出せる。攻撃には向かない。
被災
災害を呼びその被害を受ける。自分だけ被害を受けることもあるがだいたいが周りを巻き込む。その種類は様々。
あ、ロクでもねぇわ。
というかクソスキルだな。はぁ。どうしよ。俺の無双願望が途絶えた。
パッシブスキルは見れないらしく何度やってもできなかった。
「何はともあれ。あなたは冒険者になります。その前に試験させてください。模擬試験です。一週間後にここに来てください。」
何はともあれ、か
うん切り替えようきっと違うところで無双するんだよ多分。
「おー!終わったみたいだね。どうだったー?」
ケモ耳っ娘が話しかけて来た。
「冒険者としては使え無さそうかな。残念だよ。」
「そっかーどんな職業だったの?」
「卵ってやつと災害の元だったよ。」
「え?2つも!?凄いじゃん!災害の元って強そうじゃない?」
「2つって凄いのか?」
「凄いよ!最初から職業2つは1000人に1人いるかどうかだよ?」
彼女の口ぶりからだと職業は増えることがあるのかな?そんなことよりまあまあすごかったようだ。
でもスキルがなぁ。
「でもスキルがダメでさぁ。卵を投げるスキルと自分に災害を呼ぶスキルで…」
「ん、なんか微妙?」
「だよな」
俺たちはそのままどこに行くのではなく適当に歩いた。
「そういえば名前聞いてなかったよ」
「そうだね俺もすっかり忘れてた。自己紹介もせずに楽しく話してたんだね。じゃあ、改めて俺の名前はタクト、君は?」
「私はテトラ!冒険者になって3ヶ月の新人です!所属は獣人達で構成された『獣王』ギルドだよ!」
「テトラか。よろしくな。」
「うん、こちらこそ!」
自己紹介も済んだところだし聞きたかったことを聞くか。
「テトラはなんで今日冒険者ギルドに来たんだ?」
「うーんとね。まずギルドの説明をした方がいいのかな?」
こほんと咳払いをひとつ。
「私達獣王ギルドは新しく小さなダンジョン攻略を冒険者ギルドから直接任されているんだ。獣人は身体能力が高いからスキルがなくても戦力になるしスキルがあればもっと強いから、新しいダンジョンでもある程度適応出来るってわけ。いわば、有力な攻略ギルドなんだよ。」
「へーそうなのか。すごいとこのギルドに入ってるんだな。」
素直に俺は感心する。
「うん!でも、適応できるって言っても新しいダンジョンは危険だからね。ギルドの上位達が攻略に行くんだけど…。最近ダンジョンが増えて上位勢がばらけちゃって人手が足りないんだ。だから、みんなを強くするためにランク上げをするとかなんとかで今日はクエストを受けに来たの。」
「何人かで受けるのか?」
「普通はそうなんだけど…。団長がお前なら1人で行けるとか言って。私は1人で受けることに…。」
「は?それって危なくないか?命がかかってるのに!死んじゃうかもしれないのに! 」
空気が悪くなって周りがこちらを見る。視線が突き刺さりようやく俺は気づいた。
「ご、ごめん。ついかっとなって。」
「ううん、大丈夫。熱くなってくれたのは私のこと考えてくれたからでしょ?それに団長が厳しいのはいつものことだから。でも、団長は出来ることしか言わないの。できないことは絶対に言わない。だから大丈夫!」
どうやらダンジョンで怖い目にあったところだから1人の危なさに敏感になってしまったようだ。団長とやらも自分の仲間を傷つけるほど非人道ではないか。
だいぶん信用されているようだ。それなら安心なんだが。
「そうか…。なら良かった。なぁ、これからのことなんだけど一緒にダンジョンに行ってくれないか?」
「あぁ、一週間後の試験のこと?」
「そうだ。試験があるけど今の俺じゃ受かる気がしない。身体能力もスキルのメリットもないからな。」
そういうわけでさっきギルドで聞いたレベル制度なんだがどうやらゲームと同じく魔物を倒すとレベルが上がり職業に沿ったスキルを覚えるそうだ。テトラの言ってた職業の入手方法はわからないが。でも、レベルを上げるための魔物が近くにはダンジョンの中にしかいない。というわけでダンジョンには入りたいが。試験を受かっていない俺にはダンジョンに入る資格がない。そこでテトラに寄生してダンジョンには入りたいとテトラにお願いする。
「足手まといかもしれないけれど頼む!」
「いいよ!最初の方の魔物は誰でも倒せるから大丈夫!足手まといにはならないよ!それに、1人は心細いからねー!」
えへへ、と微笑むテトラにドキッとした。
1人は心細いからって案外寂しがり屋なのかな?
「ありがとう。助かったよ。」
「じゃあ、とりあえず私の武器を渡すよ。試験が終わったら武器が支給されるけどまだだもんね。これなら護身用だけど役に立つはずだよ。」
「ありがとう!」
そう言って腰から刃の長いナイフを取り出し俺に渡す。
「よし!行こうか!」
「えぇ!もう行くの!早いよぉ〜」
「とは言ってももう俺は止められない!」
ゆっくりして言ってもいいがゲーマーの本能が冒険したいと疼いて抑えられないのだ。仕方ないだろう?
そして俺たちはダンジョンの門まで一直線で走った。もちろん俺は一度迷ったけどな。
そして門までつくと
「おう。にいちゃん、冒険者になれたかい?あ、でも試験がまだかな?」
「はいそうです。試験はまだですが。レベルを上げるためこの人について行くことにしました!」
「これはまた…。期待のルーキーさんじゃないか。」
ん?期待のルーキーだと?!テトラが?!
「期待のルーキーですか?」
「その様子じゃ知らないな?よし、教えてやろう。そいつはあの『獣王』ギルドの新人テトラ。その2つ名を『神武獣人』だ!その名の通り彼女の武術は神業とまで言われている。」
「へっ!そんなにすごかったなんて…正直びっくりした。」
思わず変な声が出た俺は驚いて呆気にとられる。
「えへへ、そんなことないですよ~。」
「いやすごいぞ。並大抵じゃ2つ名などつかないからな。はっはっは」
そりゃそうだろう。この街には冒険者がたくさんいる。冒険者ギルドがあれだけ大きかったからな。相当な数いるだろう。それだけに全員の2つ名がつくはずがない。
「その方がこっちも安心してレベルが上げられる。団長さんが1人で送り出したことも納得がいった。厳しいことには変わらないが無茶ではないことがわかった。ということだから通っていいよな?」
「ああ、いいぞ。あまり深いとこに潜らない方がいいと注意しておこう。さっきのこともあるしわかってると思うがな。」
「わかってるさ。行こうぜテトラ。」
「もちろんです!行きましょう!」
そうして俺たちはダンジョンに挑むのだった。
よーし、頑張るぞー!