閑話 エド視点
リュシーの屋敷に帰っている途中。魔法薬で小さくなったトールを抱いて歩いていると、トールは眠くなったのか目を何度も擦っていた。
こくりこくりと上下に揺れる頭と半分下がった瞼を見た俺は、小さな頭に手を添えると、自分の胸元にそっと引き寄せた。
「眠いんだろ? いいぞ、寝て」
「……んぅ……でも……」
「まだリュシーの所に行くまで時間が掛かるから寝てていいよ。着いたら起こすから」
ゆっくりと頭を撫でながらそう言えば、トールは俺の腕の中で丸まるようになりながら寝てしまった。
腕の中で安心したように眠る姿を見て、顔が緩みそうになる。
トールが落ちないように抱き直していると、隣を歩いていたハーシェルが寝ているトールの姿を見て笑う。
「寝ているのか?」
「あぁ」
「ここまで来るのに色々あったから疲れたんだな」
ハーシェルはそう言ってから、続けて「ナイフを投げて傷付けたのに、嫌われて避けられるなんて事にならなくて良かったね」と厭味ったらしい顔付きで俺に笑い掛ける。
「うっせーよ」
自分の眉間に皺が寄るのが分かる。ハーシェルの顔をひと睨みしてから、トールの寝顔を見られないようにガードをしつつ歩く速度を上げてハーシェルを追い越してやった。
後ろでくすくす笑う声が聴こえるが、もう気にしないようにしようと心に決める。
「トール、着いたから起きて」
ルルの家から暫く歩き、漸く目的地へと到着した。
リュシーの屋敷の玄関前に立ち、中に入る前に一応トールを起こしておくかと声を掛ける。
しかし、深い眠りに入っているのかぐっすりと眠っていて起きないので、更に背中をポンポンと軽く叩いて覚醒を促す。
「……ん……うにゃ?」
何回か叩くと、トールはまだ開ききらない目を手で擦ると、ゆっくりと瞼を開ける。
キョロキョロと辺りを見回してから、ちょっと舌っ足らずな言葉で喋る。
「リュシーさんの……いえ?」
「そうだよ。……てか、起きてる?」
「ん……ぅん」
未だトールは夢の国の住人。その顔を笑いながら覗き込むと、完璧に目覚めていないトールは又目を閉じて───頭がカクンッと後ろに傾いた。
「おっ、と……」
トールの体が傾き、腕から落ちそうになって慌てて抱きなおす。
「あっぶねぇー」
ふにゃふにゃな体を抱き止めながら溜め息を吐き出していると、トールの知り合のレイと言う人が、トールの顔を見ながら笑った。
「ナイスキャッチ! ってか、透ちゃんって低血圧で寝起きがすっごい悪いんだよね。でも、本当に今日は起きないなぁ」
そう言いながら頬をツンツンとつつく。
その姿をルルが羨ましそうに見詰めながら「トールの寝顔すっごく可愛い」と呟けば、「でっしょー♪」と白くて長い尻尾をブンブン振りながら、ルルにトールの素晴らしさを熱く語る。
そして2人できゃいきゃい騒ぎ、変な同盟を立ち上げていた。
意気投合するのがはぇーな。
「そこで何をしているの?」
2人が玄関前で騒いでいると、ガチャリと鍵が外される音がして───目の前の扉が開いた。
本日の7時にも投稿予定です。




