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空想世界  作者: たい
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開戦

銀色の防壁が続いていた。

金属特有の輝きを放ちながら、彼方まで続いている。

「すげぇ…… こんな防壁を一人で作っちまいやがった」

「さすが≪先駆者≫で≪創造主≫だな。負ける気がしない」


「ユーリ総司令。念のためあなたの作った防壁を確認してきましたが、特に異常はありませんでした。防壁以外の設備も問題ありません」

「そうですか。フルート本国の義勇兵の集結状況は?」

「登録者3632人中、3571人が指定された位置についています。同盟国各自の軍も似たような状態です」

「わかりました。現在時刻は…… 14時35分ですか。間も無くですね。総員に、警戒するよう伝えてください」




「おーい! 神奈ー!」

「あ、セツナくん! 来てたんだ」

神奈が僕の名前を呼ぶと、数人の人があきれた目で僕を見てくる。

きっと偽名だと思ったんだろう。

僕だって中二的な名前だと思うけどさ。しょうがないじゃん、本名なんだから。

「うん。やっぱり戦いの様子は知りたいからね」

「ここに来てる人達も、避難と言うより観戦にきてるみたいだよ」


僕達が今いるのは、ユーリ・ミノユイアが作った巨大地下シェルターだ。

戦闘に参加しない人用の施設らしいけど、この巨大な施設を一人で作ったんだから驚きだ。

やっぱり≪創造主≫の想像力(イメージ力)は計りしれない。

「戦闘を中継なんて、スポーツじゃないんだから……」

「そういう僕達も見に来ちゃってるんだけどね」

「それは…… 自分の身を守るためにも戦況は知らなくちゃいけないし……」

「はいはい」

「むぅ…… なんかバカにしてるでしょ」

この世界では、理屈さえ知っていれば、中継機やそれを映す画面ように、機械も作る事ができる。

そしてそれは、必ずしも科学的じゃなくていい。

だから空想世界ではエネルギー保存の法則とか、現実世界の物理法則に逆らった物も作り出す事ができる。

実際に魔法道具のような非科学的な物を開発している国もある。

本当に、妄想を具現化したような世界なのだ。ここは。

「あっ、現れたみたいだよ! ≪月の無い闇夜の集会パーティーオブダークネス≫!」




「来ました! ≪月の無い闇夜の集会≫です! その数12!」

十代半ば程に見える、黒髪の男性が発したその言葉に、長いツインテールの銀髪少女が答える。

「聞いていた人数に1人足りませんね…… まあいいです。遠距離攻撃班、攻撃開始! 防御班も防壁を展開してください! ボクも出撃します!」

そう言ってユーリは立ち上がる。

「えっ! ユーリ総司令自ら!? 困ります! 誰が同盟軍の指揮をとるんですか!」

「あなたに任せます! 副司令!」

「副司令……! 俺が副指令、か……」

「聞き惚れてないで仕事してください。副司令」

「はっ……! 決して聞き惚れてなど…… とにかく了解しました ご武運を! ユーリ総司令!」

次の瞬間、ユーリの姿が消える。

「瞬間移動……!? 高難度の技をいともたやすく……」




「あれが≪月の無い闇夜の集会≫ですか…… ボクの国を脅かす者は、何者であっても許しません」

中空に浮かぶユーリは、苦々しく呟いた。

ユーリの見つめる先には、漆黒のローブを纏った集団。

その中で先頭に立つ一人が前に向かって手をかざす。

するとその手から、閃光と共に極太の光線が放たれた。

光線は眩い光を放ちながら、同盟軍の展開する色も形も様々な防壁群の上端を破壊し、フルート上空を通過していった。


「……威嚇射撃のつもりですか。確かに、噂通りの強さですね。ならばこちらからも!」

ユーリは右手を突き出し、そこに左手を添えながら叫んだ。

「≪蒼光の槍(ブラウライトスピア)≫!!」

その言葉と同時に、青白く輝く槍の形をした光が現れる。

ユーリがそれを投げつけると、光の槍は黒いローブを纏った人々の前方に轟音と共に突き刺さった。

一瞬の沈黙の後、舞い上がる土煙の中から、黒衣の集団が飛び出す。

6人はフルート同盟軍の方へ走り、4人は上空に浮かび上がった。

そして、再び放たれた光線で吹き飛ばされた土煙の中から、その場を動いていない残りの2人の姿が確認できた。

「これは……乱戦に持ち込むつもりですか。少人数かつ自分達の力量に自信があるからこそできる戦法ですね」

そう呟くユーリの前に、突然一人の男が現れた。

「御機嫌麗しゅう。私は≪月の無い闇夜の集会≫、サブリーダーのストリュートと申します。もちろん、この世界での名前ですが。先程の技の威力には驚きました。鮮明な想像(イメージ)がそのまま技の威力になるこの空想世界において、あれ程の威力の技を放つということは、相当な実力者とお見受けしますが、よろしければお名前をお教えいただけませんか?」

その言葉に、ユーリは警戒しつつも答える。

「ボクは≪自由同盟フルート≫の代表、ユーリです。最後に警告しますが、今すぐに退却してください。もし退かないというのであれば、ボクは全力であなた達を排除します」

鋭い目つきで警告するユーリに、ストリュートは動じる様子もなく言う。

「あなたがフルートの代表ですか! お会いできて光栄です。しかし申し訳ない。私に決定権は無いもので。私も我らがリーダーの命に従い、最大の障壁であるあなたを排除させてもらいます」

ストリュートの雰囲気の変化を感じたユーリは身を構える。

少しの沈黙の後、ストリュートが唐突に口を開いた。

「そうでした。戦いの前に一つだけ。セツナという人物をご存知ですか? ちなみに本名です」

「セツナ……ですか。覚えがありませんね。本名ならなおさらです」

「そうですか。おかしな事を聞いて申し訳ない。……では」

次の瞬間、ストリュートの姿が消えた。




「信じられない……」

思わず声に出てしまった。

そのくらい、僕らが目の当たりにしている光景は衝撃的だった。

1000人を超えるフルート同盟軍を圧倒しているのは、たった3人の剣士。

一人は片手剣の二刀流で、流れるように相手を倒してゆく。

もう一人は片手剣2本と逆手剣2本をしまったり出したりしながら、計4本の剣を凄まじい早さで使いこなしている。

最後の一人は、自分の背丈程もある大剣を振り回して、間合いに人が入れないようになっている。

「……チートにも程があるだろ」

「まだ誰も死んでないのが不思議なくらいだね」

怪我をしている人はたくさんいるけど、見た限りだとまだ死者は出ていない。

手加減でもしているんだろうか。

そうでもしないと、剣で死者を出さずに敵を倒すなんてできないだろう。

「あっ!」

神奈が突然声を上げる。

「ん? どうしたんだ?」

神奈の視線を追っていくと、その先には、さらに衝撃的な光景があった。

中継画面に映っているのは、瞬間移動を繰り返しながらレーザーで攻撃する≪月の無い闇夜の集会≫のメンバーと、押されているユーリ・ミノユイアの姿だった。

「嘘……だろ……」

あり得ない。空想世界最強とまで言われる彼女を圧倒するなんて……


≪自由同盟フルート≫の建国も、僕らが戦争にスポーツ観戦のような感覚で来ているのも、彼女の絶対的な力があったからできたことだ。

その彼女を上回る力なんて……

あり得ないと思われていた『敗戦』という言葉が真実味を帯びてきた事で、周りの人々も動揺し始めている。

もし戦いに負けて殺されてしまえば、この理想的な世界にいられなくなってしまう。

魔法も、特別な力も、ご都合主義も、何も無い現実世界へと戻される。

地下シェルターは、外に逃げようとする人とまだどうしようか迷っている人達とで軽いパニックになっていた。

「どうする? 私達も逃げる?」

「どうしようか……」

僕たちもどうするべきか考え始めた時だった。

僕たちがいる地下空間に、眩い閃光が迸る。

閉じていた目を開けると、天井に大穴があき、そこから外の光が差し込んでいた。

そして、光の中に浮かぶ黒衣の人物。

「我が名はフロメント! ≪月の無い闇夜の集会≫のリーダーだ!」

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