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キミに逢えたら  作者: ちびすけ
黒騎士
25/51

1

 何かに、優しく包まれている気がした。

 砂利を踏みしめる音や、音に合わせて体に伝わる振動を考えると……誰かが自分を抱き抱えて歩いているんだと分かった。



 ───お父さん?



 そう思って、ギュッと『お父さん』の服を握ったら、それに気付いた『お父さん』が「どうした?」と聞いて来た。

 その声がとっても優しかった。



 ───でも、お父さんの声じゃない。じゃあ、お兄ちゃん?



 服に顔を擦り付けるように擦り寄ると、『お兄ちゃん』は抱え直しながら私をぎゅっと抱きしめてくれる。

「寒い?」

「ううん。さむく……なぃ」

 寒くなんてなかった。『お兄ちゃん』に抱えられて、とっても温かかった。

 私は、『お兄ちゃん』の首に両手を回して、肩に右頬をくっ付けた。

 甘えるような仕草に、クスッと笑う声が私の耳に届く。

 その他にも───。



「いやぁ~ん。トールってば寝ぼけてるぅ」

「あぁ゛ーっ。ここに携帯があったら絶対写メで撮って永久保存してたのにっ!!」



 などなど、そんなものまでもが聞こえて来た。

 煩いなぁ……と思った私は、肩にくっつけていた顔を肩から離し、目を薄っすらと開けると。



 零が……猫になってる?



 寝ぼけていた私は、魔法薬で猫耳と尻尾が生えた零を見て「あぁ、夢か」と思い、コテンっと肩に顔を戻して目を閉じてしまった。

「あ、寝ちゃった」

 零が残念そうに呟いたのが聞こえてくるも、意識はそのまま薄れていく。

 それから少しして、誰かに声を掛けられる様な感じがしたが無視をする。



 なんだよもぉー。せっかく気持ちよく寝てんのに……。



 グズグズしていたら、また背中をポンポン叩かれた。

 あぁ、分かったから。起きるからそうポンポンポンポン叩かないで下さい。

 眠いのを我慢して、手の甲で目を擦ってゆっくり瞼を開ける。

 辺りを見回してから目に入ったのは、数時間前に商店街に行くのに出て来た扉。

「リュシーさんの……いぇ?」

 眠いし、なんか……こぅ……喋りにくいと言うか舌が回らない?

 起きなきゃと思うが、瞼が落ちてくる。それに、今何か言われた様な気がしたが、眠気が襲ってきて、適当に頷くので精一杯だった。

 それから急に体がガクッと傾いたのは分かった。



 あ、落ちる。



 ジェットコースターに乗った時に感じる浮遊感が襲ってきた。でも、力が抜けてる体は全然動いてくれなくて───。

 やばいっ!

 落ちた時の衝撃を予想して体が硬直したが、直ぐに誰かに抱き抱えられた。

「あっぶねぇー」

 そんな焦った声が聞こえた。

 細いけど、筋肉が付いてガッチリとした腕に包まれ、緊張していた体は一気に緩む。

 安心してもうひと眠り───と思っていると、顔をつつかれたり叫び声が聞こえたりと、何やら周りが騒がしい。

 煩いなーと思って目を薄っすらと開けたその時。



「そこで何をしているの?」



 女の人の声が聞こえた。

 ぐりぐりと目を手の甲で擦り、ショボショボした目で声がした方に視線を向ければ。



 一気に眠気が吹き飛んだ。



 リュシーさんとジークさんとカーリィー君と……あと、見た事も無い3人の人が、エドに抱っこされた私を見ていたからだ。

 死ぬほど恥ずかしい。

 すっかり目が覚めた私は、のほほんと今まで眠っていた事を大いに悔やんだ。

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