第1話
前の作品に飽きが…
暗い部屋、1つの眩しい光が目立つ部屋、そこには黒い服でフードを被りながらその光を浴びている。
そう、俺はニートだ。16歳の高校一年生だけど学校にはここ最近行っていない。否、学校には行きたくない。理由は簡単だ。友達作りに失敗したのだ。失敗したといっても何かをやったわけじゃない。というより何もしなかったからこそ友達ができなかったのだが。この感情の籠っていない淡白な声とかも原因だろう。というわけで俺は部屋に引き篭もりゲーム三昧な毎日を送っている。
「やっぱり楽だな。目標がしっかりとあってやればやるほど強くなるゲームは。あーあ、リアルでもこれくらい簡単だったらどれだけいいことか。さて、次のゲームするか。」
と言って、ゲームを変えようとする。
俺は随分と飽き性なのだ。何をやっても途中でやめてしまう。強制されたら出来るんだけどね。
ゲームをすることは強いられているけれどどのゲームをするかは強いられないのでいろんなゲームを同時進行で回している。
俺は立ち上がり山のように重なったソフトから特に何とは決めずにゲームを探す。
「あれ?こんなのあったかな?」
異世界漂流物のRPGだ。でもこんなソフト買った覚えがない。まぁ、いっかあるもんはあるんだし記憶にないだけでどっかで買ってるのかもな。
ぴっとソフトを起動する。すると画面が光り目の前が真っ白になった。
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気づくと目の前が真っ暗になっていた。
白くなったり黒くなったり目が悪くなりそうだ。
暗い所でゲームをしているが目は悪くない。というより良い方だ。
そんなことを考えていると違和感を覚えた。
ん?てっきり電源が落ちただけだと思ったのだが寒い。ひゅーと風の音のようなものが反響して聞こえる。
絶対におかしいだろ。さっきまでゲームの音をガンガン流してたから感覚がおかしくなったか?暖房も効いていたはずで電源が落ちたとしてもここまで寒くはならないはずだ。
そしてしばらくして目が慣れ始めた。
洞窟…?
そう、ここはどう見ても洞窟のようなものだった。壁に近づき手を当てるがそれは岩の感触で冷たい。
これが明晰夢というやつか。
引き篭もりの俺が洞窟なんかにいるはずがないもんな。
というかなんの夢なんだ?しかもこんなにリアルに。
とりあえずは移動することにした。こんなことをしている間に夢から覚めればいいなーとか考えながら。
夢なのになんの展開もない。
もうずっと歩いているので喉が渇いてきた。
水が欲しい。
そう思っていると水の落ちる音が聞こえた。この先だ。
走って音の方に行くと洞窟湖があった。
周りの鉱石が光っていて綺麗だ。水は透き通っていた。
近寄り手に水を取り口に含んだ。とても美味しい。店で売っている水より美味しいのではないか?
そしてしばらくここで休憩することにした。
ふぅー、やっと一息つける。
「ギァァォォォォン!!」
ん?今何か遠くで聞こえた気がする。
「「ギァァォォォォン‼︎‼︎‼︎」」
どんどん大きくなって行くにつれまるでモンスターの鳴き声のように聞こえてきた。そして、走る音がこちらは近づいてくる。
やばいと感じ逃げる準備をした。
その方向を向くと通路があった。
そこから1人の身なりの良い中世の貴族のような格好をした人とその後ろに3人の騎士がいた。何やら慌てている。
するとさっきのモンスターの足音も近づいてくる。俺は反対の通路へ向かう。
騎士達もこちらは走ってくる。1人の騎士が俺を捕まえる。
ん?何故だ?どうして捕まえる?
「め、命令どうりよくやったぞ!そ、そのまま広場に投げろ!」
貴族が言う。
「すまない許してくれ。」
小さな声で俺に言いそのままさっきの水場に俺を投げる。俺は十数メートル転がりあちこちを擦りむく。
くそ、いってぇ!なんなんだよ!
騎士達が去った通路を見ると後ろの方で轟音が聞こえた。
ドォォォォン
すぐさま振り向くとそこには赤い体表の竜がいた。
さっきの通路は竜が通ったせいか。3倍までに拡張されていた。
何あいつデカすぎるだろ!ふざけんな!さっさと覚めろよこの夢!怖い怖い怖い!
頭の中が恐怖で思考停止する。
竜が俺に近づいてくる。俺が動かないと思ったのかゆっくりと弄ぶかのように近づいてくる。
俺は思わず目をそらす。下の水に映る恐怖した自分を見る。
「ぁ……あぁ…。あはははははははははは!あはあはあははは!なんて姿なんだよ!無様だな!」
見ると同時にそいつは笑い出した。
それが俺だと認識できる思考能力はもう俺にはなかった。
もうすぐ側まで竜が来ていることがわかるようになった。
声には出さないが自分の中ではまだ声が響く。
しかしそれは先ほどの気が動転した声ではない。
ここで死ぬのか?もう終わりか?お前はこんなところで死ぬようなやつじゃない。
何言ってるこいつにはこの状況をどうにかできる力はない。無駄だ。今でこそゆっくり近づいているが逃げようとした瞬間に潰される。命はない。
だからといって力もないこいつに戦う意思はない。
何が起きても終わりだよ。
残念だったな
俺は意識が戻った。だが状況は変わらない。
竜の方を見た。竜は爪を上にあげそのまま下ろした。それだけで地面は凹み水が辺り一面に飛び散った。
しかし俺は無事だった。
自分の周りには透明な壁ができているようだった。いやできていた。
「君!大丈夫かい!説明は後、ひとまずここを離れよう!」
そこにいたのは赤い髪で金色の目をした青年だった。
周りには杖を持った小さな体の娘や白い浴衣を着た剣を持った老人、軽装でクールな娘がいた。老人以外はみんな赤い髪だった。
青年の背中に抱えられ信じられない速度で俺達は移動する。後の3人がなんとか食い止めているようだったので距離は自然と離れた。
しばらくして大きな扉が見えてきた。
その扉を開けると大きな街があった。
「すげえ!」
思わず声が漏れる。
「大丈夫だっかい?怪我は?」
「大丈夫だったよ。ありがとう助かった。」
俺はため息を漏らす。
さっきはみっともないとこを見せてしまった。
人間怖いとホントに笑ってしまうんだね。
自分がなに言ってるかも分からなかったよ。
「知ってるだろうけどここはダンジョンの隣に位置する世界有数の冒険ギルドの街ショアだ。俺達はそこの実力派ギルド《赤の翼》所属で俺はその団長の《赤髪の剣聖》ことカイトだ。」
初耳だ。当たり前みたいに言われても困る。さっき来たのだから。
赤髪の青年が言うにはどうやら団長らしい。
それとダンジョンとかギルドとかゲームにしかないようなものが出てくる。一応夢にしてはリアルすぎたので夢ではないと判断した。
そして俺は異世界転移したのだろうと考えた。
まぁ、当たり前だよなぁ。
そして小さな子はチイラ、老人はカンロウ、クールな娘はコトネという名前だそうだ。
「俺はタクト、さっきは助けてくれてありがとう。でもどうやら記憶がなくて何もわからない。気づいたら洞窟にいたんだ。」
俺は異世界転移のことは言わずに本当のことを話した。
「一応うちのギルドでも調べて見るよ。洞窟にいたってことは冒険者の可能性が高い。後さっき言っていた貴族のことも調べさせる。そんなひどいことをするなんて許せないからね。」
「あぁ、よろしく頼む。」
「それはそうとおかしいですなあそこは20階層であのボスクラスの竜は出現しないはず、うーむ」
カンロウが不思議がる。
「これから一文無しでは困るでしょう。これをもらってください。」
「何から何までありがとう。助かるよ」
そう言って金貨3枚を受け取った。
そこから4人とはお別れを告げた。
さて、いろいろ見て回りましょうか。
楽しみ