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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

WELCOME HOME

作者: 新生 旧太郎

与太話をすこーし。

画面の前の紳士淑女の皆様方、初めまして。御機嫌よう。

寝惚けの朝、アンニュイな昼下がり、センチメンタルな夕刻、或いは一抹の不安やら情慾を孕む夜をお過ごしかも分かりません。

少し、目を通して頂きたい小咄が御座いましてですね。

あ、申し遅れました、私、夢爺と申します。ゆめじい、ですよ。

それでですね、目を通して頂きたい小咄というのがです。

とある家庭の咄で御座います。他人の家庭なんぞ知らぬ?そんな薄情な事仰らないで、少し、ほんの少しでも目を通して頂ければ良いのです。


件の家庭は世に言う幸せな家庭とは言えないようなので御座います。一体どういうことなのか、語らせて頂きましょう。




仮にヤマダ家と置かせてもらいましょうか。

ここの家庭は地元でも有名な銘家でありました。ですが、それと同時に、こんな言い伝えもありました。それはこんなものです。

ここの家庭に生まれた男性は不幸体質な様で、短命であったり、病弱であったり、生涯不運であったり、精神異常が見られたり、可哀想にも思われる一族であります。そんなヤマダ家に或る年に『凶星』と為るある子供が生まれたのです。男の子で、稜人(ヤマト)と名付けられました。

生まれた時はそれはそれは親族皆、稜人君を憐れみました。


『此の子も不運に見舞われて仕舞うのか』

『嗚呼、可哀想に』


陰でそんな事が囁かれました。しかし、生んでしまったものは生んでしまったものなのです。母は自らを痛めつけてまで生んだ我が子。どんなに貶されても憐れみをかけられても強き者で、全く気にしないでいました。しかし、凶星の片鱗は皆が気付かぬうちに見え始めてくるのでした。


稜人君が生まれて一ヶ月もしない内に母が亡くなったのだ。

謎の飛び降り自殺である。一度殺人が疑われたが、間違いなく彼女の筆跡である遺書が見つかったのだ。


『あの子をお願い致します』


とのみ書かれていたそうで。

あんなにも気丈に振舞っていた女性で御座いましたからでしょう、

父親である人間は三日三晩泣き、哭きました。その心の傷やら育児疲れやらがあったので御座いましょう、稜人君が生まれて半年としない内に鬱病に罹って仕舞いました。話に因ると稜人君が物心のついた頃には父親もこの世には居らっしゃらなかったそうです。

そのような幼少期を過ごし、祖母や叔母からいびられながら育ってきた稜人少年は捻くれた性格を持つようになりました。

例えばこんなことも御座いました────


或る日の午後、近所の子供が近くで遊んでいました。

誘われたにも拘わらず、稜人君は断固拒否を貫いておりました。

そして、餓鬼大将に殴りかかられるまでの罵詈雑言まで言ったのです。彼は結局、遊ぶ事はなく、それを窓から羨ましそうに見つめるだけでした。

根底に『遊びに行ったら祖母から叔母から何クソ言われるだろう』という恐怖もあったのでしょうが。


そんなこんなで友人は誰一人...いや、前庭に時たま現れる雀くらいで御座いました。そんな小学生時代を過ごしていた時のこと。


彼の厄介と考えていた祖母が風呂場で亡くなりました。

上半身を浴槽に付け、下半身のみを地上に出していたようでした。

当初は殺人事件の可能性が示唆されていましたが、

警察が幾ら調べても結局結論には至らず、事故となりました。


しかし、叔母は稜人への怒りや不信感からか、言動がおかしくなりました。そして、言葉は強くなっていきました。

『お前が!お婆を殺したんだろう!!!』などと

稜人君に激しく当たるようになりました。酷い時には殴る蹴るだけではなく、煙草で根性焼きなども当たり前となっていきました。

そうしていくうちに稜人君の叔母への反感は憤怒へと、叔母のそれはサディスト的になっていきました。

家の扉を開けると何時も叔母が『おかえり』と不気味な笑みを浮かべて何か道具を持って立っている、そして拷問の時間が始まる、といった地獄の学生時代が中学、高校と続いていきました。


高校一年生の暑い暑い夏の日の事で御座いました。

稜人君は何時もの様に扉を開けました。しかし、『おかえり』と言う何時もの人間が居ません。違和を覚えつつも、彼はリビングに坐った。何時以来だろうか、帰ってきてからソファーに坐るのは。

いつもいつも木の椅子で坐らされ、鞭やら何やらで叩かれる。余程のマゾヒストでない限り苦痛でしかなかった。

汗もかいていましたので、彼はシャワーを浴びようと風呂場に入ろうと扉を開けた時です。何か裸体が見えるではないですか。

上半身を浴槽に突っ込み、下半身を突き付けるかのように、見せびらかすかのように倒れている叔母の姿で御座いました。

『うわ、わあああっ!!』

酷く彼は驚きました。一瞬警察に電話しようとしましたが、その時、彼に何か邪悪な者が乗り移ったのでしょうか、その携帯を彼は放り投げました。そして、死んでいるか冷静に脈を測り、念には念を、と言わんばかりに首を締めたのです。死を確認すると同時に、

そのサディストであった“物”を引き摺り出して、丹念に水気を拭き取りました。あろうことか、それを死姦したので御座います。果てた後、我に返ったかのように辺りを見回すと、その叔母の死骸をタオルで包むと、涼しい地下室へと運び込んだので御座います。嗚呼、何と恐ろしい事でしょう、これは『全ての始まり』に過ぎなかったのです。


高校三年生の初夏のことでした。既に叔母の死骸は腐敗してしまった為に態々焼却炉でそれを燃やしたのです。煙は?煙でバレるのではないか、と申されますか。賢いか、何やら、彼は生ゴミを燃やすから臭くなると近所の数軒に伝えておいた様なのです。

彼にも彼女が出来たのですが、ご想像の通りでございます。

殺したのです。

叔母のように死姦するかと思えば、ご丁寧に肉を捌いていき、それを美味そうに焼いて食べていったのです。

腑から肉から脳までも。


何故ここまで彼は残虐に成れたのでしょう。

過去に精神異常が見られた者はいましたが、このような凶星は前代未聞で御座いました。

大学に入ってからも女性を十人近く喰らっていったそうです。正に、宴の松原の鬼のごとし。

そんな悪事が何故バレなかったのか。理由は簡単で御座います。ヤマダの呪いとでも言えましょう、変死です。

調べた人間が次々と死んでいったのです。

何故お前が知ってるのか、そんなことはいいのです。知っているから知っているのです。

そして、彼は女性を家に入れる時には決まってこの言葉を口にしたそうなのです。


『おかえりなさいませ。』


嗚呼、何と恐ろしい。叔母のようなサディストに成り下がって仕舞ったので御座います。火かき棒で人を殴る、あの女に成り下がって仕舞ったのです。哀れな稜人君である。


そして、二十歳の時、ある女性が訪れます。

陽奈子(ヒナコ)と言う女性でした。

容姿端麗、黒髪も美しく、背もそれなりに高い方でした。

彼女にも又、死神のかの一言が。


『おかえりなさいませ。』


不気味な笑みを浮かべて、陽奈子に迫る凶星、稜人。

しかし、陽奈子は噂で聞かされていました。哀れな人食鬼の噂を。

そんなことは露知らず、稜人は陽奈子を酔わせ、寝込みを絞殺しようと考えていました。

幸いにも、陽奈子は下戸でした。その為、飲むことはしませんでした。それが稜人の神経を逆撫でしたのでしょう。


その夜、陽奈子が帰ろうと回廊を渡っていた時でした。


バタン!!!


と大きな音がしたかと思うと、後ろに稜人が立っていました。

手には斧。狂気じみた顔で陽奈子を見つめます。

陽奈子は予想以上の恐怖に声も出ませんでした。

斧を手にした狂人は美女を追います。

壁を破壊し、剥製を裂き、床にヒビを作り追います。

やっとのことで陽奈子は玄関まで来ました。

しかし、扉が開きません。

幾ら引いても押しても開きません。

陽奈子はパニックに陥りました。あと数m先には殺人鬼がいます。

でも、逃げられません。

心拍数が上がっていき、呼吸も荒くなります。

その時、不図ポケットに何かが入っているのが解りました。

ライターです。


そして、陽奈子に悪魔のアイディアが舞い降りました。


“そうだ、燃やしてしまおう”


陽奈子は震える手で火を付け、玄関の絨毯にやけくそになって放ちました。


翌日、女性の遺体が燃え跡から発見されました。

ただ、稜人の死体は在りませんでした。しかし、稜人の今の今までの犯行は地下室の白骨死体から発覚しました。





事件から四十年余り、未だに稜人は見つかっていないようです。

こんな与太話で御座いました。

え?爺さんがその稜人じゃないかって?

そんなベタな話はありませんよ、きっと。

食人鬼が、書きたかっただけでした。

はい。



小5の時の自分の適当な作り話『夢爺冒険記』より引用したものを改変してみただけです。

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