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キミに逢えたら  作者: ちびすけ
ギルド
42/51

9

「ろ、ろ、ロズウェルドさん!? どうしたんですか、その子供はっ!」



 急に変わった視界に目が慣れず、瞬きをしていると甲高い女の子の声が聞こえて来た。

 ある意味悲鳴に近い。

 ん? と思って声がした方に顔を向けると――。



 色々な書類が積まれた大きな机に、埋もれる様にして座る女の子がいた。



 緑色の髪を左右に分けて編み込み、丸い眼鏡を掛けた可愛らしい少女は、口をポカーンと開けて私達――主にロズウェルドを凝視していた。

 そんな少女の頭を、ロズウェルドはパシッと叩く。

「煩いチィッティ」

「うぅ~。痛いですぅ、ロズウェルドさん」

「チィッティ、俺にパートナーが出来た。名をトオルと言う」

 両手で頭を押さえて口を尖らせる女の子――チィッティちゃんを無視して、ロズウェルドは私を抱き上げたままチィッティちゃんに紹介をする。

 そして、チィッティちゃんを指で指して、「こいつがギルドの最高責任者だ」と教えてくれた。 

 見た感じはルル達より年下に見えるから、こんな小さな女の子が最高責任者だと聞いて驚いた。

 チィッティちゃんは丸い眼鏡をクイッと人差し指で押し上げながら、私をマジマジと見て。



「え? ロズウェルドさん……もしかして、幼女趣――痛っ」



 ロズウェルドはもう一度頭を叩いた。今度は少し強めに。

「だから、痛いですってぇ!」

「誰が幼女趣味だ。トオルは俺のパートナーだって言ったろ」

「だって……ロズウェルドさんが来る前に、ミシェルさんもいらっしゃったんですが、彼女はレイと言う子をパートナーにしたいと言っていました。その子は、すーんごい魔力を持った方だとダンカンから聞いたので了承したのですが……」

 そう言ってから、私を見て溜息を吐く。

「こんな小さな子をギルドに入れる事は、許可出来ません」

 と、ハッキリと言われてしまった。

 ロズウェルドの首に回した腕に、ギュッと力が入った。

 やっぱり、こんなに体の大きさがコロコロ変わるなら駄目だよね。

 ニート、脱出出来ず――と項垂れていると。



 慰められる様に、ゆっくりと背中を撫でられた。



 え? と思って、背中を撫でるロズウェルドを見上げると、彼はチィッティちゃんを静かに見ていた。

「チィッティ。俺がギルドに入る時に交わした条件を、覚えているか?」

「え? えぇ、覚えていますが……」

 急に何を言うんだ? と首を傾げていたが、直ぐにもしかしてと呟きながら大きな目を更に大きく見開く。

「……この子、ですか?」

「そうだ」

「うっそぉ~!?」

 まるで、ムンクの叫びの様に頬に手を当てて驚くチィッティちゃん。

 私は何の話をしているのか皆目見当もつかず、ただただ黙って聞いているしか出来ないでいた。

「そ、それならしょうがない……のかな? ロズウェルドさんがこのギルドへ入って頂く時に交わした条件ですからね~」

 チィッティちゃんは肩を竦めながそう言うも、でも、と口を開く。

「でもでも、こんな小さな子供に仕事がこなせます?」

「あぁ、その事なら問題ない。トオルは見た目通りの子供じゃないからな」

「え? そうなんですかぁ?」

 首を傾げて聞いて来るので、私は頷いた。

「えっと……こんな姿をしていてもちゃんとした大人なんです。以前、小さくなる魔法薬を誤って食べちゃって……その副作用で、たまにこんな姿に変わっちゃうんですよ」

「そんな事があったんですかぁ~」

 大変でしたね、と同情する様な眼差しを送られた私は、ハハハと渇いた笑いを溢した。

「ふむ。では、トール君は小さな姿に変わっても、魔法は変わらず使えるのですね?」

「はい、使えます」

 私がハッキリそう答えると、チィッティちゃんは「うむ。それならよろしぃ!」と大仰に頷いた。



「ではトール君、ようこそギルドへ!!」



 そう言うと、クラッカーの音が室内にパパーンと響き渡る。

「…………」

「…………」

 ハラハラと、私とロズウェルドの周りを色とりどりの紙が舞い散る。

「第一階級に属するロズウェルド・オルデイロ、貴方は、貴方のなすべき事をなさって下さい」

「あぁ。言われなくてもそうする」

「ふふふ。頑張って下さいねぇ」

 二人で何やら頷き合って納得したようである。意味が分からない。



 でも無事にギルドに入る事が出来たようである。



「それでは、二人には早速明日から仕事の依頼を入れたいと思います」

「明日からか……どんな依頼内容だ?」

「そうですねぇ。まずは、宝石商の護衛なんてどうでしょう?」

 チッティちゃんはごそごそと机の上にある紙束の中から一枚の紙を引き抜いて、ロズウェルドに渡す。

「他には?」

「今の所それが妥当かと。それに、先程ミシェルさんとレイ君にも同じような仕事を依頼しました」

「え? じゃあ、今回は零とも一緒に仕事を出来るって事?」

「えぇ。護衛の数は多い方がいいと言われていましたし、それに、聞いた話によると、トール君とレイ君は御兄弟なんだとか。それでしたら、初めてのお仕事は一緒の方が安心でしょう?」

 そう言ってニッコリ笑うチィッティちゃんに、私はありがとうございますと頭を下げた。

「あの、零達は今どこへ?」

「ミシェルさんが、レイ君を皆と顔合わせさせると言って、先程下に降りて行きましたよ?」

 トール君達も下に行って、ここの皆さんと顔合わせをしてみては? との言葉に、私達はロズウェルドの転移魔法で移動すたのであった。


次は30日の0時過ぎに予定。

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