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骨勇者スケットンの受難  作者: 石動なつめ
第二章 屍竜の守る村
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第四十話「倒すつってんのに、喜ぶところじゃねぇだろ」


「君が心配しているのは、私達を襲うかもしれない、という事だろう? そういう意味では、対処は出来るから気にしなくて良い」


 遅い自己紹介を終えると、ルーベンスは少年を安心させるようにそう言った。

 もっとも「対処」というのがどのレベルを指すのか、と考えれば、言葉の物騒度はスケットン達と大差はない。

 だが、トビアスは指で頬をかいて、嬉しそうに笑う。


「あ、ありがとうございます。へへ」

「倒すつってんのに、喜ぶところじゃねぇだろ」

「いえ、その……前に、ある人に同じことを言われたのを、思い出しまして」


 トビアスの言葉に、スケットンは仮面の下で、意外そうに空洞の目を丸くした。

 トビアスは自分が何者であるかを理解した上で、何かあった時に自分を止めてくれる手段、相手に対して、喜ばしいという感情を持っている。

 謙虚、自己犠牲。それを指す言葉は色々あるけれど、何かあった時の覚悟と責任を、トビアスはちゃんと持っているのだ。その事に、スケットンは少なからず感心した。


「ところでお前、何であいつに襲われていたんだよ?」

「あいつ?」

「ほれ、フードかぶった奴。あれが教会騎士だろ?」 


 スケットンが言うと、トビアスはハッとした顔になる。


「それは……あ! そうだ、急いで村に戻らないと……!」


 そして焦った様子で立ち上がろうとして、体に負った怪我の痛みでうずくまった。

 ナナシは膝をつくと、トビアスの体に魔力回復薬(マジックポーション)をかけていく。


「まだあまり動かない方が良いですよ。治療をしたとは言え、聖水のダメージって結構根深いですから」


 アンデッドにとって聖水は弱点だ。身体の損傷はもちろんだが、聖水のダメージはアンデッド達の魂に影響を及ぼす。

 それゆえに身体は完治しても、ダメージ自体が回復するのには少し時間がかかるのだ。

 だがトビアスは、休息を促すナナシの言葉を、首を横に振って断る。


「いえ、大丈夫です。早く村に戻らないと、あいつらがじっさまを……!」

「じっさま?」

「あの、えっと、竜です。オルパスを守ってくれている竜。あいつら、竜のじっさまを殺そうとしているんです」

「竜殺しとはまた奇遇」


 トビアスの言葉に、ナナシとルーベンスの視線が、自然とスケットンの魔剣に集まった。

 スケットンが見せびらかすように魔剣を叩く。トビアスだけは意味が分からず首を傾げていた。

 そんな彼にスケットンは聞く。


「だけどよ、あいつらが目指しているのは世界樹じゃねぇのか?」

「ご存じだったんですか?」

「こっちもこっちであいつら追ってんだよ。で、あいつらが世界樹に向かってるっつーのは分かっているんだが、世界樹じゃなくてオルパスに向かう理由は何だ?」

「……たぶん、今のままでは世界樹に近づけないからだと思います」


 トビアスはぐっと手を握りしめて答えた。

 彼が言うには、じっさまと呼ばれた竜は、ここ最近の世界樹引っこ抜き事件を警戒して、オルパス付近にある世界樹に結界を張ったのだそうだ。

 そのため、サウザンドスター教会の者達は、世界樹に近づく事が出来ない。


「それで、結界を張った竜を倒して解きに行った、と」

「はい」


 スケットンは腕を組んで、オルパスの方を見た。


「それなら、先にオルパスだな」

「ですね。どの道、彼らが世界樹に近づかないと、現行犯で捕まるのは無理ですし」

「別に、事が起こる前に捕まえて叩いても、わんさか埃が出て来るだろ」

「一人いたら百人いる的なアレですか」

「アレではない。そんなもの、わんさか出てたまるものか」


 スケットンとナナシの言葉に、ルーベンスは嫌そうな顔で言う。

 三人の会話を聞いていたトビアスは、驚いて目を瞬いた。


「え? え? あの……手を貸して頂けるんですか?」

「違ぇよ、勘違いすんな。俺達もその、お前を襲った奴ってのに用があるんだよ。お前のはついでだついで。というわけで―――――案内しろ、坊主」

「――――! は、はい! ありがとうございます!」


 感極まった様子で頭を下げるトビアスを見て、スケットンは満更でもなさそうに、鼻を鳴らしたのだった。

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