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空想世界  作者: たい
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空想世界

銃弾が飛んでいる。

超音速のそれは、周りの空気を切り裂きながら進む。

しかし、それが黒いローブを纏った少年に当たりそうになった時、唐突に銃弾は消滅した。

「ふはははははははっ! 俺の≪超温結界ハイヒートドメイン≫には銃弾など効かん! 俺の魔力が尽きない限り、俺を倒すことなど貴様らには不可能だ!」

その言葉に、銃弾を放った男性達は歯軋りする。

「魔法なんて現実に存在する訳ないだろ! いい加減目を醒ませ!!」

しかし、黒いローブの少年は、その後ろに立つ様々な服装の少年少女達は、不敵に笑う。

「俺達に現実などいらない! 俺達にとっての現実は、この『空想世界』だ!!」




―――空想世界。

聖地、新天地、新世界など、人によって呼び方は様々だが、大体この名前で統一されている。

なぜ空想世界と呼ばれているか。

その理由はいたって単純だった。


―――空想が、現実になるから。


想像の中だけの奇跡が、妄想の中だけのご都合主義が、この世界では実現する。


そんな世界に僕たちが飛ばされたのは、今から約3年前の事だった。

この日は後に、≪創世の日≫なんて呼ばれる事になる。

飛ばされた理由はわからない。ある日突然、真っ白な世界で目が醒めた。

僕だけじゃなく、数えきれない程の子供達がこの世界に飛ばされたらしい。大人もごく少数ながらいる。

ここに飛ばされた人々が初めて空想が実現することに気付いたのは、どこかの中二病患者が空気を読まずに邪気眼を発動した時だった。

どうやらその人は、魔法陣を展開しながら上空にビームを放ったらしい。

それを見た周りの人々は、それを真似して思い思いの技を繰り出し始めた。

そしてそのうちの何人かは本当に現実ではあり得ないような事象を引き起こした。


そう、『何人か』だ。

空想世界で空想を実現するには、いくつかの条件がある。

中でも特に重要なのは、『信じて疑わない事。あるいは鮮明にイメージする事』だ。

真似をした人の大半は、半信半疑だった。

だから空想を実現することはできなかった。

でもコツをつかめば、この世界では誰もが神に等しい存在になれる。

何も無い所から剣を取り出したり、中々難しいけど変身だってできる。食べ物にも困らない。

だけど、そんな夢のような世界にも、いくつかの法則ルールがあった。

その中で一番恐れられているのは、『死』だ。

この世界で死ぬと、どうなるか。

答えはとても簡単だった。

現実世界に戻される。

空想世界に魅了された人達にとって、それはなんとしても避けたい事柄だった。


「まぁ一回死んで、戻ってきた人もいるんだけどね」


そう笑いながら言うのは、神宮寺(じんぐうじ) 神奈(かんな)

僕がこの空想世界で出会った人の一人である。

まあこの世界に来てから、偽名を使う人もいるから、本名かどうかはわからないけど。

「でも戻って来られなかった人もいるじゃないか」

僕がそう言うと、彼女は「まあねー」と言ってまた笑う。

「まあ私達には関係ない話だけどね。なんたって私達、≪傍観者≫だもん」


≪傍観者≫。

僕や神奈のような、空想による奇跡を起こさない、あるいは起こせない人々。

つまりはただの人間だ。

大きく分けて、好きでやってる人と、想像力不足や固定概念のせいで空想を実現できない人がいる。

僕の場合は前者……だと思いたい。

前に一度試した時に上手くいかなくて、それ以来空想の実現はしていない。

僕だって練習すればできるはず! 僕はまだ本気を出してないだけ!


「私達は戦争とかには参加してないから、そうそう死ぬような目にはあわないしね」

神奈の言うとおり、僕達はそうそう死ぬような目にはあわない。

基本的に無法地帯であるこの世界では、空想の種類が近い人同士で集まって、国などのグループを作っている。

国とは言っても、お遊びのような物から、しっかりとした政治のシステムがあるものまで様々だ。

そして、国があれば戦争も生まれる。

まあ大抵は『相手が気に入らない』とか『ただ戦いたいだけ』とかの理由だけど。

ちなみに僕達がいる国は≪自由同盟フルート≫。人口が10000人を超える、空想世界最大の国だ。


「というか、そもそも神奈は≪傍観者≫じゃないだろ」

「何言ってるの。私はれっきとした≪傍観者≫だよ?」


いや、違う。だって神奈は……


「神奈はただの人間じゃないだろ?」

「うん。私は神だよ」


神奈は神だから。


「ほら。自分で言ってるじゃないか」

「違う。私はこの世界に来る前から神だったの」


また始まった。

この神宮寺神奈は、常識人のように見えて、実は重度の『邪気眼系中二病』を患っているのだ。

「じゃあ一体何ができるんだよ。神だったら何かできるんだろ?」

「今は人間だから何もできないの。でもこの身体から解放された時、私は覚醒するんだよ」


……こういう人がこの世界だと大物になるんだよなぁ。

とか思いつつ前を向く。


そもそもなぜ僕達がこんなところで話をしているか。

それは、僕達のいる≪自由同盟フルート≫の上層部から、重要な発表があるらしいからだ。

僕達がいる中央広場には、僕達以外にも大勢の人が集まっている。

「あ、誰か出てきたよ」

神奈が示す方をみると、一人の少女が広場の奥にある建物から出てくるところだった。


「みなさん! ボクは≪自由同盟フルート≫の代表、ユーリ・ミノユイアです」


その言葉を聞いた人々に動揺がはしった。

それもそのはず。ユーリ・ミノユイアは、≪自由同盟フルート≫のトップだ。

その彼女が直々に出てくるのだから、これから話されるのは、余程重大な事のようだ。


「本題から話します。先日、≪月の無い闇夜の集会パーティーオブダークネス≫と名乗る集団から、我々に対して宣戦布告がありました」

聴衆のところどころから驚きの声が上がる。

月の無い闇夜の集会パーティーオブダークネス≫?

ずいぶん中二的な名前だけど、どんな人達だろう。

「私、聞いたことあるよ。なんでも13人組のパーティーで、いろんな国やパーティーに戦いを挑んでるんだって」

「なんだ。そこまで珍しくないじゃないか」

この空想世界では、中二病的な妄想も実現するので、派手な戦いを求めて常に戦闘を繰り返す人々がたくさんいる。

国に喧嘩を売るっていうのは珍しいけど、割とどこにでもいる戦闘集団じゃないか。

そう神奈に言うと、

「うん。確かにそうなんだけど、戦闘力がものすごく高いんだって。特にリーダーを含めた3人は、≪創造主≫らしいよ」

「≪創造主≫が3人も!?」


≪創造主≫というのは、想像力が異常なまでに高い人達のことだ。

想像力が高いという事はつまり、この世界では最強ということになる。

そんなのが3人もいるなんて……

そりゃ国に喧嘩を売っても平気なわけだ。


「ボクはこの侵略行為に対し、徹底抗戦しようと思います。ですが、ボク達≪自由同盟フルート≫には、同盟国各自の自衛軍しか戦力がありません。相手は少数ですが、≪創造主≫クラスのメンバーがいると聞きます。

ボクは、この空想世界において最も平和なこの国を守りたいと思います! どうかボクとこの国に力を貸してください!」

彼女が話を終えると、あちこちから歓声が湧き上がった。

「いいぞー! そんな中二野郎なんかねじ伏せてやれー!」

「フルートは俺達の国だー!」

「ユーリたん結婚してくれー!」


あれ、なんか変な人がいたような……

「敵との接触予定日時は明後日の15時です。詳細は後々説明します」


そういって彼女はもと来た建物に戻っていった。


なんだか大変な事になったなぁ……

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