勇:1
「軽い風邪と扁桃腺の腫れが重なっただけだと思います。」
医者は小柄の少年とその隣にいる女性に言った。少年の名前は美波勇。女性の名前は結城佳加。勇のクラスメートである結城瑞穂の実の母親であり、勇の保護者でもある。勇の両親である美波家と結城家は昔から仲がよくとある理由から勇は結城家に居候しているのだ。これは担任ですら知らないというオマケ付きだ。(しかし、勇の一つ後ろの席である大和だけは何故か知っている。)薬局で薬を受け取ってから結城家に戻ると勇は学校に行く準備を始めた。佳加さんには止められたが無理はしないからと約束して家を出た。学校に着いたときちょうど昼休みで廊下にはたくさんの生徒がいた。勇が通っている高校には普通科と理数科というのが存在する。特に勇は理数科生なので一回の欠席がとんでもない遅れを生み出したりする。五、六限目は物理と数学だったので出ないわけにはいかなかったのだ。勇が授業の準備を終わらせたときちょうど数学担当である担任が入ってきた。勇の顔を見たとききまりの悪そうな顔をしたのは気のせいではあるまい。
次話はこの作品のもう一人のヒロインの登場です。