眩しい光
「世界がゆっくり傾いて
やがて暗闇が街を飲み込む」
男は優しい目で隣に座る少女を見つめながら
ボロボロの手で頭を撫でて話を続けた
「夜は美しいけど光があるから美しいんだ
光が無いと真っ暗闇で何もわからないだろ?
小さくても光があるから
街の様子は伝わりそして美しいと感じるんだ」
少女は何も言わず
ただ男の目を見つめながら話を聞いている
「こんな意味のわからない話でも
忘れないでくれ
伝えた意味がわかる時は必ず来る」
そして男は少女の手を握る
「ママが待ちくたびれてる
そろそろ行かなきゃダメだね」
そう言って男は名残惜しそうな笑顔で少女の手を離し
少し離れた所で待つ白いワンピースの女を見る
「パパやママ
もちろんお前にも光は必要なんだ
この街にもこんな世界にもね」
「だからまた会いにくる」
「必ず会いに」
小さく震えた最後の言葉を聞いて
少女は女の元へ走り始めた
それはきっと眩しく美しい光景
だから男は目を細めて
少女の後ろ姿を見つめていた